2000.4
介護保険時代を拓く

インタビュー
 介護保険成立までの流れについて、戦後しばらくは要介護高齢者は生活保護の枠内で行ったこと。その後、老人福祉法が出来、医療保険から老人保健施設の活用など老人福祉と老人保健の分野で発展してきたが、それを統合していくと言うことで、今回の介護保険が出来上がった。
 ケアマネジャーがちゃんとケアプランを作るのかどうか、体系的な研修も行われていないため、大丈夫かどうか。介護報酬の支払いがスムーズに行われていくかどうか。さらに費用徴収がはじまるが、被保険者の反応はどうかが心配されている。
 給付面の仕組みは医療保険の出来高払いとは異なり、コントロール可能な物となっている。要介護数の見通しは、サービス事業者の判断で左右される物ではなく、市町村が要介護認定を適切に行うことで、チェックできる仕組みである。介護報酬も、施設・在宅共に要介護度に応じた包括的な金額を決めている。また、審査会では、コンピューターから医師の判断さらには、各専門家による判断など2重3重に客観性と公平性を確保するように作っている。
 設計の段階から、各事業者による介護報酬の割引やコスト引き下げを期待している。さらに情報開示をすれば、利用者の選択権の多様性や選ばれることで利用者本位になれると思っている。さらに介護予防を通じた、在宅重視の方向である。そして、ベット数が多ければ事業者を指定しないという総量規制を盛り込んでいる。

岡本祐三「介護保険制度と福祉改革」
 介護保険見直し論について。始まるといった段で、子が親を介護するという我が国の微風を損なうような介護保険には問題がある。だから介護している家族にも手当金を出すべし、同時に翌年4月からの保険料徴収も見合わせ、制度を見直すべしという提案が為されていた。結果としては、高齢者の保険料を半年間は徴収しない、以後一年間だけの半額軽減、低所得者の世帯のみを対象にした慰労金10万円。その財源は国債でまかない、総額8000億とのこと。この国債発行により、国債を購入した比較的所得に余裕がある世帯に利率が払われ、銀行が収益を増やすことになった。
 どうしてそのようなことになったのか。この介護保険が、従来型の国家主義を突き崩し、内部から地方の自立を推進する制度であることに気づき、一部の政治家が自らの影響力の低下に思い至って、恐怖したのではないか。
 制度に身をゆだねるのではなく、制度−社会システムを主体的に使いこなすという姿勢を親子世代が共有することが不可欠である。子供世代も自らの生活を束縛させることなく、親世代も子供達の犠牲の上に自分の生存が成立しているという負い目をかっじる事亡く生活できる(本当は預けてと言う言葉を使わなくても良いようになるべきだろう)私は子供達の赤ちゃんになりたくないと。子供の生活や自己実現の犠牲の上に成り立つ自らの生存とは、尊厳あるいは誇りとはほど遠い物ではないだろうか。

白澤政和「介護保険制度とケアマネジメントの意義」
 ケアマネジメントの機能は、介護支援専門員によって多様なサービスを要介護者などのニーズに合わせて、総合的・一体的・効率的に提供することにある。その結果、要介護者などは質の高い地域生活が可能となる。さらには要介護者などの自己洗濯・決定を尊重した援助が展開され、個々人が自立する社会の形成が可能となってくる。と書かれているが…
 ケアマネジメント・システムについては、介護保険により一つの窓口で総合的・効率的にサービスを提供する仕組みが可能になった。従来まではサービス提供の権限が分散され、利用者は様々な機関の窓口に出向かなければいけなかった。
 危惧されているのは、公平な判断が出来るのか。法人内で介護支援専門員の自律性・独立性を高めることで、組織の呪縛から解放させることが求められる。と書かれているが…

武居敏「介護保険制度と社会福祉施設経営」
 トップの在り方とか、経営とは何かなどについて書かれている。
 収入が下がることが懸念されるが、会計基準の変更により減価償却をすると、経費は確実に増える。社会福祉施設の収入増の要素は少ないので、支出を抑えるために、費用の中で最も多くを占める人件費の削減に目がいくこと。とはいえ、やる気をそぐ要因になること、人事考課が人件費削減の手段 になりがちであることに注意を喚起している。
 介護保険の混沌とした状態は、まさにチャンスだと思う人もいるが、確かな物がなく、不安を抱えている人が大半である。つまり、今確信が持てないでいるのは社会福祉法人だけではなく、勢いのあると思われている新規参入の企業も同様である。

三浦公嗣「要介護認定の概況と課題」
 すべての保険制度には、給付に際して保険事故が発生したかどうかを保険者が確認するプロセスが組み込まれている。この様な仕組みがなければ、その保険は財政的に破綻するか、破綻を防ぐために高額の保険料の支払いを被保険者に求めなければならないことになる。それが要介護認定であり、審査 である。
 医療保険と違い、保健・医療・福祉を総合的・一体的に提供しようとする介護保険制度の給付範囲の広さを考えれば、医師のみの判断ではなく、保健や福祉の専門家も加わって総合的な判断を行うことは、介護保険の長所である。
 痴呆の高齢者についての認定が、心身の障害程度では図れないことについて、どのように審査しているのかの説明など。あとは、公平な審査をするためとか介護認定審査会委員としての業務の説明であった。さらに介護保険法上、認定調査に従事する介護支援専門員は公務員としてみなされている。これは公平公正な認定を実施するために、その従事者を法的に位置づけた物である。不法行為があれば公務員として処罰を受けることになる。場合によっては、その介護支援専門員が属する居宅介護支援事業者の事業者指定も取り消されることもある。と、ちまたでいうケアマネは公務員だったんだなぁと。
2008.2.16

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