2021.1
どうつくる,包括的支援体制
てい談:社会福祉のこれからと『地域共生社会』づくりの展望
- 2020年に地域共生社会関連の一括法が成立した.社会福祉法第106条の4:重層的支援体制整備事業,同第二項:包括的支援体制を整備するための六つの事業が提起されている.その中で包括的相談支援事業,地域づくり支援事業をつなぐ参加支援事業にまとめることができる.
- こうした相談事業のパイオニアは介護保険によるケアマネジメントだった.その後,この相談支援の方法は子育て世代包括支援センターや生活困窮者自立支援制度に引き継がれてきた.さらにそれらを包括していくことになった.それは新しい生活困難層→制度のはざまや対応できていない人々が可視化されてきたからと言える.
- 利用者本位や多様なニーズへの対応など社会福祉が行うべき事が増えたが,縦割りだったり専門分化してうまく機能してこなかった.生活困窮者自立支援法はそうした縦割りを超えたところで緩やかなつながりで行える制度であるが,まだ行政がそうした発想で運用していない.
- 児童関係では,児童福祉法,DV防止法,売春防止法があるが,非常に厳しい状況の過程や学校から逃げ出した子をサポートする手当がなく,どの法律にも当てはまらない子が数多くいる.その子たちがJKビジネスに流れている(勧誘するためにアウトリーチをする.ご飯や泊まるところを用意する.そして仕事を斡旋し,よくやっているねとほめて自尊心を回復してあげる.まさに個別的,包括的,継続的な支援となっている).日本の全ての公的は福祉はJKビジネスに負けているという言葉を聞いたことがある.また累犯障害者や刑務所から出てきた人も同様である.
- 生活困窮者の伴走型支援という概念を実践し,断らない相談,縦に割らない相談を実践することが大事.自立とは誰にも頼らないことではなく,自分が頼ることができる社会資源を自分の周りに形成していくことである.
- 包括支援を進めて地域共生社会を根付かせるためには,ご当地モデルをどう実現していくか,どのような場を作っていくか,そして生活圏域である小中学校区の活かし方となる.→全社協福祉ビジョン2020
- 社会資源の開発,必要な者を精査して福祉分野以外の人ともつながっていくことなど.その問題は自分の暮らしと地続きあるという意識で「私たちでやる」という認識で行っていくことが大事.
座談会:包括的支援の構築につながる『相談支援』とは
- 包括的支援体制の構築は2016年に打ち出された地域共生社会の実現に向けた地域づくりのための中心的な施策である.2016年から2017年の地域における住民主体の課題解決力強化・相談支援体制のあり方に関する検討会,2019年の地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・共同の推進に関する検討会があった.
- 包括には,1:当事者の生活課題を包括する,2:当事者とその世帯を丸ごと捉える.3:当事者と世帯を包む地域そのもの,4:課題解決のために行動する人々とを包括すること.
- 地域包括支援センターは世帯全体を包括的に支えるという実践を積み上げている.
- 障害者福祉分野では福祉サービスのメニューが増えたが,本当の意味で伴走型支援ができているのかを課題にしている.
- 包括的支援のためには,当事者の思いを受け止める入り口,その課題解決のためにどうつなぐか,そして課題の終結をどう捉えるかである.特に入り口で,当事者のニーズをどう捉えるかがその後の流れに大きな影響を与える.入り口でうまくいかないと,相談疲れや支援拒否などが起き,支援困難事例は出会う支援者によって作られている.相談窓口に嘱託職員や新人を配置する流れになっているが,むしろ入り口こそ専門性を要するものである.
- つなぎに関しては,2021年4月から重層的支援体制整備事業が開始される.難しいケースは多機関協働事業につないでいくという考えとなっているが…,つないだら終わりのケースも多く,また受けた後に困惑するようなことも起こりうる.
- 出口について,重層的支援体制整備事業が事業である以上,ある程度の成果を求められる.しかし,現場サイドとしては,10年30年と作られた根深い問題が一年で解決するとは考えにくいし,完全な終結と言うことは難しいのではないか.福祉の相談はこれで終わりと言うことは難しいと思う.→当事者が踏み出した一歩をどう言語化するかがソーシャルワークの力量であると.→出口支援などについて
- CiNii 論文 - 市区町村における包括的支援体制構築の課題 : 「共生社会」の実現に向けて
- CiNii 論文 - 地域共生社会構築に向けた方法論研究 : 都城市社会福祉協議会元職員へのインタビュー調査から
- CiNii 論文 - 生活困窮者自立支援制度における包括的支援体制に関する研究