不思議とゆたすけの身体からは疲労が消え去っていた。勇者の泉→サマルトリア→ローレシア→サマルトリアともういいというほど歩き回されて、さっきまでぷんすかしていたくせに、今はただただりんご君のキュートでコケティッシュな魅力に吸い込まれそうになっているだけ。本当に可愛いよなあ....。
はっ!! 何バカなこと考えてるんだ。相手は男じゃないか。いくら可愛い顔をしているとはいえ、ぼくのものになるであろうムーンブルクの女王(誰が決めた)を奪おうとしているライバル(誰が言った)じゃないか。そうだ。この軟弱ボーイと共に、さっさと冒険の続きをしなければ。
2人は宿屋を出て武器屋へ足を運んだ。りんごの初期装備はこん棒と革の服という何とも脆弱なものだ。そうか、こいつは戦士にも魔法使いにもなれない中途半端な王子だったのだ。
ぼく 力が弱いから
あんまり重いものが 持てないんだ....
そう言ってりんごは恥ずかしげにうつむいた。やっぱり可愛い....。
ゆたすけはとりあえずなけなしの金で革の盾を買いりんごに渡した。
どうも ありがとう。
良いから装備しなよ
この時、ゆたすけはLv.7、りんごはLv.1。
やはり旅立つ勇者は行かなきゃでしょう、ということでまずは勇者の泉を目指すことにした。体力の低いりんごをかばいながら、ゆたすけは先に立って道を進む。敵モンスターは執拗にりんごを狙って来た。複数のモンスターがいっぺんに襲いかかって来れば、さすがのゆたすけも守り切れない。しかしりんごは傷つきながらも、自分をかばってくれるゆたすけにホイミをかける....。ゆたすけは心の中でこんなことを考えていた。
もうムーンブルクの王女なんてどうでも良いよな。ぼくはりんご君を守るんだ。そうさ。何も3人揃って冒険する必要はないよ。ぼくの力とりんご君の魔法の力があれば、ハーゴンなんてイチコロさ。その後どうなったかちょっと心配だけど、ムーンブルクはすっ飛ばして、とりあえず先を急ぐことにしようかな。
さあ、ムーンブルクを目指して
がんばりましょう
うん、そうだね。
すっかりりんご君にメロメロ状態の勇者は、このまま彼の言うなりになってしまうんでしょうか。
ということで、愛は本当に世界を救えるのか!? 次回をお楽しみに....。