2022.6
バリアフリーの現在地
インタビュー 誰も取り残さない社会を作るために 中野泰志
- バリアフリーの研究を30年やっている慶応大学の教授から話を聞いている.
- 障害の社会モデルの考えが広がり,ICFの考え方に変化し,バリアフリーの考えが推進された.合理的配慮なども必要になった.現在は,ICTの活用が進み,IoTによってスマホなどで電化製品がコントロールできるようになった.
- ユニバーサルデザイン2020行動計画を始め,様々な施策が急速に整備されたが,地方においてはその限りでは無い.その原因の一つに障害のある当事者の権利を第一に考える問題解決志向の不足がある.それは日本がまだ障害は個人の心身機能の問題,という個人モデル,医学モデルの考えをしている人が多い.
- (博士論文) ロービジョン者の読書環境の調整に関する知覚心理学的研究 : 生体機能補完型アプローチから環境調整型アプローチへの転換 (本文)
- バリアとしては,物理的なバリア,制度的なバリア,文化・情報面のバリア,意識上のバリアという四つのバリアがある.このことについては,(政府の広報誌)知っていますか?街の中のバリアフリーと「心のバリアフリー」が分かりやすい図表と共に解説している.
- 心のバリアフリーというワードで調査をすると,このワードを知らない人は7割,連想することは優しさや思いやりが多く,平等は半分,権利,差別,尊厳はさらに低かった.また,まだまだ社会モデルの認知度は低い.
- 福祉の世界では普及されてきたが,まだまだ一般的には普及していないし,建築物移動など円滑化基準適合義務の対象の範囲が限られていてアクセス面での改善もまだまだである.
- 福祉関係者は様々な教育や訓練を通じてバリアを解決することをしてきたが,より社会的な意味で,障害のある人の参加を十分に考えていない現在の社会のあり方を変えていき,人を含めた環境,制度,サービスなどを再構築することも視野に活動してほしい.
- 生活の中に障害者が一緒にいること.その時に様々な障壁を取り除くこと.それが一番大事.
福祉で働く人が忘れてはいけないバリアフリーの課題 大濱眞
- バリアフリーを一とするアクセシビリティについて,障害者権利条約では第9条,「施設及びサービスなどの利用の容易さ」などでも取り上げられている.国連障害者権利委員会も一般的意見第2号に採択し,アクセシビリティとは,物理的環境,輸送機関,情報通信,公衆に開かれまたは提供される他の施設及びサービスに関する概念.
- 〈動向〉大学における障害学生支援のあり方と合理的配慮の考え方 : 障害者権利条約と障害者差別解消法を受けて
- 細かい解釈やあり方はあるが,要するにアクセシビリティを障害者の権利として捉え,その障壁を斬新的に撤廃することを締結国に求めている.
- その中で政策決定の枠組みに,当事者を入れていること.私たち抜きに私たちのことを決めないで,という理念に通じている.
- しかし,地域間格差が解消されていない,バリアフリー化の目標水準が低い,不適正利用が後を絶たない.当事者の意見が十分に反映されていない,アクセシビリティを十分に考慮していないなど多々ある.
- バリアフリーは完全には実現できない.いくらJISなどで規格化してもそれから漏れる障害者は必ずいる.対応しきれないことは合理的配慮などで埋め合わせる必要がある.障害者差別解消法の基本方針では,バリアフリー化が基礎的環境整備の一つに位置づけられている.合理的配慮は障害者からの意思の表明を基点とし,行政機関や民間業者などとの建設的な対話を通じてその内容が検討されることである.従って,福祉従事者は当事者のエンパワメントを意識した支援をこれからも継続してほしい.