1997.6
児童福祉改革元年

1996.3中央児童福祉審議会基本問題部会設立
1996.12「少子社会にふさわしい保育システムについて」「少子社会にふさわしい児童自立支援システムについて」「母子家庭の実態と施策の方向について」
1997.3「児童福祉法などの一部を改正する法律案」

制度と実態の齟齬が生じていた。
平成になってから「児童福祉」から「児童家庭福祉」へ変化。
1.子育て支援システム、自立支援システムの構築
…「国の子」から「社会の子」へ。保護を要する児童から自立支援システムやよりよい状態の創出(ウエルビーング)へ。
2.子供の最善の利益の尊重
…入所などの措置、その解除、停止、変更を行う場合に、子供の最善の利益を配慮した手続きとして、知事は都道府県の児童福祉審議会の意見を聞かなければならないとする規定が盛り込まれる。また、児童相談所長が知事に報告するさいには、子供の家庭環境や措置についての子供自身や保護者の意向を記載しなければならない。
3.保育制度、保育システムの見直し
…「保育所への入所の措置」が「保育の実施」に変わる。措置という言葉が法制度から消える。「保育の選択的利用」が制度上明確に組み込まれた。市町村、保育所の情報を提供する義務ないし努力義務の規定。保育所における乳幼児などの保育に関する相談、助言の努力義務。学童保育施策−放課後児童健全育成事業が新設される。条文規定では、措置という仕組みがなくなって、現行で言う措置を必要とすると判断される子供が、保育に欠けている状態にあるにもかかわらず保育サービスを受け入れられぬことがないように、児童相談所や福祉事務所が市町村に通知し、市町村が保育の実施を行いうる方途を開く。また、地方公共団体間、特に市町村間の保育の実施に関わる連絡調整による適正なサービスを進める条件も整えられる。
4.児童福祉施設の機能の見直しと自立支援の強化
乳児院は、特に必要ある場合1才でも入院できるようになる。連続的なケアが重視される乳児院、養護施設における乳幼児ケアの統合は見送られる。虚弱児施設は廃止され、現行の養護施設に統合される。その養護施設は「児童養護施設」という名称になり、その目的として、入所児童の養護の他、その自立を支援することが加えられる。児童自立支援かつ援助事業が新設される。義務教育を終了した子供の自立を図るため、共同生活を営む特定の住居で、相談その他日常生活上の援助や生活指導を行う。満20才まで可能。範囲は、情緒障害児短期治療施設や母子寮で生活する子供まで広がっている。現行の母子寮の名称が「母子生活支援施設」と改められる。教護院は「児童自立支援施設」になる。「不良行為をなし、またはなすおそれのある児童」の他に「家庭環境その他の環境上の理由により生活指導などを要する児童」が加えられる。(情緒障害児短期治療施設や児童養護施設との接点を広げることになろう)また、これらの施設における入所中の子供達の就学義務が明記される。
5.児童相談所と児童家庭支援センター
…センターの目的は、地域の児童の福祉に関する各般の問題について、児童、母子家庭、地域住民などからの相談に応じ、必要な助言を行い、また保護を必要とする児童に対する指導や児童相談所などとの連絡調整などを総合的に行うとされている。そして、センターは、養護施設などの児童福祉施設(保育所をのぞく)に付置される児童福祉施設という性格を持ち、また職員に対して守秘義務が規定されている。児童相談所所長がセンターの指導を委託したり、あるいは都道府県が自ら設置するセンターの職員に指導させたりする措置をとる規定。…公的な責任と権限を有する児童相談所的なケースワークの専門性を、本来ケアワークの専門性によって立つ児童福祉施設の機能として拡大していくことについては、少なからぬ疑問と議論がある。とりわけ親権と子の権利が対立する事例についての慎重な対応や、適正な配置、運営指針並びに担当職員の専門性の確保、向上など、運営上の課題は非常に多い。
この他、母子家庭に関して、母子及び寡婦福祉法の一部改正により、第19条の就職を希望する母親やその子供の雇用を促進するための相互協力機関として、母子福祉団体、児童家庭支援センター、母子家庭支援施設が加えられた。

座談会より補足

保育サービス
〜いまの女性は、困窮よりも自己実現による就労がほとんどであり、子供にとっても質のよい保育サービスも合わせた確保したいという願望が強い。一昔前は、行政の範疇でしかできなく、それ以外のサービスはいけないとされてきた…規制という概念。(夜間保育や延長保育や自社の広告など)また、親の都合で選択されて子供の福祉が二の次になるのではという危惧もある。応能負担については、福祉の業界だけの制度である。将来的には応益負担に変えていかないといけない。もし、新しい事業を行う場合、人件費や設備をペイできる、認められる制度であるかどうか。認可条件の弾力性を(規制緩和)。

論文(児童福祉法の改正と要保護児童福祉施設)
1.定員割れの対応
2.設置目的あるいは対象規定とずれた利用のされ方になっている施設の調整
3.設置目的から必ずしも逸脱するものではないが、利用者の質が変わってきた施設
4.公立施設のあり方に対する問題…非効率である。
5.地域福祉サービスの導入による施設の多機能化、地域化、あるいはシステム化

利用者手続き及び入所者の権利に関する問題。「都道府県児童福祉審議会の意見を聞く」という新制度が導入されたが、検討過程で話題になったといわれる第三者機関がこれであるとすれば、むしろ非現実的な制度提案と思えて仕方ない。入所時に迅速な手続きなどがなされない可能性があるなど、権利擁護としても多くの問題があるし、ましてやケアへの不服申し立てなど、議論になっていた入所後の権利擁護に大きな課題を残したままである。

論文(児童家庭支援センターの展望)
センターの創設とその規定は、老人福祉法第5条の3により老人福祉施設とされる老人介護支援センターをそのモデルとしている。児童相談所が判定、一時保護、措置といった個別的・法的・制度的支援及びトリートメントを中心とするのに対して、センターは臨床的・ソーシャルサポート的支援を行うことを中心とすると考えられている。親の意に反しても子供の福祉を図るために強制的ケアの手段を有していない。強制的ケアが必要な場合は、児童相談所に通告することになっている。

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