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上級レベルの写真表現への道筋

写真表現が上手になると、上級レベルの表現を目指す

 写真表現が上手になるほど、より魅力的な写真を撮りたくなるのが自然な流れです。では、どうしたら、より魅力的な写真が撮れるようになるのでしょうか。その前に、より魅力的な写真とは、どんな写真なのでしょうか。こういった疑問が次々に浮かんでくると思います。

 こうした迷いや思いですが、写真表現の視点でいうと、上級レベルに相当します。結論を先に言ってしまうなら、正解はありません。このレベルになると、どの写真が良いかどうかは明確に判定できないのです。自分が本当に表現したいものを、他人の意見など無視して、作り上げるだけです。

 こう断言してしまうと、話が前に進みません。そこで、自分なりの写真表現が可能になるまでの道筋を、独自の視点で整理してみました。あえて整理してみた、という感じです。その内容を解説しましょう。

上級写真表現への道筋は、大きく2段階に分けられる

 凄く才能のある人を別にすると、自分独自の写真表現を身に付けるためには、次のような流れで進むと思います(あくまで、私が分析した結果ですが)。

・写真表現の腕を磨く
  ・汎用的な表現を身に付ける
  ・組写真を作れるようになる
  ・クセのある写真を作れるようになる
・自分なりの写真を見付けて作る
  ・自分にとって「写真とは何か」を考える
  ・自分が本当に表現したい写真を見付ける
  ・表現したい写真の作り方を求める
  ・表現したい作品を作り続け、必要に応じて改良する

 ここでは、流れを大きく2つに分けてあります。最初の段階が、写真表現の腕を磨く段階です。この能力的な基礎を用い、続く段階で、自分なりの写真を見付けるわけです。見付かったら、それに沿って作り続けながら、写真表現の方向性、作り方などを改良していきます。この段階に、終わりはありません。

 これだけだと簡単すぎるので、もう少し詳しく説明しましょう。

写真表現の腕を磨く3段階では、別々の能力を習得

 写真表現の腕を磨く過程は、3つの段階に分かれます。どの段階も、身に付けるべき能力と大きく関係しています。それぞれの能力を簡単に表現すると、次のようになります。

・汎用的な表現:狙った意図が伝えられる単写真を写す能力
・組写真の表現:狙った意図が伝えられる組写真を作る能力
・クセあり表現:表現の独自性を生み出すための基本的な能力

 まず最初は、単写真を写す能力です。単に魅力的な写真ではなく、狙った意図が伝わる写真として撮れることが大切です。続けて、組写真を(写すではなく)作る能力を身に付けます。より難しい表現意図を設定し、それが伝わる組写真を作れるようにします。

 最後が、クセのある写真を作る能力です。クセのある写真というと、何かの才能で生み出すものだと思っている人が多いでしょう。しかし、そうではありません。ある程度までは、表現技術を学ぶことで可能となります。

 こうして3つの能力を段階的に習得すれば、上級レベルの写真表現に必要な能力に関して、準備が整ったことになります。

自分なりの写真を見付ける段階では、写真とは何かを考察

 能力的な面で準備が整ったら、自分なりの写真を見付ける段階に移ります。この段階を決まった流れとしてまとめるのは難しいのですが、あえて整理すると次のとおりです。

・自分にとって「写真とは何か」を考える
  (問いの例1:何のために写真を撮るのか)
  (問いの例2:自分の人生と写真の関係は何か)
  (問いの例3:写真表現の何が楽しいのか)
  (問いの例4:本音では、どんな写真が好きなのか)
  (問いの例5:写真を通して何を伝えたいのか)
  (問いの例6:写真表現で何を実現したいのか)
・自分が本当に表現したい写真を見付ける
  (上記の問いへの回答を参考にしながら、深く考えて)
・表現したい写真の作り方を求める
  (単写真、組写真、クセのある写真の作り方を組み合わせて)
・表現したい作品を作り続け、必要に応じて改良する
  (問いの例1:この作品で、本当に満足なのか)
  (問いの例2:どんな部分が不満足なのか)
  (問いの例3:改善するには、どこをどう直せばよいのか)
  (自分にとって写真とは何かを、常に考え続ける)

 もっとも大切なのは「自分にとって写真とは何か」を明らかにすることです。別な表現を使うなら「写真を用いて、本当は何を表現したいのか」となります。これが明確にならないと、自分なりの写真なんて求められません。

 こういった問いを長く考え続けると、自分が本当に表現したいことが少しずつ見えてきます。もちろん、最初はほんの少しだけでしょう。それでも、何もないよりは格段にマシです。考えた結果から、本当に作りたい写真を仮決めします。それが可能になる作り方を求め、作品を作り続けます。

 後は、必要に応じて、写真表現の方向性や作り方などを修正するだけです。最初の問いにある「自分にとって写真とは何か」は、作品を作りながら永遠に考え続けます。その結果、方向性が途中で大きく変わることもあるでしょう。それは何かに気付いた証拠ですから、自分の気持ちへ正直に従って作り続けます。

目指す写真が、一般ウケしないこともあり得る

 写真表現の上級レベルでは、「自分にとって写真とは何か」を考えることが一番大切だと述べました。この段階まで来ると、写真表現の経験が長くなっているはずです。すると、一般の人が魅力的だと思う写真に、魅力を感じなくなっている可能性もあります(あくまで可能性で、全員がそうなるわけではありません)。

 これに該当する人が目指す作品は、一般の人(写真を趣味にしていない人)が良いと思わない可能性が高くなります。ちょっと変な作品だったり、かなり変な作品だったりするわけです。ハッキリ言うなら、一般ウケしない作品です。

 写真が趣味だというと「作品を見せてください」と言われます。その際に変な作品を見せると、表向きは「個性的な作品ですね」などと言われても、内心では「なんか変な作品」と思われます。最悪の場合には、写真が下手な人と思われてしまいます。

 そう思われたくないなら、次のような方法を採用するとよいでしょう。まず最初に、一般ウケする写真を見せます。この目的には、美しかったり迫力のある単写真が最適です。続けて、悪い印象の単写真を見せます。怖い写真、汚い写真などが最適で、「こういう写真も意図して撮れる」ことも一緒に説明します。最後に、自分の作品を解説しながら見せるわけです。この方法なら、単純に変な作品と思われないだけでなく、写真の腕が下手だと思われないでしょう。

 私の本音としては、一般ウケしなくても、気にする必要はないと思います。自分が本当に表現したい作品である限り、他人にどうこう言われることなど関係ないですから。

(作成:2003年9月13日)
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