キャロライン・アダーソン作品のページ


Caroline Adderson  カナダの小説家。ブリティッシュコロンビア大学で教育学を修める。処女作がカナダの総督文学賞にノミネートされ、Ethel Wilson Fiction賞を受賞。2006年に創作活動全体に対してMarian Engel賞を受賞。

 


             

「母さんが消えた夏」 ★★
 原題:"Middle of Nowhere" 
       訳:田中奈津子




2012年発表

2014年06月
講談社刊
(1400円+税)

 


2014/08/16

  


amazon.co.jp

12歳のカーティスは、母親デビーと5歳の弟アーティスとの3人暮らし。
高校も卒業していない母親は、ガソリンスタンドで真夜中勤務をして働いていたが、ある日から家に帰ってこなくなります。
元々貧しい家庭、すぐ食べるものにも不自由しますが、カーティスは何とか幼い弟をなだめつつ、母親が帰ってくるのを信じて待とうとします。
何故ならかつて一時期里子に出されたカーティスは、その家の息子にひどいイジメを受けた経験があるから。
困窮するカーティスに手をさしのべたのは隣家の
バートという老女。歩行器を使わなければ歩けないバートはカーティスに買い物を頼むようになり、そこから老女と兄弟の持ちつ持たれつの関係が生れます。
やがて老女は兄弟を誘って車に乗せ、湖の近くにある小屋へと向かうのですが・・・。

何故母親は家に帰ってこなくなったのか、そして老女はどんな意図で兄弟を山中の小屋に誘ったのか、というミステリ要素。そして、母親のいない家を守ろうとする町中サバイバルに、山中でのサバイバル体験という冒険要素を備えた児童向け作品。
母親はきっと戻ってくると信じ続けると共に、弟を守ろうとするカーティスの姿にはとても切ないものがあります。
けれどカーティスは、決して同情されるだけの存在ではなく、勇気ある決断を下すことができる少年でもあります。そのことを身をもって示したところが素晴らしい。
ひと夏の、感動的な、少年の逃避行&冒険物語。

    


     

to Top Page     to 海外作家 Index