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E-1のノイズフィルタの効果

E-1本体と純正RAW現像でのノイズ低減機能を試す

 E-1には、ノイズフィルタという機能が付いています。画像のノイズを低減する機能で、JPEG画像に適用します。記録メディアへの読み書きが多く発生するため、デフォルトではオフしてあるのでしょう。また、E-1に付属するOLYMPUS Viewerにも、RAW現像のオプションとして同様の機能が付いています。これらのノイズ低減の効果がどれほどのものか、同じ条件でテストしてみました。

 E-1のJPEGの最高画質であるSHQと、OLYMPUS ViewerによるRAW現像で、それぞれノイズフィルタをオンオフした各2枚のJPEG画像を作ります。合計すると、以下の4枚の画像が得られます。

・E-1のSHQ(ノイズフィルタをオフ)
・E-1のSHQ(ノイズフィルタをオン)
・OLYMPUS ViewerのRAW現像(ノイズフィルタをオフ)
・OLYMPUS ViewerのRAW現像(ノイズフィルタをオン)

 この4枚で、ノイズフィルタの効果を調べます。4枚の画像を得るための撮影は、2ショットで済みます。SHQ+RAWで1ショット、ノイズフィルタをオンしたSHQで1ショットです。結果として、ノイズフィルタがオフのSHQ画像だけ、別なショットとなります。

 ノイズの量はISO感度で変わるため、撮影可能なISO感度の全範囲で、4枚ずつのJPEG画像を作りました。これを比べると、感度ごとのノイズの出方とノイズ低減の程度が調べられます。

 用いた機材を、バージョンまで含めて明らかにしておきます。E-1本体は、ファームウェアが現時点で最新の1.1です。RAW現像に使うOLYMPUS Viewerも、現時点で最新となる1.1のMac OS X版を用いました。レンズは50mmマクロ、3段絞り込んだF5.6で撮影し、三脚も用いました。フォーカスはマニュアル、露出は絞り優先で補正なしです。撮影時の天気が小雨だったため、降り落ちる雨粒が少し写っています。今回の目的には影響がないので、そのまま用いました。

E-1とOLYMPUS Viewerで異なるノイズ低減効果

 ノイズが目立つのは、明るい部分よりも暗い部分です。あまり暗すぎると逆に目立たなくなるので、そこそこ暗い部分を見るのが一番良いでしょう。そこで、該当する箇所を、各画像で同じように切り取ってみました。ピクセル等倍で整理すると、以下のようになります(NFはノイズフィルタの略)。

ISO
SHQ(NFなし)
SHQ(NFあり)
RAW(NFなし)
RAW(NFあり)
100
200
400
800
1600
3200

 見て分かるように、同じ感度の4つの画像でも、予想に反して違っています。ノイズ低減効果の特徴も、E-1ボディとOLYMPUS Viewerでは異なりました。続いて、これらの画像を細かく分析した結果を紹介します。

ノイズ低減効果はOLYMPUS Viewerの方が良い

 E-1ボディとOLYMPUS Viewerの両方で、得られた画像を見ながら、ノイズフィルタのノイズ低減効果を比べてみましょう。

 E-1ボディの方は、全体的にぼかした感じでノイズを取り去っているようです。それでも、明暗差の大きい箇所にはノイズ低減機能をあまり効かせてないみたいで、ピントの合った箇所はぼかした感じになっていません。

 感度による効果の違いは、あまり見られません。被写体でもノイズでも、同じようにぼけます。ノイズが大きくなると、ぼかしによるノイズ低減効果が効かなくなり、ノイズが単にぼけただけに見えます。

 OLYMPUS Viewerの方は、もっと賢い方法でノイズを取り去っています。大まかな傾向としては、明暗差がある程度以下ならノイズとして取り除き、明暗差が大きい箇所は軽くぼかしているようです。その結果、明暗差の低い箇所はのっぺりとなり、明暗差が大きな箇所だけ削らずに残った感じとして仕上がります。おかげで、ノイズを効果的に取り除きながら、明暗差の大きな箇所がぼけずに済んでいます。明暗差が小さな箇所でのっぺりとなるのは仕方がないでしょう。

 感度による効果の違いは、E-1ボディのノイズフィルタよりも大きく出ます。感度がISO 800以上になると、ノイズとして削る際のしきい値よりもノイズが大きくなるためか、ノイズを取り去れなくなります。ISO 1600以上では、ノイズフィルタが動作してない感じにさえ見えます(実際、ISO 3200では、ノイズフィルタをオンした画像が、SHQのノイズフィルタなし画像よりも、ノイズが目立って見えます)。もしノイズとして認識するときのしきい値をユーザーが変更できれば、もっと低減できるでしょう。ただし、しきい値を大きくすると、被写体のデータも一緒に削る副作用が現れますけど。

 ユーザーに変更させない場合でも、しきい値を感度ごとに上手に調整すれば、ISO 800以上でのノイズ低減効果を大きくできるはずです。この辺はメーカーの設計思想に関わるため、それを反映した結果が今の状態なのでしょう。

ノイズフィルタのおかげでISO 400まで使える

 今回のテストで、ノイズフィルタの効果を確認できました。一番の収穫は、ISO 400のRAW現像でノイズフィルタを効かせると、実用になる画像が得られたことです。これまで、自分としてはISO 200までが許容範囲でした。これからは、ISO 400も安心して使おうと思います。

 では、その上のISO 800はどうでしょうか。残念ながら、RAW現像でノイズフィルタを効かせた画像でも、許容範囲に入りませんでした(ただし、絶対にダメというわけではなく、少し我慢すれば使えるかな、というレベルです)。ノイズフィルタがあまり効いてないのが原因です。OLYMPUS Viewerのノイズフィルタに、効果の大きさが変更できる機能が加われば、許容範囲に入る可能性があります。もちろん、ノイズ低減を大きく効かせることで、細部の描写まで失うことになります。それでもノイズの少な方が、使える機会が多いのです。

 ISO 1600以上に関しても、ノイズフィルタの効果を変更できれば、もっと良い画質が得られます。たとえ、被写体の細部がぼんやりとなっても、ノイズさえ大きく低減できれば、もっと使える画像になるはずです。

 ISO 800でもそれ以上でも、ノイズフィルタのノイズ低減効果を調整する機能があればと思ってしまいます。OLYMPUS Viewerに追加してほしい機能の1つですね。オリンパスさん、ぜひお願いします。

解像感に関しても、以前と異なる結果が得られた

 ノイズフィルタを使わないときの解像感に関しても、以前に調べたのとは違った結果が得られました。以前のISO 100で比べた結果では、OLYMPUS ViewerよりもE-1のSHQの方が、解像感が少し高いとなっていました。ところが今回の例では、同じISO 100で、OLYMPUS Viewerの方が少し高い結果が得られました。

 そこで、いろいろな箇所を細かく比べてみました。すると、箇所によって優劣が異なるのです。結論としては「被写体の細かな違いで解像感の良し悪しは異なり、全体としては似たようなレベル」としました。より高い解像感を求めるなら、PhotoshopによるRAW現像を用いるのが一番でしょう。

 以上は、ISOが100や200での話です。800以上の高感度になると、明確な違いが現れます。E-1のSHQよりもOLYMPUS Viewerの方が、明らかに解像感が高くなってます。その影響が、ノイズフィルタを効かせたときにも現れ、ノイズもよりハッキリと残ります。つまり、ISO 800以上では、RAW現像の方で解像感の高い画質を得られます。

今回の教訓:やっぱり試してみるもの

 ノイズフィルタの存在は知っていましたが、撮影後に余計な読み書きが発生するため、使っていませんでした。また、OLYMPUS Viewerのノイズフィルタも、たいして期待してなかったので試していませんでした。

 ところが、今回のように細かくテストしてみると、期待した以上の結果が得られるではありませんか。今回のテストのおかげで、ISO 400が実用になると分かりました。RAW現像でノイズフィルタを使う条件付ですが、普段からSHQ+RAWで撮影しているため、何の問題もありません。本当に採用する写真だけ、後からRAW現像すれば良いだけですから。

 今回のテストを教訓として、今後も役立ちそうな機能があったら、積極的にテストしようと思います。やっぱり試してみることが大事ですね。ホントに。

 とにかく、ISO 400が実用になって良かったです。また、多少のノイズに目をつぶっても構わないなら、ISO 800も一部で何とか使えるでしょう。ともかく、感度の利用範囲が増え、とても嬉しいです。

(作成:2004年5月10日)
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