聖林寺
Shorin-ji Temple

明日香の南の多武峯から国道を下り、崇峻天皇陵を過ぎると左の山裾に聖林寺が見える。国道から少し登った石垣の上の小さな寺だ。和辻哲郎や亀井勝一郎さんが絶賛した十一面観音は故あってこの寺におられる。この寺のご本尊は子安延命地蔵で、元禄時代の作というから、まだ新しい。十一面観音は別棟の観音堂に佇んでいる。
白洲正子さんはこう書いている。
「さしこんで来るほのかな光の中に、浮び出た観音の姿を私は忘れることができない。それは今この世に生まれ出たという感じに、ゆらめきながら現れたのであった。(略)世の中にこんな美しいものがあるのかと、私はただ茫然とみとれていた。」(「十一面観音巡礼」新潮社)      次へ