2022.11
平時から災害に向き合う
災害福祉支援の動向 鍵屋一
- 2021年に福祉関係者の防災への取り組みが強化された.
- 主に2021年には福祉BCPの策定が義務づけられ,避難のステージだけでは無く,避難生活,復旧・復興まで計画化されることになった.その他,在宅での要支援者,福祉支援の無い要支援者にも個別避難計画が作成されることになった.
- 2021年の災害対策基本法改正により,個別計画が個別避難計画に名称変更になり,その作成が市区町村の努力義務とされた.しかし,作成した自治体は7.9%に留まっている.
- BCPは全ての介護施設,事業所,障害福祉サービス事業所を対象に3年の経過措置期間を設けた上で策定,研修の実施,シミュレーションの実施を義務づけた.作者はそのひな形を作っている.
- 大まかに,職員の自助→避難確認,避難支援,安否確認→福祉支援が継続できる避難先の確保→応援職員,支援者の確保である.
- 福祉避難所は通常,二次的な場所とされるが,要支援を必要とする人にとっては積極的に使っていくつもりで行っていく必要があるのでは無いか.
- 作者の論文
平時と災害時をつなぎ福祉関係者が活躍する二つの考え方 菅野拓
- 災害に関して日本は建物などの復旧は得意だが,被災者支援は苦手手であり,避難所の生活環境水準は難民支援などの人道援助の国際基準をはるかに下回る.また障害者や高齢者等の社会的な脆弱(ぜいじゃく)性を抱える人たちの暮らしを回復させるのが苦手である.
- 日本の災害支援が得意としないのは,一部の地域の一部の人の課題に留まりやすく,喉元過ぎれば熱さを忘れるで法制度の抜本的な改正に至らない.また,行政に任せてはいるが,一般に行政官も含めて素人に留まらざるを得ない人たちに任せていること
- 災害対応に関することは敗戦直後に確立し,地方自治体が担い民間は参画しないという災害救助法によって決まっている.その後,1961年の災害対策基本法,1962年の激甚災害法によって土建国家的な対応が進められた.ソフト系では1998年の被災者生活再建支援法による現金給付.その後生活困窮者自立支援法などなど社会保障による救済措置はあるものの被災者支援の基本的な役割は災害救助法のころから変わっていない.
- 素人に被災者支援を任せてしまうのでは無く,より効率的・効果的で人権に配慮された支援の仕組みや取り組みをするためには,災害対応のマルチセクター化と社会保障のフェーズフリー化がある.マルチセクターとは平時では民間団体がノウハウを持っている.それを役割分担や財源をふり分けるために活用すること.フェーズフリー化とは身の回りのものを平時はもちろんのこと非常時にも役立てるようにすることを意味し,社会保障も災害時も連続して使えること.あるいは,包括的な支援体制の整備などをして,障害者,介護保険,生活困窮者の支援機関が災害時に被災者支援を行うことを規定して,訓練,応援,財源措置の仕組みを作ること.
- 論文
補論 災害から地域の人々を守るために
- 「災害時福祉支援活動の強化のために」社協の提言,「災害福祉支援活動の強化に向けた検討会」
- あちこちで災害が起こる日本において,平時から災害に備え,被災者に寄り添い支援をしていくことが必要である.そのためには,平時から福祉に災害支援の視点を持つことが重要である.
- 災害福祉支援センターは,災害協力で駆けつける福祉関係者やNPOのコーディネート,調整役として設立されている.平時では,市町村行きの災害ケアプランづくり(個別避難計画など)を支援し,災害ケースマネジメントに取り組むことが求められる.