---えどめぇるまがじん・コラム---

     読売         

江戸前な言葉たち
 
 

その3 しゃらくさい

<文:青木逸平>

            
 「しゃらくせえことをぬかすな、かかってきヤアがれ」と、喧嘩が始まるわけです。
 「しゃらくさい」は、しゃれたまねをする(当人には不相応な)・生意気な・こしゃくな、といったところ。
 ちなみに江戸っ子言葉の特徴はアイの音がエーに変わることで、「大根」はデーコン、「…しない」は…シネー。したがって、シャラクセー。
 江戸っ子気質といえば、偉ぶったのが大嫌い、分をわきまえぬ「ええかっこしい」も馬鹿にされました。そこでしばしば使われる言葉が「しゃらくさい」という次第。
 この言葉、江戸もかなり早い時期から登場します。語源については、「洒落(しゃれ)くさい」というのが一番素直ですが、シャラは遊女のことで素人娘がその真似をすることから、社楽斎という男が仙薬を飲んで屋根から飛んだが真っ逆様に墜落したことから、やぼな客が遊里で伽羅(きゃら)の香のにおいをぷんぷんさせるキャラクサイから……、と諸説紛々。
 本当はいまどき大変使いやすい言葉だと思います。まわりを見回せば、わけしり顔に身勝手な言説を吐く男、ハイブラウ・キャリアでございます女、こじゃれたカップル、小生意気な娘がうじゃうじゃ……。
 「しゃらくさい!!」と、誰か一喝してくれませんかね。
 
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