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7 月××日

1 日目 【曇り/晴れ】

 昼の 12 時に山梨市を出て本屋に寄った。その後、甲府の山用品店でサングラス、半袖シャツなどの装備を補った。どこかで栄養のある昼食を食べたい。河口湖インター先の「藍屋」で「味好み定食」を食べたが、予想以上に美味しかったので満足した。食事をしながら今後の予定を紙に書いて整理する。コンビニでおにぎり、水、パン、チョコレートなどを買い揃え、富士宮口に向かう。水ヶ塚駐車場から先の登りは今まで経験のない程の急坂が続き、改めて富士山の傾斜を認識した。富士宮口新5合目は一方通行のロータリーになっていてその路肩がぐるり一周駐車場となっている。500 台と表示されていた。デリスペくんの車内は整理不足で横になるスペースがなく、シートを倒して寝ようとするが寝付けない。少しウトウトしたが、睡眠時間は明らかに不足気味だ。富士宮口からの登頂時間は健脚ならば 4 時間 35 分となっているが、少し早めに出るか決めかねる。

 とうとう 9 時過ぎに起き出してしまった。おにぎりと牛乳を出し、食べながらお湯を沸かしてうどんを作る。標高のためか十分に煮えていない感じ。荷物の整理をしながらザックに必要なものを放り込む。水はお茶と水半々で計 2 リットルとし、ツェルトやシュラフカバーも入れた。最後にエネルギーインゼリーを一袋と紅茶 500 ml を腹に詰め込んだ。ゲップが出そうだが水分は多めの方がよいだろう。薄い雲がかかっていたが、駐車場には星を見ようと望遠鏡を持った人達が多く来ていた。標高が高いので観察ポイントなのだろうか。トボトボと少し登ったところのベンチまで行ったら携帯電話が通じ、妻に連絡を取ることができた。ゆっくりと靴紐を締めるが、時間が早いためか登山者らしき人はだれも来ない。

 22 時 25 分にゆっくりと歩き出す。少し早いが、ゆっくり行けば良いだろう。御来光の時間は 4 時 45 分なので、6 時間あればゆったりと登れるだろう。ヘッドランプを点灯して足元を照らす。22 時 40 分に新 6 合、22 時 58 分に 6 合目を通り過ぎる。息が荒れないように微妙にペースを落とし、快適に登る。時にはガレ場のように滑るところもあるが、登山人口が多い道らしく足の置き場に困ることはない。車の登山道と同様に繰り返しヘアピンカーブがあり、右を向いたり左を向いたりして登って行く。23 時 28 分に新 7 合目小屋で 1 時間目の小休止。前後に登山者は誰もいなかったが、暗闇なのでよく判らない。ペースが速いので、どこかで時間を潰さなければならないだろう。けれど日本一の山は先がきついかもしれない。 5 分後に再び歩き出し、同じペースで歩いていると 4、5 人のパーティーが座って休んでいる。中に手ぶらの爺さんとかが混じっていておかしい。ふと気になって軍手を取ると、右手掌の土手の部分に水膨れができている。今日は軽量のスプリングなしストックを採用したのが原因だった。仕事に直接的に差し支えるので、今後は手に
紐を絡げる持ち方でのみ使用することにする。真っ暗闇なので時間の感覚が異なり、いったい何時なのかが掴みにくい。いつ日付が替わったのかこのときは自覚していなかった。

2 日目 【晴れ】

0 時 30 分に岩陰を見つけて休憩。少し水分なども補給しようか。ウーロン茶を飲みながらゆったりと休憩した。下から数名の声が聞こえ、ライトが揺れている。かなり速いペースで登ってくる感じがした。上方にもライトが揺れているが、登っているのか下っているのか、固定ライトなのか不明である。自分の歩行時のライトとくらべて考えると揺れが大きするし、上を向きすぎているように思えてならない。自分のはほとんど足元前方しか照らしていないからだ。0 時 45 分に歩き始める。自分のペースを乱さぬように気を配る。早く登っても意味がないが、遅すぎると歩きにくい。途中で勢いよく登ってきた数名に抜かれるが、彼らは大股で姿勢も悪く、とても登山経験者とは思えない。体力だけで登っていけるのか?、今後バテてしまうのでは?なんて思う。良い休憩場所がない事もあり、8 合目は通り過ぎる。途中、先ほど自分を抜いていった数名を抜く。やはりペース配分が滅茶苦茶なのだろう。空を見上げるとビックリするくらい星が多い。こんなに数が多かったのかと感激してしまう。

 1 時 28 分に 9 合目小屋の階段で休憩。チョコレートを出して間食したり、三脚を出して星の写真を撮ったりしてみた(全く撮れていなかった)。かなり冷えてきたのでフリースの上着とその上から雨具の上下まで着てしまった。後から来たパーティーも皆休憩している様子だが、間近にいても暗闇なのでどんな人か判らない。時間を検討するとかなり早すぎるので、 2 時 15 分まで 47 分も休憩してしまった。2 時 43 分に 9 合 5 勺小屋に到着。かなり早いし頂上はもっと寒いと思われたのでここでも休憩することにした。小屋の窪みに寄りかかり、シュラフカバーに入ってしまった。まるでビバークしているようだったがそれでも寒かった。化繊の服に浸みた汗が冷えているようだ。半分眠るようにして時間を待ち、3 時 30 分になって登り始めた。後から来て休んでいた 10 人くらいも同時に登り始めたので少し前が詰まっている。「抜かれたくない」という気持ちが見えておかしい。結局すぐに数人ずつ抜いてしまうことになった。途中、登山道を外してまで強引に抜いていく外人などもいた。あと少しなのに・・・・。4 時 04 分に 10 合目に到着。当然のように最高点に向かって歩くが、そちらには誰も行かない。皆休憩に入ってしまったのか?。御来光を見る場所は最高点ではないの? 。

 4 時 22 分に測候所でもある最高点に到着。日の出の方角は明るくなっているが、4 時 45 分まで時間があるので、三脚などを広げてデジカメとスチールの両方が撮影できるように準備をする。そこには高校生くらいの 3 人組がいるだけで、他には誰もいなかった。御来光の写真を続けて撮影し、周囲の建物などもフィルムに収めた。球形のドームはベニヤかなにかでできているらしく、三角の板が風で「ベコッ、ベコッ、」と歪んでいた。日が昇るとアッという間に周囲が明るくなった。なんと残念なことに GPS が突然不調となり、人工衛生が捕捉できない!。初期化モードになってしまってデータが全部消え、しかも日本最高地点の計測ができないのだ。とうとう諦めて 5 時からお鉢巡りをどうしようかと思いながらプラプラと歩き始める。外回りは危険で内回りのみ可能という看板があったので、「そーかー、じゃあ外側は見えにくそうだなあ」と訳の分からない事を思ってしまった。しばらく下ると東側の須走口山頂に続く上り坂が見え、そこまで登るのがかなり大変そうに思えた。しばらく考えたが、逆光になるし登ってきた富士宮口 10 合目に引き返そうと決めた。トラバースしてあまり登らずに戻ろうとしたのだが道がなく、結局最高点付近まで登ることになってしまった。噴火口の写真を撮りながら富士宮口 10 合目に行くと、たくさんの人がいてバテて寝そべったり写真を撮ったりしていた。自分も下界の風景を写真に撮ったり、自分を写真にとってもらったりしながら休憩した。お鉢巡りをすれば良かったと後悔したが、早く下山したいという気持ちも強かった。この時になって GPS が復活し、富士宮口 10 合目のみ計測できた。

 6 時 15 分に下山を開始する。急な下りで膝が心配だったが、所々に大粒の小石が積もり、1 歩で 1 m くらい「スザーッ、スザーッ」っと楽に下れる箇所がある。有名な砂走りに似ているが、そんな区間は膝が楽で「どこまでもこんなだったらなぁ」と思った。日差しが強く早くも猛暑の兆しだったので、フリースを脱いで入山時の格好となる。遙か下方に富士宮口新 5 合目の駐車場が見え、余りの遠さに絶望的な気持ちにさせられる。「けっこう降りてきただろう」と思った頃に 8 合目の有名な診療所があったのでガッカリさせられた。それでも「平気だろう」と自分を元気付け、水を飲んだり汗を拭いたりの小休止を取りながらハイペースで歩く。膝に負担がかかっているのはわかっているが、何とか持ちそうだ。よそ見をすると途端に岩で足を取られるので、転ばないように前方の足の置き場に集中するように心掛けた。ヘアピンカーブを左に曲がると日差しを正面から受けるので日焼け防止のつもりで下を向いた。鼻が真っ赤になっては仕事にも差し支えるからだ。新 6 合を過ぎ「後少しで駐車場」というところで「入ってはいけない」と書いてあるブル道に入って近道をし、8 時 17 分にデリスペくんに到着した。

 富士山スカイラインへの急坂をフェードしないようにエンブレ主体で下り、振り返って富士山を見ると今日はほとんど雲のかからない絶好の登山日和であった事が判った。水ヶ塚駐車場に入って富士山の写真を撮り、後は御殿場から東名高速を経由して 11 時半頃に帰宅した。

( 富士山= 3,776.5 m )


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