2007.11
どうする 福祉人材の確保

いわゆる福祉人材確保指針に基づく特集。以前に、メルマガでまとめたので、それを掲載し、補足とする。

論文は、
京極高宣「新しい福祉人材確保指針の今日的意義」
綱川晃弘「人材確保に向けた社会福祉経営」
堀田聡子「訪問介護員の定着確保に向けて」であった。

 2007年の7月26日に社会保障審議会・福祉部会で了承され、告示が8月26日に行われた【福祉人材確保指針】について
 
 福祉人材確保指針は、社会福祉法89条で規定されている「厚労大臣は、社会福祉事業が適正に行われることを確保するため、社会福祉事業に従事する者の確保及び国民の社会福祉に関する活動への参加の促進を図るための措置に関する基本的な指針を定めなければならない」に基づき、定められています。現行の指針は1993年に福祉人材確保法が策定されその後今日まで見直されていませんでした。
 いまなぜ見直されたのかですが、福祉・介護サービスの質の向上のために従事者の専門性の向上が必要である一方、従事者の労働条件や雇用環境に様々な問題があることが2006年度の介護保険法改正の国会審議などで指摘されたことに端を発します。さらに近年の雇用情勢の回復で都市部を中心に福祉人材確保が急速に困難になっていること、人口減少下で、高齢者介護分野を中心に人材需要の持続的な拡大が予測されることから、社会福祉士、介護福祉士法改正と合わせて見直しが行われました。
 見直しの中身については、旧指針(1993年)当時は、福祉の仕事への認知度が低い時代でした。不況もあって、多くの人が福祉への就業を希望した時期もありました。しかし人手を確保しやすい環境の下で、人材への投資はおろそかになり、大量雇用、大量離職を繰り返す中、労働条件は下がり、仕事のイメージもダウンしました。
 今回の見直しは、福祉人材の問題が深刻化し、ほうっておけないことを国が認め、対策に取り組むことを宣言したものと言えます。経営者などは、従来の雇用慣行、配分のあり方、人材確保政策を見直し、再スタートするべき事を告げられたと言えます。

 内容については新指針は、
1.就業の動向、
2.基本的な考え方、
3.方策、
4.経営者、関係団体等並びに国、地方公共団体の役割と国民の役割、
5.指針の実施状況の評価・検証から構成されています。

 3.の方策では、
1.労働環境の整備の推進、
2.キャリアアップの仕組みの構築、
3.福祉・介護サービスの周知・理解、
4.潜在的有資格者などの参入の促進、
5.多様な人材の参入・参画となっています。

 端的に言って、経営者が適正な給与配分に努め、国は適切な水準の介護報酬を設定し、専門性の高い人材配置に対する介護報酬などでの評価や適切な配置基準のあり方を検討することにあります。
 また、キャリアアップの仕組みを構築することによって、専門性を有する従事者に対しては、その社会的な評価に見合う処遇が確保され、従事者の努力が報われる仕組みを構築することが主眼となります。
 やや具体的に、給与に関しては、国家公務員の福祉俸給表を参照にすること。
 資格に関しては、施設長や生活相談員などの資格要件の見直し、あるいは社会福祉主事から社会福祉士へのキャリアパスの仕組みを作ることなどが挙げられます。この他、実習受け入れ態勢の確保にも言及されております。
 この新指針は国、地方公共団体に対する努力義務を課し、かつ、国、都道府県、市町村の役割が明確化にしております。特に介護保険では自治体は保険者として住民にサービスを提供する責務を負っており、その基礎的資源である人材の確保・養成の問題には本来もっと役割をもつべきであると言えます。
 
京極は、上記の指針の概説を行っている。
綱川は、今後の人材の確保は、攻めの視点で行わないといけず、そして様々な仕掛けで、定着を図る必要があると言うことで、AIDAS(アイダス)という視点で解説。AIDASとは、A:注意、I:興味・関心、D:欲求、A:行動、S:満足である。このアイダスは、途中でどこか悪いところがあるとそこから先に進まないという点にある。広報による興味の喚起、働き続けたいと思わせる育成方針やキャリアアップ支援などの明確化。定着については、給与水準を上げるのは容易ではないので、職務満足による自己成長感や達成感を得られるような非金銭的な報酬をいかに人材管理を支える制度や仕組みを組み込んでいけるかがモチベーションを引き上げ、定着させるためのポイントといえる。
 堀田は、訪問介護について、統計から離職が必ずしも高いとは言えないことを説明している。しかし、高まるニーズの中の人材不足は否めず、より離職率を下げ、採用した人材の能力発揮を促すことが大きな課題となっている。さらに離職率の高い事業所とそうでない事業所の幅が大きいこと。ホームヘルパーでも、いわゆる登録ヘルパーの離職率が高いことから、登録ヘルパーをいかに定着させるかが事業者全体の定着化と質の高いサービスの提供に向けた鍵と言える。さらに、登録型では、経験年数が1年程度の人が離職率が高く、そこにはメイドサーバントや経験のなさ?身体的負担に配慮した介護のコツがつかめていないことなどが挙げられる。定着のためには、各種手当ての充実や説明、就労ニーズの把握や職員間のコミュニケーション、研修の充実など継続的な能力開発と能力に応じた処遇である。
2007.10.21

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