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        ●蓬莱学園の冒険!!〜南方発放課後メール●
             ★メールニュース★
            【1999年10月19日号】
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●いよいよ最終階層?/最後は魔王退治だ!
 委員会センターに出現した塔の内部攻略も、いよいよクライマックスになっ
た。先日、第8階層を天野蒼二が攻略したのだ。女王を蘇らせた彼は、ついに
最終階層に足を踏み入れたのだが、なんとそこはいわゆる「RPGの世界」。
学園生徒たちは、それぞれが通りすがりの勇者となってシーブスランドを邪悪
に包む魔王を倒さなければならない。
 魔王を倒したときに何が起こるのか、関係者は注目している。
◎第8階層トップクリア者、天野蒼二(H315221)のコメント
「いよいよ大詰め。あほらしい探索だったけど、これが最後かと思うと……。
でも、しっかりとやらなきゃ!」

●文化祭開催! 今年のテーマは「なんだっけ?」
 10月18日午前0時。10万人のカウントを合図に、今年の文化祭が開催
した。曲芸部の花火を持っての空中ブランコで幕を開けた文化祭だが、テーマ
は「……忘れた」。なんと生徒のほとんどが知らないというマヌケぶりをも示
した。もっとも、下北沢生徒会長自身も「なんだっけ?」と慌てて側近に聞く
ぐらいであるから、やむを得ないのかもしれない。
 文化祭は来月17日まで続く。

●アルバ皇帝宇宙に帰る
 砂之場ビーチで繰り広げられたアルバ皇帝との戦いは、14日夕方、アルバ皇
帝が宇宙に逃げ帰るという形で決着した。
 学防軍や一般生徒たちと死闘を続けたアルバ皇帝だが、突然、戦意を消失。
自ら負けを認めた。彼はしばらくの間、自分の敗北を弁護するような愚痴をた
れ、やがては光の球となって宇宙へと飛んでいった。
 だが、彼は再戦の意思を表明しており、近い未来、アルバ皇帝が再び来襲す
る可能性は高いという。
 この戦いで、学防軍は全体の31%の装備を失い、その損害額は70億を超
えるさえと言われる。慢性的な財源不足に悩んでいる学園に対し、学防軍がさ
らなる装備を求めて学防費の増額を求めるのは必至であり、来年度の予算を巡
る攻防はさらに熱くなりそうだ。
◎戦った一般生徒のコメント
「勝った、勝った」
◎戦った文学部生徒のコメント
「アルバ皇帝、私たちが朗読した小公女やフランダースの犬を聞いて泣いてい
た。……案外いい人なのかもしれない」

●塔の正体判明!/塔は時空船「レヴィーガスト」
 7月に出現して以来、何かと学園に騒動をもたらしていた塔の正体がついに
判明した。
 塔の正体は、異世界「ヴェスト」の時空航行船試作機「レヴィーガスト」。
時空航行の実験中、トラブルを起こし、この世界のこの場所に不時着した物だ
という。不時着の祭、船のエネルギーでもある時空エネルギー「フォーム」が
大量に流出、塔の周囲の時空は歪み、それが学園調査隊を苦しめた結界のよう
になっていた。この歪みは、塔周辺ほどではないにしろ、宇津帆島全体に広が
り、島や学園の怪異現象の増加を招いた。
 そして、手話研究会が販売しているモーゼは、周囲のフォームを回収するも
のであることが判明した。
 かねてからの噂通り、モーゼを作ったのは手話研究会の綾志免姉弟ではなく、
ペットとされていた巨大シマリスのシスとリマである。2匹(2人)は「ヴェ
スト」の知的生命体で、「レヴィーガスト」の搭乗員であった。不時着時のシ
ョックにより外に放り出され、帰れなくなったが、綾志免姉弟や手話研に保護
された。
 これによって、手話研究会は当初より、すべての事情を知っていたことが判
明、公安委員会は、手話研究会会長と綾志免姉妹から詳しい事情を聞くことに
している。
◎公安委員会のコメント
「手話研の行動は、学園の安全を脅かすものであり、今後の捜査の結果によっ
ては、手話研幹部の全員逮捕もありえるだろう」
◎手話研究会会長のコメント
「私たちの行動が最善だったかはわからない。けれども、間違ってはいないと
信じています」
◎通りすがりの生徒Aのコメント
「異世界の生命体かぁ。僕は医療技術研究会なんだけど、シスとリマを解剖さ
せてくれないかなぁ」

●塔=レヴィーガスト続報/カウント0は臨界点
 手話研に対する捜査の過程で、今まで論議を生んでいた例のカウントの正体
も明らかになった。先の記事で、船のエネルギーであるフォームが漏れて周囲
に異変を及ぼしていることが判明したが、それは言い方を変えれば、レヴィー
ガストのエンジンが不安定な状態だということ。
 例のカウントは、エンジン限界までのカウントであった。ヴェスト人である
シスとリマの話によると、エンジンが危険な状態になるとカウントが始まり、
0になると限界、爆発を起こすという。
 現在の状態でカウントが続くと、11月1日午前0時にレヴィーガストは爆
発することになる。爆発の規模は不明だが、委員会センターが跡形もなく消え
るのは間違いなさそうだ。
 爆発を防ぐには、レヴィーガストのエンジンを安定させるしかないが、それ
が出来るのはレヴィーガスト内部のスタッフだけである。我々は、そのサポー
トをするしかない。具体的行動としては、生徒たちがモーゼをつけてにレヴィ
ーガスト内部に挑み、フォームの濃度を薄めるしかない。つまり、今までのよ
うに塔に挑めばいいのだ。
 これだけならば、なぜ手話研が今まで事実を隠していたのかがわからない。
事情を説明して、学園に協力を仰げばいい。そこで、公安委員会は、まだ手話
研は何かを隠しているとみている。

●塔=レヴィーガスト続報/爆発か台風か、文化祭中止?
 レヴィーガストについて、手話研がなぜ事実を公表しなかったかが明らかに
なった。レヴィーガストは、発着の際に周囲に時空混乱を及ぼすことがわかっ
たのだ。生徒たちには心当たりがあるはずだ。レヴィーガスト出現と同時期に
学園を襲った台風カタストロフィである。あれは台風ではなく、レヴィーガス
ト着陸の際に生じた時空混乱現象であった。
 つまり、エンジンを安定させ、レヴィーガストが発進するときには、カタス
トロフィと同規模、あるいはそれ以上の時空異常が宇津帆島を襲うことになる。
カタストロフィの被害を考えると、文化祭はその時点で中止となるのはほぼ間
違いない。
 学園の被害を最小に押さえ、文化祭を続けるにはこのままカウントを続けさ
せ、レヴィーガストを中のスタッフもろとも爆発させるしかない。手話研は、
中のスタッフを救い、シスとリマをヴェストに帰すためなら、文化祭がめちゃ
くちゃになって中止になってもいいと判断したのだ。
 手話研が公表しなかったのは、文化祭推進派の反発を恐れてのことだった。
 なお、一部からは「安定させたらそれを維持、あるいは停止し、文化祭が終
わってから時空航行を開始すればいい」という意見も出たが、地球にはフォー
ムが存在しない以上、先延ばしにすることは非常に困難だという。
 学園側は、レヴィーガストを爆発させるか、このまま発進させ、文化祭を中
止とするかの選択を迫られている。
◎式典実行委員会のコメント
「文化祭の中止は出来ない。異世界の人間のために学園のお祭りを犠牲には出
来ないし、こんな騒ぎになったのもレヴィーガスト側の自業自得だ。生徒はす
ぐに塔の探索をやめ、このまま塔の爆発を見守ること。なお、爆発の瞬間は学
園放送を通じて生中継する予定」
◎手話研究会会長のコメント
「これは私たち人間の良心の問題です。行動に困ったときは考えてください。
こんなとき、どんな行動をとることが、もっとも人間らしいだろうか。人間と
して、胸をはれる行動だろうかと」
◎一般生徒Aのコメント
「どっちの展開が面白いかな」
◎一般生徒Bのコメント
「手話研はあんなことを言っているけど、ずーっと事実を言わずにだましてい
たのは誰だよ。ま、あいつらは、自分の行動に酔える人種だからね」

●塔=レヴィーガスト続報/学園生徒による直接投票実施
 レヴィーガストの措置について、学園側は生徒たちによる直接投票の実施を
決定した。告示は24日、投票日は31日、締切時刻は午後6時。あわせて、公安
委員会による手話研・綾志免姉弟に対する学園裁判も行なわれる。

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