12
14
No.13




− 薮漕ぎの三ッ峠山 −半日( 4 時間 16 分 )

3 月××日 【晴れ】

 登山口は天下茶屋に向かう峠道の途中にあるので、御坂山と殆ど同じアプローチである。12 時 40 分に登山口の駐車スペースに到着し、着替えや準備を整えた。今日は初夏の陽気とかで、甲府の最高気温は 20 ℃前後と放送していた。

 13 時 00 分に歩き始めた。ミレーの 40 リットルに三脚を挟み、ロングスパッツを着けてストックを持った。スパッツもストックもどうでもよかったが、なぜか使うことにした。駐車した場所から三ッ峠方面にも車が入れそうだが、凍結状態なのでチェーンを装着しないと通れそうもない。登山道も兼用なので、その車道を登ることになる。味も素気もない。轍の中を歩いたりしていたが、全面凍結している場所では滑って大変だったし、泥が出ている所はグシャグシャのベチョベチョであった。30 分ほど歩いた場所にここより一般車進入禁止と看板があり、ここまで入ってくれば楽だったかなあと思った。体調が良く、動悸もせずのども渇かないので休まずに登り続けた。頑張って登っていると上からエンジンの音がする。近づいて来るようなので脇に寄って待っていると、チェーンを巻いたジープが下りてきた。きっと山小屋の人が買い出しにでも行くのだろう。雪の上のチェーンの縞々模様を見ながら登り続け、14 時 07 分に小屋の下の分岐に到着した。

 右手に小さな展望台があったので、休憩しようと向きを変えた途端、斜面の泥でズルッと滑り、手を着いてしまった。ストックのグリップと両手が泥だらけなので、そこいらにある雪で汚れを落としながら歩いた。小休止の後、毛無山までプラプラ行って戻ってきたがピークに看板がないので毛無山かどうか確信が持てない。ベンチの数や山小屋の規模からすると相当数の登山客が来ると思われるが、道標も少なくて不親切と思われた。14 時 19 分にぬかるんだ道を歩き始め、14 時 45 分に富士見山荘の脇を通り抜けた。山荘は営業していそうだが人影はなく、やたらと物がたくさん置いてあった。ここまでジープが入ってくるのでなんでも運べるのだろうが、山頂近くの登山道なので興ざめしてしまう。

 14 時 55 分に開運山山頂に到着。山頂のすぐそばには NHK の電波塔が建っていて、無人だが機械音が響いている。天気がいいので富士山や甲斐の山々がよく見えた。山頂記念写真を撮り、ウーロン茶を飲んで休憩した。同じルートを戻るかどうか迷ったが、山小屋だらけの車道を歩いて下るのは避けたい気持ちだった。そこで、少し遠回りになるが清八峠まで行き、そこからデリスペくんまで車道を歩いて下ることにした。車道に出れば暗くなっても遭難しない。15 時 10 分に歩き始めたが、すぐに大きな電波塔のあるピークへの登りとなった。御巣鷹山と思われたが、何処にも看板がなかったのでガッカリした。電波塔の建物の脇をすり抜けるような登山道だが、建物はオイル臭かった。

 清八峠方面は下りとなるのだが、凄い急坂に閉口した。踏んだ雪が凍っていると滑って落ちてしまうので、周囲にステップなり手で掴める枝なりを探しながら慎重に下る。雪が柔らかい場所はズズーッと滑るが、一歩が距離を稼ぐので結果的にはかなり早いし、膝も楽だ。しかし、ついに転倒して右膝を強打した。左下がりの泥斜面で右足が滑ったのだ。幸い靭帯や骨には異常がないようなので、歩行に支障はなかった。土の斜面でも表面の泥が表層雪崩のように滑ってしまうので、うかつに足を置けない。その後も何度も右足だけが滑ってしまい、今日の日記の題名は「右足のおバカさん」にしようと決めた。右足が山足になるので靴の外側エッジになってしまう為とも思われた。登山道は、氷、雪、泥、岩、とクルクル状態が変わり、その都度歩き方をはっきり変えねばならない。とにかく一時間は休まずに歩こうと頑張った。左から差し込む陽は結構高く、ぽかぽかと暖かい。時間的にはまだ余裕がありそうだ。16 時 14 分に小さなピークに立ったので休憩した。ウーロン茶とゼリー飲料を飲んだが、ラーメンを作る気分ではなかった。再び歩き始めると道は笹林となり、その後、枯れ葉で覆われた登り坂となった。枯れ葉がさらさらと靴の上を流れるのが雪のようで面白かったが、時々ズルッと滑るので蹴散らしてみると葉っぱの下は全面氷だった。16 時 29 分に周囲のピークより高いピークに立ったので大幡山と思われたが、ここにも看板や道標は無かった。GPS に記録してすぐに歩き、16 時 38 分に高圧電線の鉄塔下に到着した。清八山と大幡山の間のコルにあたり、電線に沿って左に下れば車道に出る筈であった。

 ザックを置いて道を探すとスキーリフトのように管理用と思われる道が確認できた。清八山を見上げると結構登るし、地図では清八山からの車道も長いので、ここから左に下ることにした。地図には載っていないが、ヘッドランプやツェルト、雨具などの装備も持っているので時間がかかったり、最悪の場合引き返したりしても良いと考えたのである。16 時 44 分に歩き始めるが、すぐに道がはっきりしなくなり、気が付くと水のない川の中を歩いていた。立ち止まって左右を見回すと道らしき箇所があり、そこによじ登って道を歩くようにした。しかし、氷や雪が滑るのでルートを少し外すと道が判らなくなることが何度もあった。それでもしばらく行くと道がはっきりしてきた。その後、左右から細い枝が張り出している完全な薮漕ぎ道となってしまい、しばらくその状態が続いた。そういった種類の木が生える標高となったのだろうか。目に入っては困るが、目を瞑って歩くわけにもいかない。滑降の選手のようにストック 2 本を顔の前に立てて持ち、枝をかき分けて進んでいった。太い枝が低く垂れている場所は薮を漕ぎながらくぐらねばならなかった。17 時 02 分、ぴょんと車道に飛び出した。場所は正確に判らないが、とにかくこれを下ればデリスペくんにたどり着けるのだから安心だ。車道はかなり長い時間歩かされると思っていたが、歩き始めて 8 分後の 17 時 16 分にデリスペくんに到達した。今日はジープの人以外はだれにも会わなかった。三ッ峠山から清八山方面では古い足跡しか確認できず、鉄塔からの下りは獣道程度ではっきりした足跡はなかった。

 靴はドロドロで目も当てられないし、スパッツを使用したのに転倒したのでズボンも汚れてしまった。右膝の怪我は打撲のみと思っていたが、2 ヶ所に切り傷があり、ズボンの外まで出血が広がっていた。

( 三ッ峠山 > 開運山= 1,785.2 m 、御巣鷹山= 1,775.0 m 、毛無山= 1,730.2 m )


12
14
No.13




左側にメニューフレームがないときは HOME からお入りください