筆者:大西 一彰
掲載:『Free Fan』No.30、2000年9月
 
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●登る人のモラル
 今すぐにでも我々ができることは、岩場でのモラルの徹底や、クライマーに対する啓蒙活動だろう。
 これから岩場でクライミングを始める、もしくはもう始めているクライマーに知ってほしいのは、日本の岩場のほとんどが私有地の中に存在し、他人の土地を無断で使用しているエリアが多いことだ。
 我々が思っているほどクライミングは市民権を得ておらず、他人の土地で遊ばせてもらっていることを認識してもらいたい。
 ゴミの持ち帰りはもちろん、岩場での排便は基本的に禁止し、やむえない場合は持ち帰る、クライミングギアの残置をしない等は常識であろう。

親子クライミング教室2000/8/19 (photo: Maki)

 以上のほかにも、最近岩場でよく見かけるクライマーの危険行為や気になることをいくつかあげてみたい。

1.ルートの終了点で直接トップロープをしている。
 本来終了点はロワーダウン用のもので、トップロープ用ではない。終了点のカラビナ・スリングは傷みも激しいので支点は自分で作ってもらいたい。

2.一本目のボルトに何回もフォールしている。
 一本目のボルトが抜ければ即グランドフォール、よくて大怪我、悪くて死亡。ボルトは100%安全ではない。抜けることだってあるのだ。これは一本目に限らず、終了点までのすべてのボルトに言える。

3.同じルートで何回もグランドフォール寸前まで落ちている。
 ルートによってはランナウトし落ちれば危険なルートもあるが、通常のルートではまず考えられない。原因はビレイヤーの未熟さかクライマーの実力不足だろう。グランドフォールしたときのことを考えてほしい。怪我をして救急車を呼ぶ事態になったら、それこそ自分だけの責任ではすまなくなる。事故が原因で岩場が登攀禁止になる可能性だってあるのだ。

4.岩場の情報不足
 初めての岩場に行くときは、その岩場の現状を把握してから行くのがベストだろう。昔ならいざ知らず、今はクライミングジムやインターネットなどいくらでも情報収集のアプローチはあるはず。

 以上であるが、上記1・2・3の危険行為をする人たちは、自分のやっているクライミングに対して勉強不足と言わざるをえない。他人まかせではいつかは命を落とすことになりかねない。「自分の身は自分で守る」ということは、いつの時代でもクライミングの鉄側である。
 今のクライマーは、なんでもあるのがあたりまえという感覚があるのではないのだろうか? 岩場があるのがあたりまえ、ルートがあるのがあたりまえ、残置ヌンチャクあるのがあたりまえ。しかし、岩場やルートは開拓者が時間と労力を費やして作りあげたものだろうし、ヌンチャクもだれかがかけにいったのだろうし、ただそれにあやかって登っているだけだろう。
 クライミングとは与えられたものを消化するだけのものではないはず。自らがなにかを求めて登ったり行動するものだと思う。
 今回の鳳来湖の問題も、全国どの岩場でも起こりうる問題としてとらえ、いままで我々の「なんでもあるのがあたりまえ」の感覚を見直し行動するときではないだろうか。
 一つ一つの力は小さいかもしれないが、やがて大きな力になり、クライマーの意識を変える動きとなればいいなと思っている。
 そこで、全国レベルで各エリアの情報を交換できるような、クライマー間の連絡網を作ることも提案したい。

 最後に、
 だれかになにかを与えられるだけではなく、自分になにができるかをよく考えて行動しよう。それが、問題の解決に一番必要なことかもしれない。

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