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信州・北佐久と小県の温泉めぐり byやませみ


【第1回】 田沢温泉

<田沢温泉について>

東信ではいちばん好きな温泉地です。共同湯を中心に木造の古い旅館が5軒あり、高台の薬師堂がこれを守っているという伝統的な湯場の形態がいまだに保持されています。旅館数は大正年間から1軒 増えただけで、高度成長やバブルの波にも曝されず、静かな環境が残っているのは奇跡にちかいものといえます。ゆっくりのんびり癒されたい方はぜひ訪れてみてください。

現在の源泉は4カ所(上田保健所調べ)

  元湯 明治の源泉 単純硫黄温泉 約39℃ 湧出量不明 未利用 最近の分析:なし
  1号 掘削:S32 単純硫黄温泉 34.9℃ 310 L/min 利用 最近の分析:H12.6
  2号 掘削:S33 単純硫黄温泉 39.9℃ 392 L/min 利用 最近の分析:H12.6
  3号 掘削:H10 単純硫黄温泉 39.7℃ 97 L/min 利用 最近の分析:H11.4

温泉組合長の方にお話を伺う機会があり、源泉の現況を要約しますと、

  ・元湯から2号までの源泉は共同湯の地下にある
  ・古い元湯の状況は後の改装で分からなくなっているが、1号泉に混じって出ているようだ
  ・共同湯浴槽は2号で、かけ湯と階下の洗濯場の捨て湯は1号泉
  ・旅館は1号と2号の両方を引いているが、現在の主力は温度の高い2号だろう
  ・1号は低温なので厨房や洗濯用の湯として使われているのではないか
  ・駐車場で掘削湧出した3号は湯量が少ないのであまり使われていない



田沢温泉「共同湯・有乳湯(うちゆ)

  青木村田沢温泉 TEL/0268-449-0052 水曜休 6-21時 300円
  注)17-20時は地元の方が多く入浴される時間帯なので、外来者は遠慮するのがマナーです

<掲示> 玄関右横に分析表掲示
  田沢温泉2号・有乳湯(H12.6)
  単純硫黄泉(Na-Cl・HCO3) 40.2℃ pH=9.3 286 L/min 自噴 成分総計=228mg/kg
  Na=56.6(91.8) Ca=3.9 Cl=38.9(40.3) SO4=21.0(16.1) HCO3=26.3(15.8) CO3=12.3(15.0) HS=9.2
  H2SiO3=57.2 mg/kg (mval%)

一昨年の改装で別所や野沢大湯のような寺社建築に生まれ変わりました。夕方は近隣からたくさんの入浴客がやってきて、狭い道が大渋滞。朝は朝で地元常連さん達が三々五々集まってきて賑います。内部は清潔な公衆浴場スタイルです。休憩所はありませんが、玄関横にテラスがあってしばし涼むことはできます。

館内に展示室があり古い絵図や古文書がとても興味深いです。以前のモルタル建築のさらに前は、やはり寺社造りになっていて、今の外観はこれを復元したものだというのがわかります。

3x4mほどのタイル浴槽に湯口から源泉が80L/minほどの大量に投入され、ざんざん溢れ出しています。正統掛け流しで新鮮な湯が存分に楽しめます。カラン湯も温泉です。湯口あたりは常連さんが占拠していてなかなか近寄れません。

打たせ湯状に肩に浴びている人もいます。こころなし青っぽく見える澄みきった湯はとてもきれいです。ゆで卵をむいたときくらいの芳ばしい硫黄臭がふわふわ漂い、うっすら泡付きのある弱つるすべ(2)の湯は優しい浴感。成分希薄なぬる湯なのですがよく温まり、浴後はとても爽快です。

掛け湯用に小さい湯溜めがあり、ここは美しい黄緑色をして硫黄臭が濃厚です。テラス下の洗濯場に垂れ流しになっているのと同じ湯で1号泉。現在は浴用には使用されていないそうです。(2002.9.8-9)


外装は堂々とした寺社建築


たっぷりの掛け流しです

かけ湯は美しい緑色

テラス下洗濯場の大量捨て湯



田沢温泉「たまりや旅館」
 
  青木村田沢2690 TEL/0268-49-2005 無休 9-17時(要確認) 600円

<掲示> 浴室前廊下に1号泉と有乳湯(S39)の分析表
  男女別源泉という記載もあるが、浴室前の同じ分配枡から供給されている。
  現在は共同湯と同じ2号泉が主とのこと

共同湯の目の前に建つ武家屋敷みたいな重厚な門構えにちょっと怖じ気付きますが、品良い庶民的なお母さんが切り盛りする気さくな宿です。庭園風の広壮な敷地をもっていて、門からは母屋と古い本館しか見えませんが。奥にはいくつもの棟が連なって、いずれも古い建物です。山側のほうの棟はあまり使われていないように見えました。

今回は一番人気の本館五十六番の部屋を12000円で使わせていただきました。こういう全面開放の(外壁のない)木造建築は、現在の消防法で許可がされないそうで、貴重なものになってきています。もっと上の料金だと新館(8号館)の部屋になるかもしれません。そちらは改装された普通の旅館部屋で、あまり面白味はなさそうです。

浴室は母屋のほうにあって、大風呂(男性用)、中風呂(女性用)、小風呂(家族湯)。家族風呂は2カ所ありますが、一つは故障で使われていません。大・中は浴室を仕切った形になっていて、札を掛け替えて交代にできます。昭和40年代ころに流行したローマ風呂のつくりで、なんとなくレトロな雰囲気があって素敵です。浴槽も洗い場も入念に清掃されて清潔このうえないです。湯気抜き天井のとても高い浴室は二重窓になっていますが、冬はさすがに冷えるので、お湯は若干の加熱で使用されるそうです。暖かいこの時季は非加熱の掛け流しです。

大風呂(3x4m)はライオン湯口から40L/min投入で38℃。75cmもの深さがあって、ちびの私は目まですっぽりはまってしまいます。湯量がたっぷり実感できます。中風呂(2x3m)には底部から注入。こちらは70cmの普通の深さですが、浴槽縁についた腰掛け段の反り加減が絶妙で、昔の職人の丁寧な仕事ぶりに感心します。湯の印象は共同湯から泡付きを除いた感じです。泡のない分ふわふわ感は少ないですが、柔らかい肌触りがさらに増す感じで、これはこれで結構なものです。なにより広い浴室で思う存分にのんびりと長湯できるのが良いです。(2002.9.8宿泊)


大風呂は深い浴槽に澄んだ湯がたっぷり

中風呂は座り具合のよい浴槽に底から注入


江戸期建築の本館2階に泊りました

通り抜ける風が心地よいです


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