シャーデー
SADE(シャーデー)

けだるい声、ストリングスのおしゃれな演奏。エキゾチックな美貌。私が高校生の頃、虜にした歌姫の一人である。
高校・大学の頃は洋楽がほとんどで、女性アーティストとしては、マドンナやシンディローパーなんかが高校の頃はやっていた。その後で、マライヤ・キャリーとかホイットニー・ヒューストンとかがいた。しかし、私はこうしたメジャー路線からはずれて、白人ではケイト・ブッシュとかスティービー・ニックス、リンダロンシュタット、リッキー・リー・ジョーンズとかが好きだった。黒人では、ダントツでダイアナ・ロスやアレサ・フランクリンという女王が君臨していたが、私は、チャカ・カーンやアニタ・ベーカーが好きだった。いまでもチャカ・カーンは好きだが。
で、傾向として、AORとかブラコンとかを聴くときは、ちょっとおしゃれなムードで聴きたいわけで、そのときに、シャーデーの歌声はまた脱力系で良い。シャーデーとの出会いは、「ラブ・イズ・ストロンガー・ザン・プライド」だった。私が高校の時は、学校から帰ってくると家ではラジオがいつも流れていた。そのときも、なにげにおやつでも食べながらラジオを聴いていたと思う。そのとき、ラジオからおそらく打太鼓の単調なリズム、かすれたようなセクシーな声、ゆっくりとしたリズムで奏でられる曲に、これはおしゃれだと確信に近いものを感じてしまった。ちょうど、ケイト・ブッシュがピーターガブリエルとのデュエット、「ドント・ギブアップ」が流れてきたときの衝撃に近かった。同様に、トレーシー・チャップマンの「ファースト・カー」をはじめて聴いたときのような印象にも近い。
といっても、何が衝撃なのかわからないと思うけど、音楽の出会いは感性の出会いでもある。自分の感性にビビッときたものが衝撃であるとしか言いようがない。自分のお気に入りの歌手だけではなく、自分の知らないところで自分の好きなジャンルの歌手に出会うとき。生涯かけて聴いてもいいかナァと思える歌手に出会うとき。それが時代のあだ花であってもその時熱中する人に出会うときはいつも衝撃的であると言える。
とにかく、シャーデーとの出会いは「ラブ・イズ・ストロンガー〜」である。ちなみに彼女はあまり多作ではなく、1984年から2000年の間に5枚しかアルバムを発表していない。しかも、4作目から5作目の間は8年のブランクがある。ライナーノーツでは、シャーデーはモダン・クール・ソウルの第一人者、 トーチ・ソング・シンガー(ジャズボーカルにおける哀歌の歌い手)とカテゴライズされているようである。しかし、ジャズというにはポップだし、ソウルというにはジャズのような印象が強い。つまり、ポップだがジャージーでクールな要素の強い。
しかし、なんといってもシャーデーの魅力は歌声にある。ゆったりとしたシンプルで自然体である。それは、深みがあって優しさに満ちている。それは高くもなく、太く、静かで爽やかですらある。そして、静けさの中にもエモーショナルで官能的ですらある。こんな女性がいるのかという驚きと共に、俗っぽい意味ではなく、まさに高嶺の花のように手の届かない次元の異なるセクシーな人である。
シャーデーは、4作まではベスト盤がでているのでそちらを聴いていただくとして、2000年に発売された「ラバーズ・ロック」もまたゆったりとした温かいアルバムである。
クールで風のように自然に生きている女性。その声はどこまでも温かい。
2006.4.1

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