2020.4
認知症の今
インタビュー 認知症予防の今(宮島渡)
- 2019年厚労省から認知症施策推進大綱が発表され,基本的考えには強制と予防を車の両輪として施策を推進させると記されている.
- 認知症施策と言われるようになったのは2012年から.それまで認知症対策といわれ,がん対策のように撲滅すると言った意味合いだった.施策は当事者と一緒に考えましょうとする考え方になっている.しかし,いまだに認知症による行動障害など忌避するような現象があり,人々にとって認知症になってはならない,なれば大変なことになると言ったスティグマがある.予防は医療モデルであり,だから共生〜社会モデルとして,認知症を完全には治せないけれど,発症しても幸せに暮らせる社会を作っていこうというわけ.
- 認知症の症状は,適切なケアを受けることで十分効果がある.
- 大綱に書かれてる1次予防,2次予防,3次予防などについて説明.
- 2018年に認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドラインが発表されている.共生社会を進める上で,この人に何をしてあげられるのかではなく,一緒に何をしていくのかだと思う.
インタビュー 認知症の当事者が求める支援とは(丹野智文)
- 39歳にアルツハイマー病になってしまった丹野さんからのインタビュー.
- 重度ではあるが,本人は人の顔が分かりづらい,物忘れがある,道に迷うと言った症状はあるが,普通に体は動くし,特別な病気では無いと思っている.確かに忘れることはつらいが,それを周りの人に伝えて,受け止めてもらえているので,それほど困っていないという.
- 何でもしてしまうとか,気を遣いすぎると逆に本人の成功体験を奪い,傷つけてしまうこともあるので,本人とよく話し合って,できることは自分でしてもらうようにするのが良い.しかもとことんしてもらうことが成功体験につながる.
- 一般の人も福祉関係者もみんな病名を見て,目の前の人を見ていないように感じる.一つのことができないと,全てのことができないと思われがちだが,症状は一人一人違い,できないこともあれば,できることもある.それを応援してあげることが認知症のバリアーを取り除くことになるのでは.
若年層認知症の人の社会参加,就労支援の今とこれから(杉原久仁子)
- 厚労省は2020年,認知症の本人5名を認知症への関心と理解を深めるための普及・啓発を行う『希望大使』に任命した.
- 若年性認知症とは,18歳から64歳で発症した認知症を言う.人口10万人あたり推計47.6人,全国集計3.78万人と言われ,発症平均年齢は51歳程度である.病気に関して本人も家族も受容が難しく,介護負担は主に配偶者にのしかかっている.また制度としては障害者福祉制度があるが,そこにたどり着くまで相当の時間を要する.
- 当事者の共通の願いは,社会とつながっていたい,仕事がしたいである.サポートセンターでは同じような病気による困難を抱えている人たちが話し合う中でエンパワメントできるという利点がある.
- 本論文は,主体的な本人の力を活かすことと,移動における支援が大事であるとまとめている.
多職種連携と地域づくりー認知症の本人と家族に優しい地域へと変容するために(吉村学)
- 認知症の進行段階に応じた取り組みが必要.例えば,初期は周囲に気づかれにくく,医療へと結びつくまでが大変.民生委員や家族や友人の関わりが大事.その後の行動障害をどうつなげていくかが専門職の連携が必要.晩期においては活動性の低下や抑うつなども見られ,最後をどう過ごすかをチームとして悩みながら出していくことになる.
- 多職種での連携では,それぞれが持つイメージ,特に医者に対する苦手意識などが連携の妨げになっているため,そうした払拭を意図したグループワークをする.地域づくりのための仲間を見つける.キャラバンを組んで勉強会を企画するなど耕すなどの工夫をしている.
- 地域課題の多様性,複雑性がすすんでいるにもかかわらず,保健医療福祉分野の教育改革はなかなか進んでいないのが現状である.
人による人のためのケアをすすめる認知症のためのテクノロジー(尾林和子)
- 現在は少子化対策も効果が出ず,年間の死亡者数も高齢化のため多い.まさに超少子・超高齢多死社会となっている.これは人類史上初の経験であり,日本は前人未到の社会を切り開く先べん者として世界から注目されている.
- 認知症のケアには専門的な知識に基づいたアセスメントと経験知が必要になる.その上,情報の引き出しと処理能力も求められる.こうした情報系は機械に任せる方向性が政府から打ち出されており,未来投資戦略とかSociety 5.0等とも言われている.介護ではロボットやICTの活用が謳われている.
- 中等度の認知症にはコミュニケーションロボットは有効であるとのこと.見守りロボットによって夜間の介護疲労の軽減につながったこと.これらの機器を使うことで介護労働が幾分かでも軽減することが期待できるとする.
- 論文見守りシステムを伴うコミュニケーションロボットの導入が施設介護労働者の深夜間勤務負担に及ぼす効果