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「水脈を聴く男」 ★★ アラブ小説国際賞 訳:山本薫 |
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2025年05月
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井戸に転落死した女性マリアム、引き上げられたその遺体から奇跡的に救い出された胎児。 サーレム(無事)と名付けられたその息子は、育ての親となったカーゼヤのおかげで成長すると、やがて地中を流れる水の音を聴きわける能力を示すようになります。 そのことで最初は気味悪がれ、村人たちから除け者にされたサーレムですが、干ばつに襲われた村を、水源を見つけて救ったことから“水追い師”と呼ばれるようになる。 本作は、水追い師と呼ばれるようになったサーレムの数奇な運命をえがいたストーリー。 奇妙な生まれ方をしたサーレム、相思相愛の妻を得ることができたものの、彼に普通の生き方は許されなかったのでしょうか。 結末ははっきりしないものの、サーレムの妻ナスラの後ろ姿と共に切なさが残ります。 ストーリー自体にも惹きつけられますが、初めて読むオマーン人作家の小説とあって、そこに生きる人々の生活風景等が新鮮に感じられます。 |