2010.12
提言「子ども・子育て新システム」を考える

山縣文治「子ども・子育て新システムと幼保一体化」
 明日の安心と成長のための緊急経済対策の各種閣議決定を受け、「子ども・子育て新システム検討会議」が設置され、子ども・子育て新システムの基本制度案要綱(2010年6月29日)が発表された。その要綱の説明である。この要綱では、
1.政府の推進体制・財源の一元化
2.社会全体(国・地方・事業主・個人)による費用負担
3.基礎自治体(市町村)の重視
4.幼稚園・保育所の一体化
5.多様な保育サービスの提供
6.ワーク・ライフ・バランスの実現を柱にしている。
 新システムでの最大のポイントは、文科省(幼稚園)と厚労省(保育所)の財源を一本化にすることである。幼稚園・保育所に限らず広く子ども手当や地域子育て支援事業なども一本化していくようである。もちろん背景には、都市部の待機児童が解消されないことや少子化の原因除去→生みやすい環境作りがあるといえる。ちなみにこの要綱が実施されるのは、様々決定を経て2013年となっている。
 幼稚園・保育所の一体化の議論は実は根深く、1930年代、40年代、70年から80年と続いており、その結論はその都度出ていないのが現状であるが、2007年に認定こども園が出来て都道府県による認定が出て一応の決着を見ている。しかし、根本的に幼稚園は法律レベルでの教育の義務を謳い、保育所は告示レベルであること。保育も教育も同じように捉えられるが、実はその意味は同じではないことなど乗り越えるべき壁は未だに大きいと言える。しかし、現状においてすでに2割の自治体に公私を含む幼稚園がないこと、認可保育所がない自治体は3%に過ぎないことから人口の少ない自治体ではすでに就学前施策が保育所に一極化している。その一方で、保育所は2万以上、幼稚園も1万以上ある制度であり、一気に改革するには規模が大きすぎると言える。
 今後の課題として、
1.子どもの権利保障
2.地域格差への対応
3.社会的擁護
4.人材とサービスの質
5.財源確保が挙げられている。
 簡単に言って、1は保育所などと大人が契約するが未払いなどが発生することが予測されること。2は少子化対策を重視する過疎地域と待機児童解消を重視する自治体など子どもの支援の優先順位が違うことの問題。3は新システムではあまり検討されなかった事案であったこと。4は、人材難や低賃金、将来的には少子化によっていまある保育所などが余ってくるにも関わらず企業が参入する事への疑問。5は財政難であるためどの様に確保するのかという課題である。

 その後「論点」が11あり多様な立場で教授クラスが2ページ程の提言を行っている。現在2012年なので、その後この新システムはどうなったのかを調べないと行けないが、確かに山縣先生がいうように、同じ子どもなのに、保育と教育に分けられているのは出来ることなら是正されるべきだと思う。保育と幼稚園教育は何処が違うのか。私は専門ではないので分からないが…少なくても親のライフスタイルの違いで教育されないというのは子どもの権利からすれば間違っていると言える。むろん、保育所で働く保育士に専門性がないというわけではなく、また幼稚園教諭が偉いというわけでもなく…
 ただ言えるのは、保育士の待遇の低さと労働環境が、幼稚園のそれよりも劣悪な環境におかれていて、保育・教育が出来にくい環境にあることである。それこそが改善されてこその子ども・子育て新システムであると言える。
2012.1.23

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