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雪の松之山&秋山郷 [4] byうつぼ


■松之山温泉(鷹の湯)「ひなの宿 千歳」

(新潟県松之山町、時間要問合せ、500円、02559-6-2525)
http://www.matsunoyama.com/chitose/

その後津南に戻り、豊原トンネルを抜けて松之山入りです。冬型に戻ったらしく灰色の空から雪がはらはらと降り始めました。今年はついに念願の「千歳」に泊まりました。松之山きっての高級宿でなかなか手が出ないのですが、ほっこり温泉案内所で平日13,500円(1室2名)のプランがあったので予約しました。イッサキさんのレポあり。

松之山を代表する老舗で、「鷹の湯」のはす向かい、温泉街のほぼ中心にあります。館内はさすがにゆったりとしていて、趣味のいい調度が各所にあしらわれています。浴場は男女別の大浴場「ほんやらの湯」、男女交替制の露天「月見の湯」と貸切の古代檜風呂があり、もちろんすべて入りました。

<大浴場「ほんやらの湯」>
内湯(みかげ石枠石貼7.8人、適温)と露天(岩枠石貼3.4人、ぬるめ)。内湯は石の湯口(飲泉用桝あり)から投入、槽内注入+底面吸湯があってオーバーフローはなくたぶん循環かと。少しなまった感じのお湯で松之山臭も弱いです。

露天は茶色+白に複雑に変色した岩の湯口から投入で、浴槽端の排湯口からの排湯。お湯はぬるめに調整され長湯できますが、どうも松之山のぬる湯はしっくりときません。カラン8位、シャワー・シャンプー・ドライヤーあり。

<露天「月見の湯」>
「千歳」の名物風呂で男女交替制。階段をのぼった檜舞台のようなところに木枠(側底面の仕上げは失念)の湯船が据えられています。高台にありますが、目の前にうずたかく雪の山があるので展望はききませんでした。

よこに桝が置いてある木の湯口から10L/min程度を投入で、槽内注排湯はなく端の切り込みから流し出しの源泉かけ流しですが、浴槽の大きさの割にかけ流し量が少ないのは残念。松之山の源泉はとても熱いので、加水しないとかけ流し量を絞らなくてはなりません。湯口と浴槽の端ではかなりの温度差があり、湯もみ板も置いてありました。

お湯は青味がかったうす茶濁。強塩味+苦味(強鹹味)の松之山味に墨を思わせる臭素がかったアブラ臭の松之山臭。浴後も肌に松之山臭が残ります。夕方と朝入りましたが、ぬるめの夕方にくらべて朝はビシッとくる熱さで鮮度感も高いすぐれものでした。瀟洒な佇まいのなか、松之山の湯を非加水かけ流しで味わえる贅沢な浴場かと思います。

<貸切古代檜風呂>
ここはノーマークでしたが、なんと源泉かけ流しの贅沢な風呂で予約制ではないので空いていればいつでも入れます。浴室は狭く目隠しがあって展望はききません。はやくも脱衣所から松之山臭が香り期待が高まります。古代檜枠石貼3.4人の浴槽がひとつ。カラン2、シャワー・シャンプー・ドライヤーあり。

ゼラチン状の湯の花の出た石の湯口から数L/minを投入で槽内注排湯なしのオーバーフローでかけ流し。湯口はかなり熱いので非加水でしょう。

ややにごりのある(色不明)熱めのお湯には灰褐色の湯の花多数。味不明、オイリーな感じの強烈な松之山臭。お湯の濃度感が半端じゃなく、攻めてくる感じの強烈な浴感。浴室内にこもる松之山臭とあいまってヘロヘロになりとても長湯できません。ここは松之山でも最も凶暴なお湯では?。濃厚松之山湯におもわず悶絶 (^^; で、お湯の良さは、貸切>月見の湯>大浴場露天>同内湯 の順かと思います。

部屋は12畳+掘り炬燵にウォシュレットWC付のゆったりとしたもの。料理もなかなか美味しく、地酒も豊富に取り揃えています。小千谷市高の井酒造の「越の初梅」を選びました。やはり旅館の格、お湯ともに一級品の松之山を代表する宿かと思います。なお、日帰り500円ですがどの浴場に入れるかは不明です。

<松之山温泉1号泉>
Na・Ca-塩化物温泉 84.0℃、pH=7.3、60L/min掘削自噴、成分総計=14.75g/kg、Na^+=3412mg/kg (58.20mval%)、Ca^2+=2013 (39.37)、Fe^2+=0.5、F^-=2.3、Cl^-=8656 (98.73)、Br^-=25.7、I^-=4.4、陽イオン計=5565 (255.0mval)、陰イオン計=8832 (247.3mval)、メタけい酸=79.3、メタほう酸=242.0、遊離炭酸=36.0 <S57.11.30分析>

<松之山温泉2号泉>
Na・Ca-塩化物温泉 92.4℃、pH=7.6、93L/min掘削自噴、成分総計=15.71g/kg、Na^+=3496mg/kg (57.65mval%)、Ca^2+=2097 (39.65)、Fe^2+=0.2、F^-=2.8、Cl^-=9367 (98.89)、Br^-=27.5、I^-=3.3、陽イオン計=5752 (263.6mval)、陰イオン計=9534 (267.1mval)、メタけい酸=67.6、メタほう酸=349.5、遊離炭酸=3.2 <S57.11.30分析>
*昨年泊まった「野本旅館」、一昨年泊まった「和泉屋」と同じデータです。


「ひなの宿 千歳」の外観

「ひなの宿 千歳」の男湯内湯

「ひなの宿 千歳」の男湯露天

「ひなの宿 千歳」の露天「月見の湯」



■松之山の温泉番付

松之山温泉は開湯八百有余年の古湯で、草津、有馬とともに日本三大薬湯に数えられ、古くから温泉番付にも登場しています。明治初期の温泉番付が「千歳」のパンフに載っていたのでご紹介します。

行事 紀伊熊野本宮湯(湯の峰)/伊豆熱海之湯/津軽大鰐之湯
勧進元 紀伊熊野新宮之湯(??)
差添 上州さ●たり之湯(沢渡)
  西
大関 上州草津の湯 摂●有馬の湯
関脇 野州那須の湯 但州城崎の湯
小結 信州諏訪の湯 豫州とふこの湯(道後)

前頭一

越後松の山の湯 加州山中乃湯
相●足の湯(芦の湯) 肥後阿蘇の湯(阿蘇内牧?)
.陸奥嶽乃湯(福島岳) 豊後濱脇ノ湯(別府浜脇?)
上州湯川尾湯(??) 肥前温泉の湯(雲仙?)
仙臺成子の湯(鳴子) 薩州霧嶋の湯(霧島温泉郷?)
最上高湯泉(蔵王) 豊後別府の湯
武●小河内原湯(??) 肥後山家の湯(山鹿?)
津軽嶽の湯 濃州下良の湯(下呂?)
相●湯元の湯(箱根湯本) 肥後ひな久(日奈久)
豆州湯川原の湯(湯河原) 能州底倉の湯(和倉?)
十一 信●渋湯の湯(渋) 越中足倉の湯(??)
十二 會津天仁寺湯(東山) 薩摩硫黄の湯(??)

関東エリアでは、以下、下野中禅寺麓湯、相州姥子の湯、豆州小名の湯(古奈)、相州塔之沢の湯、豆州朱(?)善寺湯(修善寺?)、相●宮下の湯とつづきます。

ちなみに以前ご紹介した嘉永二年の温泉番付はこんな感じでした。 

行事 熊野本宮湯(湯の峰)/伊豆熱海湯/津軽大鰐湯
勧進元 熊野新宮湯(??)
差添 上州澤渡湯(沢渡)
  西
大関 上州草津之湯 ?州有馬之湯
関脇 野州那須之湯 但州木ノ崎之湯(城崎)
小結 豆州湯河原ノ湯 豫州銅胡の湯(道後)

前頭一

相州芦乃湯 加州山中乃湯
奥州嶽の湯(岳(二本松)*) 肥後阿蘇の湯(阿蘇内牧?)
上州伊香保の湯 豊後濱脇ノ湯(別府浜脇?)
信州諏方の湯(諏訪) 肥前温泉の湯(??)
仙臺鳴子の湯 薩州霧嶋ノ湯(霧島温泉郷?)
最上高湯泉(蔵王*) 豊後別府ノ湯
秋田河内原ノ湯(??) 肥後山家の湯(山鹿?)
津軽嶽乃湯 飛州下良の湯(下呂?)
相州湯元の湯(箱根湯本) 肥後鄙久の湯(日奈久)
豆州小名乃湯(古奈*) 能州底倉の湯(和倉?)
十一 會津天仁寺湯(東山*) 備州長府の湯(??)
十二 .越後松ノ山の湯(松之山) 薩州硫黄の湯(??)

関東エリアでは、以下、下野中禅寺湯、相州姥子の湯、豆州修善寺湯、相州塔ノ沢乃湯、豆州権現の湯、相州宮下の湯、相州貴賀乃湯(木賀)、野州塩原の湯、相州堂ヶ嶋の湯、相州底倉の湯、上州東老神湯 とつづきます。

*):やませみさんの補足です。
明治初期版では松之山が一躍上位に躍り出ていますね。嘉永二年版にくらべ伊豆・箱根のお湯が減り全国はば広いチョイスとなっています。



■宮中島の湯「ミオンなかさと」

3日目最終日も冬型で朝から大粒の雪が降りしきっています。昨晩20cmほど積もりましたが、こんなのは松之山では大雪のうちには入らないのでしょう。

(新潟県中里村、10:00〜22:00(冬期〜21:00)、500円、0257-63-4811)
http://www.nakasato-21.com/nakasato2/sisetu/

しばらく松之山あたりをさまよったあと津南へ。このあたりは、辰の口、鹿渡、田中、小下里など小規模な温泉宿が点在していますが、ひとつぐらいセンター系も入っておこうと隣村にあるここに向かいました。越後田沢のあたりからえらく判りにくい道を辿り、信濃川のほとりにある「ミオンなかさと」に到着。

とても立派な村営の温泉総合保養施設で、充実したバーデーゾーンも併設されています。脱衣所も広くて立派。浴室入口は自動ドアでスポーツクラブかと思いました ^^) 天井高く窓の広い浴室は、ゆったりとお湯を楽しめそうないい雰囲気。

内湯(みかげ石枠タイル貼15人以上)、かけ湯槽、桶シャワー ^^)、サウナ、水風呂、露天(木枠タイル貼5.6人)。全体に機能的に配置された使いやすい浴室です。露天は軒下タイプですが、余裕をもって配置されているので開放感があります。カラン15、シャワー・シャンプー・ドライヤーあり。平日12時で10人以内とゆったり。

内湯は巨大なみかげ石の湯口から大量投入で槽内注排湯は不明。窓側側溝への上面排湯。露天は木の湯口から投入、槽内注入があって側溝への上面排湯。湯づかいは不明ですが、脱衣所にセンター系では珍しい日本温泉協会の「天然温泉利用証」が掲示されていて「放流一部循環濾過方式、加水なし、加温なし」とありました。

適温のお湯は、紅茶色透明(モール?泉の色)、僅微重曹味に群馬のしんとうや高山の樹脂臭を抽出して強めた感じの絶妙な樹脂臭。(アスナロ系の臭いです)露天の浴槽材のせいかとも思いましたが、石枠タイル貼の内湯でも香るので温泉臭では?弱いツルすべがあってあたたまり、単純温泉とは思えない充実した浴感は少し北の川西町にある千手に似たイメージ。

正直、ここはほとんど期待していませんでしたが、予想外のいいお湯にびっくり。この豪華施設が500円時間無制限とは安い。(少し前まではなんと400円でした)食事のメニューも充実しているので1日ゆったりするのには最適な施設でしょう。さほど新しい施設ではないのにメンテがとてもしっかりしているので出来たてのよう。
千手温泉「千年の湯」原町温泉「ゆくら妻有」などとともにこのエリアでは屈指の良質な日帰り施設かと思います。

単純温泉(Na-HCO3・Cl型) 47.4℃、pH不明、139L/min、陽・陰イオン計=791.42mg/kg、Na^+=235.30mg/kg (93.86mval%)、Fe^2+=0.70、Cl^-=170.5 (43.77)、HS^-=0.3、HCO_3^-=363.8 (54.23)、陽イオン計=249.62 (10.90mval)、陰イオン計=541.8 (10.99mval)、非解離成分・溶存ガス成分不明 <H3.7.15試験>

 


「ミオンなかさと」の外観

「ミオンなかさと」の男湯内湯

「ミオンなかさと」の男湯露天
 



■六日町八海井温泉「龍気別館」

ミオンのあと、唐突にイオウ臭が嗅ぎたくなり、清津峡小出温泉の「苗場館」に行きましたが冬季休業中。廃業した老舗の「古屋旅館」が2003年春に生まれ変わった村営日帰り施設「湯処よーへり」も冬季休業中(1/16〜3/15)でロストは無念。でも、厳冬の凄絶な清津峡の景色が眺められました。それでもやっぱりイオウ臭が嗅ぎたいので、六日町の「龍気別館」へと向かいました。

(新潟県六日町、10:00-21:00、650円、0257-73-2990)
http://www.ryuuki.com/bekkan.html

場所はわかりにくく、東京方面から行くとR17号で六日町の街中をすぎたNTTの交差点を左折、上越線の踏切を渡ってしばらく行くと「ホテル木の芽坂」の看板が出ている交差点があるのでここを左折。すこし走ると右手にみえてきます。やや年季とB級入った建物で、日帰りメインのようですが宿泊もできます。(7室、1泊2食5,000円、素泊り3,500円)時間制限がないのでフロント横の休憩室でゴロゴロと寝ている人多数。

男女別の浴室は、窓が小さくやや暗め。主浴槽(石枠タイル貼8.9人、かなり熱い)と小浴槽(同3.4人、やや熱い)にサウナ(稼働してなかったような・・・)。主浴槽は、石の湯口から熱湯を投入で底面から攪拌用のエアー注入あり。槽内注排湯はなく全面オーバーフローはおそらく源泉かけ流しかと。小浴槽は金属パイプからの少量投入で他は主浴槽に同じ。カラン5、シャワー・シャンプー・ドライヤーあり。平日15時で独占〜2人。

無色透明のお湯には茶色の浮遊物少々。イオウ気は感じられず無味無臭。事前情報ではイオウ臭があるということだったので残念。湯口には硫黄(+石膏)の析出らしいものも出ていたのでたまたま不調だったのかもしれません。微ツルすべがあってかなり鮮度感の高いお湯ですが浴感は淡泊。でも、湯温が高いためかとてもあたたまります。

この内容で650円は少し高い気もしますが、かなりの熱湯が楽しめるので熱湯ファンにはおすすめかと。なお、同一経営で「龍気」という旅館がありますが、別源泉のようです。

<六日町八海井>
Na-塩化物温泉 52.7℃、pH=8.2、湧出量不明、成分総計=1539.2mg/kg、Na^+=490mg/kg (82.50mval%)、Ca^2+=81.0 (15.64)、F^-=3.6、Cl^-=847 (92.14)、陽イオン計=589.7 (25.83mval)、陰イオン計=948.9 (25.94mval)、メタほう酸=35.3 <S59.11.26分析>


「龍気別館」の外観

「龍気別館」の男湯



■二十日石温泉「石打ユングパルナス」

(新潟県塩沢町、6:00~23:00(清掃時間8:00~10:00、冬期24時間)、900円、025-783-7888)
http://www4.ocn.ne.jp/~yung/

スキー客狙いの大型施設でふつうならパスのパターンですが、源泉スペックがいいらしいので前から気になっていました。宿泊施設併設で露天風呂付客室(和室)が11室もあります。この日は平日でしたが、夕方に行ったので館内はスキー&スノボ帰りの若いグループでごったがえしていました。

浴室は内湯ゾーンに内湯(扇形赤みかげ石枠石貼20人以上)、サウナ、水風呂。露天ゾーンに露天(岩枠石敷15人以上)、打たせ湯(5本、屋根付)、薬湯風呂に塩サウナと多彩。露天はそこそこ開放感のあるものですが、折しも雪が強まり入っている人はあまりいませんでした。豪雪地なので屋根はあってもいいかも。カラン17、シャワー・シャンプー・ドライヤーあり。平日17時で25人以上と盛況。

内湯は大きな石の湯口からの大量投入で浴槽縁の側溝に上面排湯。槽内注排湯は確認できませんでしたが、たぶん循環かと思います。かなり熱めの露天は赤褐色に変色した岩の湯口から熱湯(源泉?)を大量投入で、オーバーフローはなく底面の排湯口から軽く引くか自然流下しているかと。打たせ湯は底面吸湯と軽いオーバーフローあり。薬湯はなかなか入り心地のいいもので一番人気でした。

微かに黄濁したお湯は、タール臭(カルキ混じり?)。打たせ湯槽では弱塩味に潮の香、とろみと弱いヌルすべがあっていちばんお湯がいいような感じ。何となく、栃木小山「思川」の打たせ湯を思い起こしました。

スペックの割には浴感の薄いお湯ですが、温泉らしさは残っています。ただしスキーシーズンの夕方はグループで混み合うようなのであまりおすすめできません。なお、HPのクーポンをプリントアウトしていくと200円引きになります。

Na-塩化物温泉 60.0℃、pH・湧出量不明、成分総計=2231mg/kg、Na^+=661.3mg/kg (80.88mval%)、Ca^2+=126.9 (17.67)、Fe^2+=2.1、F^-=3.6、Cl^-=1084 (85.64)、Br^-=3.9、HS^-=0.1、SO_4^2-=177.1 (10.33)、陽イオン計=806.3 (35.82mval)、陰イオン計=1343 (35.71mval)、メタほう酸=34.5、硫化水素=0.03 <H4.10.7分析>


「石打ユングパルナス」の外観

「石打ユングパルナス」の男湯内湯

「石打ユングパルナス」の男湯露天

「石打ユングパルナス」の男湯打たせ湯槽



雪降りに快晴と変化自在な天候にめぐまれた今回の湯巡りは、厳冬の秋山郷や松之山のさまざまな魅力に触れられた味わい深いものとなりました。名うての豪雪地ゆえアプローチはたいへんですが、雪国の景色のなかで味わうお湯は格別。泉質やロケーションも多彩で、変化に富んだ湯巡りが楽しめる魅力あふれるエリアだと思います。


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