1998.1
社会保障構造改革の方向
講演.1
- 木村忠二郎、黒木利克、小山進次朗の戦後の福祉官僚の成果、GHQの政策を俯瞰する
- 基本的な土台を固めずに当面の対策に局地的に行ってきたことの反省
- 緊急性があったが、それを強制的に職務的に行うために措置制度が出来た。それを裏付けるために社会福祉法人というハードを作り、民間福祉事業等への公金支出の禁止という制度のため、財政援助という形で、措置制度を組み込む。福祉法人はそういう背景の中で、局地的に緊急的に細分化され、その中から大雑把に区切り、1種、2種と位置づけたのが社会福祉事業法である。
- イギリスのシーボーム改革、コミュニティ・ケア法の紹介。福祉事業の一元化、再構築、ケースワーカー、ケアマネイジメント、コミュニティ・ケア計画
- パターナリズムからの脱却、社会的弱者を救済するという家父長性的なものから。
- パラダイムの転換。パターナリズムと重なるが、そうした旧来の価値観の転換。供給と受給の対等な関係。縦から水平への権力の移行。
- 対等になるための条件整備。成人後見人制度。財産管理、人権など。情報の公開。イギリスでは、口頭で苦情を言うことが出来、改善できない場合は、地方公共団体に苦情を言うことが出来、4週間内に処理をしないと行けない。
- 福祉の教育レベルの向上は、福祉を社会的な評価を引き上げるためにも必要なこと。
- 概説的な、俯瞰を持ってありきたりに語られている。
講演.2
- 6つの改革とは、行政改革、財政構造改革、社会保障構造改革、経済構造改革、金融システム改革、教育改革を指す。その中で、教育改革は異質である。他の5つは、ある種の制度改革であるが、教育は、人の心の奥まで立ち入っている。
- 明治以来、中央集権の下、人的資源も含めて全国の資源の配分、教育システム、流通システム等あらゆる面で中央政府が一定のコントロールをしてきた。
- 政府が特定の産業に投資をする場合に、国民の貯蓄性の高さがあったらこそ、それを背景として、資金面で潤沢な供給が出来た。
- しかし、国の借金は500兆ともされ、どこの先進地でもない借金国でありながら、国民の貯蓄は1200兆円といびつな構造となっている。また、人件費の高さが海外への委託等で、産業の空洞化が生じている。
- 規制緩和:役所の行政指導などは、法にはないが、国がいえば、県も市町村も民間も従うという図式がよく機能している。規制緩和の対象にするべきではないか。地方公共団体への権力の委譲など。
- 既得権の放棄:規制緩和による既得権を失う覚悟を持てるか。中産階級の増大による階級の混沌化。現在の中央庁の再編による。族議員の存在意義が揺らぐことになる。その辺の覚悟はあるのか。国民年金の制度にしてももしかもしたら、既得権を放棄しないといけないかもしれない。
講演.3
- 高齢者の捉え方。アメリカでは、60〜75まではヤング・オールド、75〜90までをオールド・オールドとして捉えている。日本でも75から高齢者と考えるべきではないか。
- 医療の進歩で、今後は医療よりも介護へとウェートが移っていくのではないか。医者は、病気にならないように努力することで儲かるように考えていく必要があるのではないか。
- 病院批判。薬の問題、必要以上に数字を持ち出して、国の借金が大変だとか、保障費は膨れるとかそんな話。
講演.4
- 介護保険の概説。介護の社会化、社会保険形式、縦割りから多様なサービスへの移行。介護を医療保険から切り離す。
- 詳しい説明
- サービス基盤の整備について。うけやすい形式にすること。民間の導入でハードとソフトを揃えることなど。
- 経済全体では、医療、年金よりも一桁少ない比率である。対象者数の見込みがたてやすい。介護機関が平均して短い。給付は定額制である。しかも、1から5で上限があり、医療の無制限とは違う。
- 財政論的には、税による給付で、例えば消費税を上げることにどれだけ国民の同意が得られるのか、保険の相互扶助の観点に立った方が同意を得られると思われる。また、税であれば、応能負担によって払う人と払わない人の格差が大きくなる。医療では、保険であり、そうした関連性からも馴染まない。保険に関しては、未納者についてどうするのかとか、事務負担が多いとか、逆進性が高いとかそういった議論もあるが…結局、自己責任と公的責任、あるいは権利性の問題など、どちらが使いやすく、当事者にとって良いのだろうか、股導入しやすいのだろうかという議論になる。また、掛け捨て論では、介護は誰もが直面することであり、二人にひとりは介護が必要な状態になるという、必要性の高いシステムであると理解する必要がある。
- 老人福祉と老人医療の比較では、福祉サイドには、サービスが選択できない、所得調査の必要など心理的抵抗感がある、競争原理が働かずサービスが画一的になる、応能負担による中高所得者層の負担が増大するという点
- 公平なサービスと自費負担によるサービスの選択という多様性の創設。