2002.2
障害者福祉の支援費制度導入に向けて〜地域生活支援とケアマネイジメント

座談会
平成15年に身障、知的障害等の分野の制度が措置から支援制度に移行する。支援制度とは、市町村が支援費を支給決定し、サービスの利用料については利用者が支援費という形で助成を受ける仕組み。利用者がサービス提供者に支払った利用料に対応しサービスが提供されることになる。言い換えれば、利用者は契約に基づいて、サービス提供者から適切なサービスを受けることが出来るようになる。

何が弾力的になるのか
措置制度は委託された業務以外は出来ない仕組みになっていたが、支援制度は、利用者との契約の中で行われるので、改善を含めて利用者のために様々な工夫が行える。

授産施設について
授産施設では、様々な形態があり5法に跨り15種別あるがそのなかで、障害者の就労促進の一翼を担い、福祉的就労を進めるという点で体系を一本化する必要があるのではないか。しかし、支援制度では、社会事業授産施設や生活保護授産施設などは対象外となっている。また、2001年度から開始された小規模通所授産施設では、同じ法のもとにありながら支援制度には移行しないというのであれば、同じ基本的な施設のあり方としてはどうなのかという疑問を生じます。さらに、授産施設の相互利用制度の運用面に置いて様々な課題が出てくるのではないか。
小規模通所授産施設は措置制度でなく、利用者と業者の契約で行われるため対象外である。今回の支援制度は、従来の措置制度で行われたものを対象としている。

障害区分の課題など
介護量だけで推し量ることの出来ない、ニーズやケアの必要性が高まっているが、それが厚生科学研究の調査書から見えてこない。
授産施設の立場から、同調査書から働くという部分が圧倒的に少なく、着眼点も職業リハビリ、国際障害分類改訂版の中の活動や参加の視点などを考慮したものにしてほしかった。
障害者手帳による区分も日常生活の実態にあっていない判定であることが多い。特に自閉的な傾向の強い利用者などは、日常的な介護の多さなどはそこになかなか反映されていない実態がある。
障害程度区分の基本的な考え方は、援助の必要性の度合いと援助の困難性の度合いを基本的な尺度として設定しようとしている。強度行動障害などは特別の加算なども考えている。
また、支給期間を施設サービスでは3年で区切り、その都度利用者と業者の契約の見直しなどを行っていく。3年の間に社会的な基盤が整備されて、地域へ開放されることもあり得るからである。その際の見直しの評価基準や公平性についてのガイドラインを作る必要がある。また、選択されるメニューや社会資源が少ないために、かえって利用者が選ばれるという事態が起こりかねない。基盤整備をしっかりと行っていくことが必要。
また、障害者計画に様々な団体が参入して策定していくことが肝要である。

指定基準について
人的配置基準をどの程度に定めるのか…。対人援助であるからより良質なサービスを行うためには人手が必要である。
この機会に従来の基準を大幅に強化しようとは思っていない。むしろ、規制を緩和して、事業主の主体性・自発性に沿った運営が出来るようにやりやすいようにという方向での指定基準を考えている。措置制度では、施設と地域の比重を考えた場合、施設への金銭の振り分けが多かったが、今後は新規の施設を建設せず、地域政策の方に重点的に行う。

利用者の立場からの諸問題
知的障害は、改正の柱に「自己決定、自己実現」があるが、はたしてどのくらい理解できるのかという問題があり、家族は自分の子供のことはよく分かる、他人様は分からないという発想が強い。しかし、家族の意向は本人の意向であるとは限らない。成年後見人制度や地域福祉権利擁護事業なども十分に機能していないようであるが、これらがきちんと機能するシステムを作る必要がある。
成年後見人制度は法務省の所管であり、平成15年度を迎えたときに、この制度利用に関する裁判所の手続きがどれだけスムーズに行えるのか推し量れない。家族に限らず、信頼の置ける人が決定しても良いということもあり得る。親がいる場合は、裁判所はよほどのことがない限り成年後見人に親を選ぶ。
利用料については、今回も扶養義務者の負担が示されているが、原則的には利用者本人の収入によって考えてほしい。いつまでも家族の状況に本人の地域生活が左右されてしまっている状況はおかしいのではないか。
支援制度において、利用者の負担は基本的に応能負担の考え方を取った。介護保険ではサービスの必要経費の半分を利用者が保険料として払っているが、障害者福祉サービスは全額公費で賄われている。そのため、一定の範囲の扶養義務者にも負担能力に応じて負担しないと、国民の納得が得にくい。言い換えれば、施設に入所すれば扶養義務者は全く負担を追わなくても良いという考え方は国民の納得は得られない。なお、授産施設の費用徴収の件については、契約に基づいて働く福祉工場では費用徴収はないが、授産施設は更生施設と同様に福祉サービスを提供する施設である以上、費用徴収をしなくてはいけない。

苦情解決体制をしっかりと作る
自己評価をしっかりとする「障害者・児施設サービス共通評価基準」などを用いる。
将来的には第三者評価を導入すべく、現在、調査評価者を国で養成している。
様々な情報や、体系の再構築、一元化、など様々なチャンネルが開放され活用しやすいユーザビリティな構築を行って、利用者、家族、関係団体、施設などの意識改革が必要

論文1
障害者の地域生活支援を巡る障害者ケアマネイジメントと支援費制度の関係性
ケアマネイジメントとは、エンパワメント、権利擁護、利用者中心、自立と自己決定である。障害者のケアプランはとくにエンパワメントな面が強い。そのなかで、脆弱な社会資源を嘆くのではなく、何でもありという発想のもと利用できるものは利用するという柔軟性が求められる。
支援制度の導入から、様々なアクションがあると思われる。それは、社会資源の幅を広げるものになろう。NPOの参入、介護サービスをしている業者の参入、従来の施設が発奮して在宅サービスを立ち上げるなど。
複数のケアマネイジメントで共同でプランにあたるという仕組みが日本にはないが、チームの重要性は今後高まっていくことになる。

論文2

精神障害者地域生活支援センターの現状と今後の課題
センターの機能は、生活支援、開発、連絡・調整、窓口相談、情報提供、就労支援、サービス提供、仲間づくり、危機対応、ボランティア育成、地域との交流など。設置状況は、大きな都市などではほとんど設置されているが、小さい市町村ではあまりない。また、社会福祉法人や医療が母胎になっていることが多い。まだまだ、社会資源としては低いのである。

論文3

精神障害者の就労と地域生活への支援
精神障害者をとりまく最近の医療・保険・福祉分野での地域生活に向けた様々な施策の変化は、同時に就労への関心をますます高めさせている。医療面では、精神科救急医療体制の整備、精神科ディケアの承認施設の増加、医療機関による訪問看護の実施など。また、社会復帰施設の増加とセンターの法定化、精神障害者訪問介護の試行的実施の開始など。平成14年から居宅生活支援事業が市町村に移管される。さらに、小規模作業所も増加しつつあり、あまた、法定施設としての小規模授産施設への移行の道も開かれる。こうした傾向は、再発や破綻が減少して地域での日常生活を比較的安定して過ごせる精神障害者の人を増大させており、それに伴って、これらの対象者が籍を置く小規模作業所などを中心に、職業リハビリへの関心が高まってきている。
以下、就労支援(ジョブコーチ)の実施状況、手順、問題点について論じられている。

その他
実践的視点で見る社会福祉法p49-51
「知的障害者を巡る社会福祉法の意義と展望」
(〜法改正の完全実施に向けて)
東北福祉大学助教授 赤塚俊治

シリーズ論点p76-81
「福祉・介護サービスのIT化・情報化を展望する」
立命館大学教授 生田正幸

ホームインデックス