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韮崎-奥蓼科の温泉めぐり byやませみ


【第4回】

 

■渋川温泉「保科館」

  茅野市北山5513 TEL/0266-67-2319 無休 10-21時(清掃時間あり) 800円
  http://www.suwa-net.com/hosinakan/

<掲示> 脱衣所に分析表
  渋川温泉3号と渋川温泉の混合泉* H6.4
  Na−SO4・HCO3・Cl(低張性) 41.9℃ pH=6.14 ? L/min
  総計=1291 溶存成分計=1053 mg/kg
    Na=218.9 (74.9) K=43.7 Mg=8.3 Ca=19.1 Fe(II)=4.4
    Cl=107.8 (23.8) SO4=256.9 (41.9) HCO3=263.0 (33.8)
    H2SiO3=117.4 HBO2=8.3 HAsO2=0.12 CO2=238.0 mg/kg (mval%)
   *) HPで、炭酸水素塩泉 65℃ 200 L/min とあるのが3号泉であろう

渋川渓谷中にひっそりと佇む1軒宿は秘湯のロケーションだが、新しい建物は立派なホテル風。とはいえ大女将の婆ちゃんや従業員の対応はやっぱり素朴。昼過ぎに寄ったらまだ湯を張っている途中だというので、食堂でうどんを食べながらしばし待つ。

浴場は古い別館のほうにあり、廊下の風情などは鄙びていてよい。女湯は石板床に木枠がはめられたものに新造されているが、男湯は旧来のコンクリ・石板製のまま。4x1.5mほどの深め長方形浴槽に、パイプ湯口から35 L/minほど源泉が投入され、端っこの排水溝から溢流する掛け流し。湯口温度は44℃あるから冬季は高温泉の量を増やして調整しているのかと思うが、槽内は40℃ほどのぬるめ適温。

湯口近くでは淡緑色、遠くでは赤味がかかって見えるささ濁りの湯は、鉄の変化がよくわかって面白い。新鮮な鉄味にボウ硝のまろやかさがあって美味しく飲める。キシキシがありながら柔らかさをもつ浴感はボウ硝重曹湯に独特のもので好きなタイプ。成分量はあまり濃くないのでのぼせることもなく長湯できる。浴後は鉄分の効果か温もりがいつまでも後をひく。

浴室いっぱいに射し込む低い太陽を背後にすると、もわもわと立ち上る湯気に写る自らの影に七色の光輪が二重三重にできて幻想的。冬の温泉ではかように光とたわむれるのも一興。超寒かったので露天はパス。(2002.12.27)


渓谷に佇む立派な秘湯

 鄙びた別館も残っています

細長い浴室に冬の陽が射します

湯口あたりはこんな湯色



■渋の湯温泉「渋御殿湯」

  茅野市奥蓼科温泉 TEL/0266-67-2733 無休 10-15時 800円
  http://www3.ocn.ne.jp/~gotenyu/

<掲示>浴室前廊下に分析表
  渋長寿湯 H4.3
  単純酸性硫黄泉(H2S) 30.6℃ pH=2.7 自然湧出
  総計=1605 溶存成分計=800.5 mg/kg
    H=1.7 (15.5) Na=128.9 (51.5) Ca=21.9 Al=8.5 Fe(II)=0.09
    Cl=201.5 (51.6) HSO4=16.3 SO4=245.3 (46.5)
    H2SiO3=119.0 HBO2=16.2 CO2=783.6 H2S=20.5 mg/kg (mval%)
  渋御殿湯 H4.3
  単純酸性硫黄泉(H2S) 25.8℃ pH=2.7 自然湧出
  総計=1415 溶存成分計=641.6 mg/kg
    H=1.5 (17.2) Na=95.8 (48.2) Ca=20.3 Al=6.8 Fe(II)=0.4
    Cl=151.0 (49.1) HSO4=13.6 SO4=204.1 (49.0)
    H2SiO3=103.2 HBO2=12.7 CO2=754.7 H2S=18.3 mg/kg (mval%)

奥蓼科のどん詰まり、渋御殿湯が手前、奥に渋の湯ホテル(冬季休業)が並んで建っている。古い絵図ではそれぞれ「殿様湯」「姥湯」となっている。渋御殿湯のほうが大きくて立派だが、古い本館側は東北の湯治宿風で素朴。新館は鉄筋コンクリで味気ない。同地に建っていた木造3階の旧館の写真があるが小谷の山田旅館そっくりで、これが現存していれば秘湯の鄙び宿として大人気だろうと思うともったいなかった。

立ち寄り入浴は新館側(西の湯)のみが可で、本館と同じ総木製の浴舎ながら真湯の浴槽(清水の加熱循環)と冷たい御殿湯の小浴槽があるきりだから全然面白くない。こちらのみシャワーと石鹸が使えるので登山客の利用を考慮したものだろう。部屋休憩込み(2000円)だと両方の浴舎が利用できる。

本館側(東の湯)は総木製浴舎で、手前から加熱湯・長寿湯・御殿湯の3つの浴槽がある。昔は混浴だったのを仕切ったようで、女湯側も同じく3浴槽だが、長寿湯が引き込みになっているから不利。

加熱湯は循環濾過で身体を温めて冷浴に備えるもの。適当に温まったら気合いを入れて冷たい御殿湯にそろそろと身を沈める。たちまち全身鳥肌状態になるが、背筋から電気がぞぞっと伝わり脳天の蓋がぱかっと開く感じ。ぴりぴり射すような刺激と酸っぱい硫黄臭が心地よい。

長寿湯は坪湯のような深い浴槽の底がすのこになっていて、下から生温い源泉が湧き出してきている。ガス気泡を大量に伴うので湯面はボコボコ沸騰しているように見える。浴槽壁のなかほどに空いた排水口への溢流は20 L/minほど。ほかに槽内に女湯側へ通じるパイプ口がある。静止状態の湯は淡青緑色に澄みきってたいへん美しい。

底にさらさら粉末状の白い湯花が大量に溜まっているから、人が漬かると舞い上がって白濁湯になる。レモン様の酸味と炭酸味が明瞭で明礬系の渋味がなく、柑橘系炭酸飲料のようでとても美味しい。サラサラとした絹をなでるような軽い浴感が特徴的で、濃い酸性泉のような締め付けるような厳しさはなく長湯が楽しい。

浴後はほとんど温まらないから速攻で部屋の炬燵に飛び込んでしまうが、しばらくするとまた漬かりたくなる不思議な魅力をもった湯だ。(2002.12.26-28宿泊)


冬の空気はひときわ澄んでます

本館東の湯 手前の坪湯が長寿湯

御殿湯はとても冷たい

すのこ下から湧出する長寿湯


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