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        ●蓬莱学園の冒険!!〜南方発放課後メール●
             ★メールニュース★
            【1999年8月3日号】
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●大型台風カタストロフィ襲来!
 7月24日から30日において、宇津帆島を直撃した巨大台風「カタストロ
フィ」は、学園史でもまれにみる被害を学園にもたらした。
 現在判明した時点で、被害は委員会センター、中央校舎群、恵比寿寮など確
認されただけで18カ所。細かな被害も入れれば200カ所を超えると言われ
ている。
 被害総額は、現在調査中であるが、土木建築研究会の見積もりによると、少
なくとも40億円にはなるという。
 ただ、人的被害は思いのほか少なく、死亡者なし、重軽傷者約350名、行
方不明者約150名にとどまっている。
 被害について下北沢貴史生徒会長は以下のように述べている。
「夏休みに入り、学園生徒の大半が帰省していたことにより、人的被害が少な
かったのは不幸中の幸い、9月の新学期までに、出来る限りの修復を行う。ま
た、その際に生徒諸君に迷惑をかけることになるかもしれないが、どうか理解
して欲しい」

●超常現象大バーゲン/カタストロフィの影響か?
 各委員会の調査によると、大型台風カタストロフィの上陸中、学園各地で超
常現象が多数報告されている。
 大怪獣の上陸、建築物の空間転移、時空の混乱、核戦争などの報告が確認さ
れている。学園自身も地面ごと宙に放り出され、ジェット気流にのって地球を
3周したという話まで出てきている。
 学園生徒にも、巨大化やミクロ化、人格交換、超能力や前世の記憶が目覚め
る者などが続出した。
 幸いにも、これらの異常現象は、カタストロフィ通過後に消滅、現時点で後
遺症に悩まされるという報告はないが、学園側は安全のため、病院で精密検査
を受けることを呼びかけている。

●宇宙破壊の帝王・アルバ皇帝来襲?
 巨大台風カタストロフィ上陸中、砂之場ビーチ付近でアルバ皇帝と名乗る変
人が出現したことが確認された。
 目撃者の話によると、アルバ皇帝は全長約20メートル。雨風の吹き荒れる
中、自分は宇宙に破壊をもたらす者と名乗った。
 だが、突風でとばされた浜茶屋の看板が、アルバ皇帝の後頭部を直撃。アル
バ皇帝は、そのまま痛いよ痛いよと泣きながら姿を消した。
 生徒会は、アルバ皇帝の正体は、学園によくいる誇大妄想ぎみの変人と断定、
一般生徒たちに対し、バカがうつるから見かけても近づかないようにと注意を
呼びかけている。
 アルバ皇帝を目撃した浜茶屋の親父の話
「変人? 違う、奴は間違いなく宇宙から来たインベーダーだ。やつには光を
あてちゃなんねえ、ますます凶暴になるだ」

●大型台風カタストロフィ続報/時を超えた学園
 学園に多大な被害を与えた大型台風カタストロフィは、7月31日未明、宇
津帆島の北30キロの地点で消滅が確認された。
 低気圧に変わることなく、文字通り消滅したことに、学園関係者の中にその
異常性を指摘する声が多い中、宇津帆島にさらなる異常が確認された。
 カタストロフィは、1週間にわたって島に上陸し続けたのだが、本土と連絡
により、カタストロフィの上陸時間は2日であることが判明した。つまり、学
園内では1週間の時間が過ぎたにもかかわらず、宇津帆島の外では2日しか時
間がたっていなかったことになり、先述のカタストロフィ消滅は、31日では
なく、26日の未明となる。これもまた、カタストロフィがもたらした異常現
象なのだろうか?
 学園は、生徒たちに時計の時間などを直すように警告している。

●委員会センターの受難/謎の塔出現
 巨大台風カタストロフィの通過した7月26日、委員会センターの南側が破
壊され、巨大な塔が出現した。
 この奇怪な塔は、高さ約160メートルの円錐形で、木の枝のような突起部
分が無数に見られている。全体が曲面で構成されており、見る角度によって外
壁が7色に変化する。全体的に少しゆがんで見えるが、これは塔の周囲の空間
がゆがみを生じているためと、錬金術研究会は発表している。
 塔で一番人目を引くのが、正面に据え付けられている掲示板であり、そこに
は数字がカウントされている。カウントの数字は、正確に1秒に1つずつ減っ
ており、何かの秒読みではないかという意見が支配的である。
 学園は近々、調査隊を派遣して正体を明らかにすると共に、撤去作業に取り
かかる予定である。

●各種委員会活動不能?
 突如、出現した塔によって委員会センターの活動は完全に停止した。塔が出
現、破壊した南側は、センター内を行き来するための通路やスロープ、エレベ
ーターの密集箇所であり、そこが破壊されたことにより、委員はセンター内を
数少ない非常階段で移動せざるを得なくなっている。
 委員会センターは36階建てであり、上の方の階では、被害状況の把握すら、
未だ出来ていない。これから新学期、そして文化祭と大きな行事を控えて、頭
を抱える委員会が続出しそうな気配である。もっとも頭を抱えそうな式典実行
委員会は、急場しのぎとして、多数のアルバイト委員を雇うことを決定した。
 各委員会は、早急な塔の撤去と、委員会センターの修復を望んでいる。

●調査隊完敗/塔・調査不可能?
 7月28日、委員会センターに出現した塔の正体を調べるため、塔調査隊が、
掲示板下の出入り口と思わせる場所から内部に突入したが、なんら成果のない
まま逃げ帰るという無惨な結果に終わった。
 塔の調査隊は、公安委員会・学防陸軍の特殊部隊を中心に構成された約12
0名の精鋭部隊。
 塔内部に突入した途端、彼らの肉体に動悸、息切れ、めまい、腹痛、生理痛、
東京音頭などが襲いかかった。さらに、方向感覚が混乱をきたし、自分がどこ
にいるのかもわからなくなったという。命綱がなければ全員帰還せずという結
果になったのは間違いない。
 外部からの潜入を試みた部隊もいたが、空間異常により全てが失敗に終わっ
た。錬金術研究会の魔術は跳ね返され、ロボット研究会の巨大ロボ「ハイパー
■」は空間異常に巻き込まれ、機体をねじ切られた。内部侵入はもちろん、外
壁にふれることすら出来なかった。
 周囲の空間が歪んでいるらしいということから、旧図書館探索にも使われる
霊的護符などで身を守ったにもかかわらず、このような結果を招いたことに、
関係者は皆、動揺を隠せない。
 果たして塔の調査は行われるのか? 続報に期待して欲しい。

●塔調査開始/手話研究会・秘密兵器「モーゼ」を開発
 塔の調査を事実上不可能にしている空間異常を緩和する装置が、7月31日、
手話研究会によって開発・販売された。
 その装置の名は「モーゼ」という。モーゼは腕輪状の空間調整能力を持った
装置で、これを身につけることにより、装着者周辺の空間異常を緩和させるこ
とが出来る。
 ただし、モーゼの効果範囲は装着者を中心にした半径10メートル程度。そ
のため、塔内部を完全把握するには隅々まで自分で移動する必要がある。
 学園生徒の中には、さっそくモーゼを購入、単独で塔に挑むものが続出して
いる。塔内部の様子は依然不明のままであり、危険ではあるが、生徒会側はこ
れらの活動を黙認している。
 また、モーゼにはインターネット端末としての能力もあり、これを使ってイ
ンターネットを楽しんでいる生徒も多い。
 一方で、モーゼについて疑惑の目を向ける動きもある。狂的科学部を代表と
する科学系団体である。
「手話研に我々を超えるテクノロジーがあるはずがない。手話研が開発したと
いうのは何かの間違いだ(狂的科学部部員)」
 この動きに対し、一般生徒たちは単なるやっかみという見方をしているのが
大半ではあるが、彼らと同意見の者も存在する。
「モーゼを開発したという手話研の綾志免美綱・陽司姉弟は科学の知識はほと
んどない。彼女たちが開発したとはどうしても考えられない(事情通)」
 彼らは手話研究会にモーゼの設計図とデータの公表を求めているが、手話研
究会は、今のところ、それに応じる動きはない。
 モーゼは現在、塔のすぐそばで一個3,000円で販売中。開発者とされて
いる綾志免姉弟自身が、ペットの巨大シマリスとともに売り子をしていること
も多い。

●カウントの謎/塔は恐怖の大王か?
 一部学園生徒の間で、塔の正面で続いているカウントが0になったときに、
何が起こるかが議論になっている。
 これまで出た意見としては「時限爆弾」「目覚まし時計」「0になったら、
今度はひとつずつふえていく」などがあるが、一番有力なのが「恐怖の大王」
である。
 これは、ちょうど塔が出現したのが1999年7月だったことからきた説だ
が、言い方を変えれば、それしか根拠がない説でもある。
 心理学研究会では、「学生が恐怖の大王説を指示しているのは、それを望ん
でいるからだ。彼らは、恐怖の大王の復活を見たいのだ。このような心理は、
ポルトガルの心理学者ウンジャ・コルモンカの唱えた破滅快楽エンヤコラ理論
によって……(以下略)」と説明している。

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