2005年5月15日 更新

グラス・ハーモニカに関する考察

18世紀後半に開発されたグラス・ハーモニカが爆発的に普及(70年間に4000台製造された)して突然消えた原因について考察してみました。

仮説1 グラス・ハーモニカ(グラス・ハープ)に使用していた鉛ガラスから鉛が溶けだして演奏者が鉛中毒で死んでしまった。
グラス・ハーモニカが開発された、18世紀に使われていたグラス用のガラスは、透明度が高く、加工しやすい、鉛ガラスが中心でした。この鉛ガラスには鉛が24%以上含まれており、濡れた指先で直接グラスをこするグラス・ハーモニカの演奏時にガラスに含まれる鉛が皮膚から吸収されて長い時間蓄積されて、鉛中毒で死んでしまったと推定されます。

訂正 2005/05/15 ソーダガラスも有りましたが、1781年にフランス人の「サンルイ」が鉛ガラスを発明してクリスタル・ガラスとして高級ガラス器を開発してその透明度の高さと加工しやすさで今までのガラス器(ベネチアグラス、ボヘミヤン・グラス)を駆逐して行った時代にグラスハーモニカが誕生したようです。


仮説2 グラス・ハーモニカの音が聴衆に精神的な影響を与えて使用が禁止されてしまった。
グラス・ハーモニカの音が人体に精神的な影響を与えたことは、事実な様です、グラス・ハーモニカの演奏を取り扱ったCDのライナーノートに記載されています。詳しくは グラス・ハーモニカの歴史と評判に記載して有りますので参照願います。
では、なぜ人体や精神に影響を与えたのしょうか。グラス・ハーモニカの演奏の音声といろいろな音声をFFTで分析して比較して見ました。
グラス・ハーモニカの音の特長は、100Hz〜10kHzまでフラットであること、人間の聴感特性によく似ている2点です。他の楽器の音に比べて倍音の減衰がほとんどなく、人間の耳に与える高音域のエネルギーは、相当強烈な物と思われます。人体の音に対する共鳴は、体全体で行われていますのでこの強烈な高音域の音が主に大脳に直接共鳴して精神的な影響を与えるのではと推定されます。聴力のセンサーが飽和してしまうことも、あり得ると思います。精神的にトランスレートすることで有名なガメランの音よりも数段強烈なエネルギーです。
比較したFFT分析結果は、この欄の下に続いてますが、左のフレーム内のリンクをクリックしても表示可能です。

仮説3 音が小さくてオーケストラで目立たない存在になった。
これは、実際にグラス・ハーモニカの音を聞けばすぐに否定されます。こんなグラスでこんな大きな音がでるのかと思うほどの部屋中に鳴り響く音がでます。

仮説4 ガラスがもろくて壊れやすく破損して無くなっていった。
鉛ガラスは、とても柔らかくかけやすい上に重いので、衝撃に弱く、移動で破損する事は充分考えられます。また、音程を調整するのは、ガラスの直径で決まりますので、音程を調整するのは難しいと推定されます。オルゴールの様に取り付けた鉛のおもりを削ったり、串歯状のリードを削ることが出来ませんので、壊れた部分の補修は困難であったと推定されます。

突然消えた原因について、仮説を元に私なりに推測すると、仮説2の精神的に影響を与える点が強調されて、演奏会から閉め出され、仮説1の演奏家が鉛中毒で減少して演奏されないようになったのではないでしょうか

グラス・ハーモニカのFFT分析結果

特長は、100Hz〜10kHzまでフラットで倍音の減衰がほとんどない。特性的に人間の聴感特性によく似ている。2kHz〜10kHzまでのエネルギー密度が高く線が詰まっている。

ガメランの音のFFT分析結果                  

80Hzから20kHzまでだらだらと下がって行くのが特長です。2kHz〜10kHzまでのエネルギー密度が高く線が詰まっている。

オルゴールの音のFFT分析結果

50Hz〜10kHzまでだらだらと下がっている特性で、10kHz以上に強いピークがでている。2kHz〜10kHzまでのエネルギー密度ややまばら。

ブラスの音のFFT分析結果

500Hz位をピークに蒲鉾型の特性です。下がり形はかなり急です。2kHz〜10kHzまでのエネルギー密度が詰まっています。

ピアノの音のFFT分析結果

400Hzくらいがピークで蒲鉾型の特性です。エネルギーの密度はまばらで彼方も急です。

オーケストラの音のFFT分析結果
100Hzからやや緩いカーブで下がる、エネルギーの密度は少ない。高音域の落ちはやや少ない。

ヴィオリンの音のFFT分析結果

100Hzから5kHzまでフラットで以降ややゆっくりと下がっている。5kHz以降の線が詰まっており10kHz以上の密度はやや高い。

グラス・ハーモニカの音のFFT分析結果(再表示)


 ガラスについて
ガラスの種類は多く、それらは化学成分、使用方法、製造方法などによって分類する事ができます。このうち最も広く使われている分類方法が、化学成分によるものです。大きく分けて3つのグループがあります。
1)ソーダ石灰ガラス(ソーダガラス)
主に窓ガラスやコップなどの一般的なガラスです。堅く軽いのが特長で、原料は珪酸、ソーダ灰、石灰です。

2)鉛ガラス、
鉛を含むガラスで、融解温度が低く、加工しやすく透明度が高く、屈折率が高いなどの特長があり中世に教会のステンドグラスなどに使われています。近代では、含有する鉛の性能を使って、放射線防護ガラスやブラウン管などに使われています。またカメラに使われているレンズにも高屈折率で透明な鉛ガラスが使われています。原材料は珪酸、炭酸カリウム、酸化鉛で鉛を24%以上含み柔らかくて重いガラスです。
鉛ガラスの中で鉛を24%以上(24〜35%)含み透明度の高いガラスをクリスタル・ガラスと称して高級装飾グラス(ワイングラスなど)やシャンデリアなどに使用しています。 高級ワイングラスなどに使われているクリスタル・ガラスは、現在も鉛ガラスです。

3)硼珪酸(ほうけいさん)ガラス

耐熱性のガラスポットやオーブンレンジ用のガラスに使われています。原材料は珪酸、硼酸、ソーダ灰です。

東洋佐々木ガラス鰍フホームページから参照しました


ガラスとクリスタル・グラスに関するやや詳しいホームページです。 フランス アンティーク マリアンヌ 辞典



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