2006.5
医療と福祉


今月号は論文がないので、インタビューから抜粋します

2005年10月に医療制度構造改革試案が出され、12月に大綱が示された。2006年2月に医療制度改革関連法案が閣議決定され、国会に上程。医療費の適正化が最も大きなキーワードである
。特に、医療給付費の抑制、つまり公的保険で対応する範囲を制限し、利用者負担を増やす方向が明確になる。
短期的な対策として、全体でマイナス3.16%の診療報酬の引き下げ、患者の自己負担の引き上げ、中長期的には、予防の観点から生活習慣病対策や平均在院期間の短縮などにより、医療給付費の抑制を実現しようとしている。
その他にも情報開示やレセプト開示、地域を重視した医療提供体制の構築なども改革の柱になっている。
この法律が出来るまで経済財政諮問機関と厚生労働省との駆け引きがあった。が、医療給付費の抑制の部分では一致していた。経済財政諮問機関では、風邪や腹痛は医療対象外とする混合医療の導入も狙っていたが厚生労働省の試案に準じ、当面は厚労省の考えを基本的としながらも、5年ごとに諮問会議が実施状況を評価し、実効が上がらない場合は、より厳しい改革を入れていくことになった。
このように財源の圧縮ばかりに目がいきすぎて、では、どのような医療を受けれるのかという明確なビジョンが欠如している。患者が知りたいのは、病気になったとき、地域の中で、どのような医療機関が、どのようなシステムで医療を提供してくれるのか。その体制は安心できるものなのかというグランドデザインが見えてこない。〜財政論主導の印象でしかない。
今回の改革で、都道府県が医療計画を策定し、5年ごとに見直し、地域での連携体制を含めて、より良い医療を提供することが盛り込まれている。さらに、政府管掌健康保険も都道府県を軸に再編・統合され、さらに保険料も都道府県ごとに設定し、将来的には診療報酬も県ごとに設定できるようになる。都道府県の努力如何で県民の医療レベルが試される時代になろうとしている。
福祉関連では、現在13万床ある介護療養病床の廃止が検討
され、25万床ある医療保険適用の療養病床も15万床に削減される。このことによって、これまでの療養病床の利用者は、在宅か介護保健施設に移行することになる。在院日数短縮のためには、こうした療養病床の利用者がなくなればかなり短縮される。
在宅の生活を支えるために在宅療養支援診療所制度が創設
され、診療報酬も手厚く評価されるようになった。しかし、地域型の医療制度の構築はどの程度出来るのかが問題である。
これまでの医療分野で言うところの予防とは、塩分、アルコール、タバコの制限などネガティブなイメージがあり、明確な指針がないため、医学上の有効性が認められず、行政も予算がつけられなかった。国民が求めているのは、これをすると良くなるというポジティブなものなのである。
これからは供給者側がよかれと思っていることが必ずしも患者や利用者能登ってよいことではないことを自覚する必要がある。

実践レポートの中でいくつかのキーワードから

バランスト・スコアシート
(BSC);戦略マップ・目標・成果尺度・目標値・アクションプランを横軸に、財務・顧客・業務プロセス・成長と課題を縦軸に、その経営のビジョンやミッション、経営の質の向上、幅広く経営を支援するためのスコアシート。
診断群分類(DPC);診療活動の質と原価の評価・管理を容易にする。
プライマリ・ケア
;住民の身近なところで(近接性)、性別年齢を問わず、子供から高齢者まで対象とすること(包括性)。
クリティカルパス
;地域連携パスは、良質な医療を効果的かつ安全に提供するための手段として開発された診療計画表

インタビュー2

病院か介護保健施設かで同じようなケアを受けても全く違うことになる
。例えば、紙おむつなどのケア用品は、病院では利用者負担、介護保健施設では保険適用となる。また、各自治体によっては、使用済みのオムツの医療廃棄物の処理にかかる費用について、事業者側が負担するか、自治体が負担するか、対応が異なる。コスト面で膨大な違いが生じてくるほどである。
フェアなサービスの困難性−地方の村社会では、都会のような匿名性はないので、病院や介護事業者によるアンフェアな処遇に対して不満を持ってもなかなか声を上げづらい。
情報公開制度は、事業者の内容が分かるという点ではよいが、情報開示が進むと言うことはいわば自助努力の時代であることを突きつけられる。〜自分で選択したのだから自己責任をとってください。

2006.8.10

ホームインデックス