---えどめぇるまがじん・コラム--- 

     読売         

江戸前な言葉たち
 
 

その1 べらぼう

<文:青木逸平>

            
 「べらぼうめ」を訛って「べらんめい」、これは江戸っ子言葉の代名詞にまでなっています。
 「べらぼうめ、このスットコドッコイ」という啖呵は、下町九尺二間の裏店(うらだな)住まいの魚屋や職人衆の専売特許。近頃はめっきり聞かなくなりましたが、「べらぼうに高い」「それは、べらぼうな値段だ」など、「非常に」の意味で、副詞・形容動詞的には生き残っています。目端のきく今どきの女子高生が見つけ出し、「っていうかァ、べらウマ」と、「超(チョー)」の代わりに使いそうな気もします。
 「べらぼう」は要するに、バカ、まぬけ、阿呆、ナマケモノのこと。「箆棒」と書いて、幸田露伴や夏目漱石もしきりに使っていますが、これは宛字です(一説には「穀潰し」の意味だとか)。登場は18世紀半ば、江戸も後期と遅く、平賀源内、式亭三馬のあたりから。もとは元禄時代の大坂の見世物「ベラボウ(便乱坊)」に由来するというのが定説となっています(これが、どんな見世物だったのかは不明)。省略好きの江戸っ子は、「おおべら(大べらぼう)」「こんべらばア!(このべらぼうは!)」と、けっこう滅茶苦茶な使いようもしていました。
 現代でも「べらぼうめ」と単独で使ってみたいところですが、シチュエーションと度胸がいります。せいぜい「こいつはべらぼうだ」と独白風か、「世界二大べらぼう対決〜ブッシュvs金正日〜」と週刊誌の広告風なところでしょうか。

一人角力(すもう)  

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