筆者=杉野 保
掲載=『Free Fan』No.30(2000年9月)
 
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アクセス・ファンドとは何か

 Access Fund ――アメリカのクライミング雑誌やトポを見ていると、かならずといっていいいほど目に入るこの文字。山をバックに柵が半開きになったマークとともに、といえば思い出す人も多いかもしれない。まちがっても投資信託の広告ではない。
 そのままなら「立ち入り基金」、つまりは山や岩場へ立ち入ることで生じる諸問題解決のための基金である。クライミング先進国であるアメリカには、こんな基金が10年も前から存在する。
 今回の鳳来問題を期に、名前は聞いたことがあっても中身は意外に知られていない、この「アクセス・ファンド」を参考資料として紹介したい。

栃ノ木沢林道(1998年撮影)

1.アクセス・ファンドとは?
「クライミングエリアの開放と維持、および環境保持に取り組む、全国規模の非営利団体」
「環境保持」とは自然環境のみならず、クライミングの環境もさしている。たとえばアンカーの整備なども活動内容に含まれている。専従スタッフはいるものの、営利は目的としていない。

2.歴史
アクセス・ファンドは、アメリカン・アルパイン・クラブ(以下AAC)によって1989年に設立された。岩場への立ち入り問題解決のためには、資金の介入が不可欠(土地の買収などを行なうため)として、AAC内のアクセス問題委員会が判断。当初の目的は基金の積み立て、維持と、問題解決のための分配であった。
基金の呼びかけと宣伝活動を行ない、私有地、公有地を問わずクライマーの立ち入りに関する問題が増加しつつあることを説明した。これらの活動は、土地の買収のみならずローカルのクライミング団体への資金援助、より自然を尊重したトレイルの開拓、メジャーエリアのボランティアによる清掃、簡易トイレの設置、という形でも発展していった。
1990年に専任スタッフ2人を雇い入れ、12月にAACと分離、国内のクライミング関連問題解決のため専門組織として独立する。
問題解決の資金調達のため、アウトドア産業界、法人組織、小売店、会員に資金援助を呼びかけ、現在、産業界から75以上、200以上のジム、小売店、10000人以上の会員が賛同し、基金を行なっている。
1998年、アクセス・ファンドは国内(周辺)約100カ所のエリアの開放維持、閉鎖解除のための活動、クライマーが与える環境破壊の軽減、地主との交渉を行っている。また、機関誌「Vertical Times」「Rock&Ice」「Climbing」に活動内容を公表している。
現在も、アクセスに関する問題解決に当たっては最前線で活動を行っている。
 全国に、各地方を代表するまとめ役を配置。本部はボウルダーに置き、9人の専従スタッフを持つ。

3.スタッフ
 組織の健全な運営の監査を行ない、方策の制定と監督を行なうためのボランティアの役員会に名を連ねているのは24人。クライミング社会に通じている者ばかりで、クライミング資源の獲得、そのための行動、その後の発展、法律問題、会員確保など、役割分担が成されている。会長はマイケル・ケネディ。副会長が、フィル・パワーズ。他に有名どころでは、Conrad Anker 、Mia Axon、Scott Cosgrove、Russ Clune、Chris McNamaraなどが名を連ねている。1年に2回集会があり、任期は3年。毎年秋に選任される。
 経営管理、事務処理などを行なう専従スタッフは、別に9人。ニュー・リヴァー・ゴージの開拓で有名な Rick Thompson も含まれている。
 また、アメリカ国内を40エリアに分けて、各地区にまとめ役を配置している。

4.活動内容
アクセス・ファンドはパートナーシップを最も大事なものと考えている。地主、土地の管理者、環境保護団体、クライミンググループ、アウトドア関連ビジネス、ガイドサービスなどの団体、組織と協力体制を持ち、エリアの保護、獲得を行なっている。
リクリエーションとしてのクライミングエリアを有する公有地での管理プランの準備。国や地方職員に対し管理策の制定をサポートする。クライマー側の代表として、環境に与える悪影響を極力排除しながら、クライマーの利益の可能性を探る。また土地の管理者と協力して、トレイルの管理(開拓)、駐車場の確保、ゴミ箱・トイレの設置、看板の設置などを行なう。
原野の保護と野生動物の生息地確保は、今後最も課題になると思われる。そのために多くの環境保護団体と協力体制を取っている。(野生保護、森林保護団体、国立公園事務局、シェラクラブなど)問題となりやすいのは、支点問題、野生動物の保護、環境破壊など。
協力体制を取るアウトドアメーカーは75以上にのぼり、エリアの開放と環境保全に力を貸している。(寄付金やギアの提供、自己責任に基づいた行動の呼びかけ、自然保護政策の支援など)
200以上のクライミングジム及び販売店のスポンサードにより、年間500を越えるクライミング関連のイベントを行なう。
著名なクライマーと協力し、イベントやスライドショーなどを催し基金をつのるとともに、組織の基盤固めを行なう。(Royal Robbins, Conrad Anker, Lynn Hill, Greg Child, Randy Leavittなど)

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