杉の種/桜井市倉橋
Seeds of cedar / Kurahashi in Sakurai City

多武峯を桜井市に向って北に下ると、倉橋川の流れがやや緩やかになったところが倉橋だ。紅葉の時期は桜井と談山神社の間を往復する人と車があふれる。近くに崇峻天皇陵「倉梯岡陵」があり、少し下ると十一面観音で有名な聖林寺が見える。この杉の実は崇峻天皇陵のすぐ傍のお堂の壁際に干してあった。
顔を近づけると、秋の西日をいっぱいに受けて懐かしい香りがした。桜井市商工会の太田さんにうかがったところ、毎年10月から11月頃にこうやってしばらく干した後で苗に育てるのだそうだ。倉橋周辺の杉の育苗は以前はかなり盛んだったとのこと。

倉橋を詠んだ歌は3つある。旋頭歌だ。
「橋立の倉橋山に立てる白雲見まく欲りわがするなへに立てる白雲」
「橋立の倉椅川の石走はも壮子時(おざかり)にわが渡りてし石走はも」
「橋立の倉椅川の河のしづ菅わが刈りて笠にも編まず川のしづ菅」
(万葉集巻七 1282-1284)         次へ