筆者:宗宮 誠祐
掲載:『Free Fan』No.31、2000年12月
 
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地主さんへの「正面玄関」式のもつ特性

 所有者の許可を得て堂々と胸をはってクライミング――あこがれの正攻法。でも、攻めるわけじゃないので「正面玄関」式のほうがいいかな。現実はなかなか厳しいものがありますが、努力は続けなくてはならない。
 例えば、「鳳来湖の岩場を愛するクライマーの会」などが所有者と話し合い、利用に関する合意書を作成する。マナーなどについても明記します。その岩場を登りたいクライマーは、所有者と合意に達した団体に登録し、合意事項に同意してからそのエリアを利用する。同意書には事故があっても地主さんには損害賠償請求をしないという項目を入れる。また、万一の事故の場合は、「愛する会」などが全責任をもって対処し所有者には迷惑をかけない旨、明記する。

清掃集会の会場となる小滝橋下駐車場

 もちろん、現行法下では、この同意書に法的な効力(カナダのへリスキーなどは法的効力のある権利放棄事項書にサインさせられる)はなく、お守り程度なのですが、とりあえず所有者のかたに迷惑をかける確率は減ると思いますし、安心してもらえると思うので説得しやすいと思います。
 次に、地主さんと合意書を取り交わしたグループの代表は、場合によっては管理責任を問われることになるので、その対処をします。そのためには、少なくとも、以下の備えを行う必要があると考えます。
(1)登録会員からマナーや駐車などについての同意書の項目を守り、また自己の責任でクライミングをし、グループの代表などに損害賠償請求をしないという同意書をもらう(相続権のある家族からも)。
(2)さらに、万一に備えてグループ代表名で賠償責任保険に入り、訴訟に備える。
(3)万一提訴などをされたら、保険やカンパ及び人的資源を投入して訴訟を闘う(保険については契約可能だそうです)。
 こうしておけば、たぶん地主さんを「事故ったときの管理責任」から守り、鳳来湖を愛する会で法的責任を肩代わりできると思います(弁護士に確認の必要あり)。また、この備えとは別に、事故防止、マナー、オウンリスクなどの啓蒙活動は継続することも肝要です。所有者への説明時に「マナーを守りますからお願いします。」とだけ言って「管理責任」の話を省略しておけば、このようなことは必要ないのですが、やはり信義上、事故ったときに地主さんが管理責任を問われる可能性がないわけではない、というリスクを説明しないわけにはいかないと思います。また、地主さんにインフォームド・コンセントしておかないと、後で交渉に行った人にも迷惑がかからないともかぎりません。もちろん、事故が訴訟になる可能性はとても低いとは思いますが……。
 うーん、なんと言っていいのか……。そこまでやらないとダメなのかとも思いますが、最近の司法改革や弁護士の増員、そして訴訟費用保険の販売などから、今後の日本は「訴訟社会」に移行していくと予想されるので、これくらいしておかないとダメみたいですね……。やはり、そろそろ法的効力のある権利放棄書が日本でも必要かもしれません。暮らしにくい時代になったものです。

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