(Last update:09/08/05)
製作の動機:
現在、管理人の車(新型フィット)にはポータブルタイプのカーナビとドライブレコーダーを付けているのだが、以下のような問題があった。
(1) どちらもシガーコンセントから DC/DC コンバーターを介して電源を取るため、配線がごちゃごちゃして邪魔。シフトレバーにも近く、万が一コードが絡まったりすると思わぬ事故の可能性も。
(2) サイドミラーやパワーウインドウの閉め忘れのために数秒間だけ電源を入れた場合でもカーナビやドライブレコーダーが動作してうざい。特にドライブレコーダーは常時記録型なので、電源を入れるたびに不要な短い動画ファイルが作成されてしまう。
(2) に関しては致命的な実害は無いのだが、メモリーカードの寿命を縮めたり破損ファイルが書き込まれそうで精神衛生上あまり宜しくない。
そこで、2つの電源をまとめてコンパクト化するとともに、車の電源が入った後、しばらくしてから電気が供給されるよう遅延機能を設けた車載電源を製作することにした。
ただ遅延機能だけなら 8pin の PIC12F675 を使ってもポートがふんだんに余るので、ついでにバッテリーの電圧監視機能も付け、過放電近くになったら電源供給を停止することに。
仕様:
(1) シガーコンセントの 12V からカーナビ用 5V 1.5A、ドライブレコーダー用
6V 0.3A を供給可能
(2) 車のメインスイッチが入って数秒後に電源供給開始。遅延時間は10秒ぐらいを中心に調整可能とする
(3) スイッチによるマニュアル操作でも通電の ON/OFF が可能
(4) 車のバッテリ電圧を 2色 LED で簡易表示。赤は過放電、橙は過放電が近い、緑は正常電圧とする
(5) 万が一、バッテリ電圧が一定時間(2.5秒)以上連続して過放電電圧近くまで降下した場合は電源供給を停止。再度電源を入れ直すか、バッテリ電圧が十分に回復してからスイッチを押さない限り電源は供給しない
回路説明、設計時の考慮点等:
今回の最大の問題は実装スペース。スペースに余裕があれば 6V と 5V 別々に降圧回路を用意すれば済む話だが、残念ながら今回は実装スペースが
W=45mm, H=37mm, D=110mm と極めて限られている。
そこで今回は、DC/DC コンバーターで 12V を 6V に降圧し、5V は 6V から生成することにした。この場合、3端子レギュレーターでカーナビ
(5V 1.5A) の電源を供給するには、(1) 電圧差 1V 以内の低ドロップ品で 2A 出力対応の製品がない、(2)
熱損失 = 電圧差 1V x 1.5A = 1.5W となるため、それなりのヒートシンクスペースが必要、の点から厳しいので、別の方法を考える必要がある。
そこで今回はダイオードの順電圧降下を利用することにした。この方法では電流量によってダイオードの降下電圧が変動するため、カーナビのように消費電流が派手に変化する負荷に対しては電圧が安定しない(爆)のだが、ある程度の電圧変動はカーナビ側も想定範囲内、と勝手に決め付けることに(良い子は絶対にマネをしてはいけません!)。
今回使用する DC/DC コンバーター KIC-053 は、秋月で 300円と格安で、出力電圧調整可能という優れもの。データシートの参考回路図には
100KΩ の VR で出力電圧を調整するよう書いてあるが、車のような振動の多い環境では設定値がズレてしまう可能性が極めて高いので、今回は固定値の抵抗で電圧をしっかりと固定することに。実測の結果、4.7K/91K
の比で 5.95V が出力されることがわかった。
また遅延時間は VR からのアナログ値を 8bit A/D 変換で読み込んで設定する。0.1秒の時間待ち処理を
A/D 変換値で得た回数だけループすれば計算上は 0.1秒から 25秒まで設定可能となるが、あまりに短い遅延時間では意味が無いので、クリッピング処理を行って
5〜25秒まで設定できるようにする。
製作のポイント:
今回はとにかく実装スペースが限られている。写真で判る通り、DC/DC コンバーターと電解コンデンサにスペースの
2/3 を取られてしまう @o@ ので、部品レイアウトは事前に十分検討し、ところどころにチップ部品を使いつつ何とか収めた。
なお、今回は放熱上の観点からケースの上蓋は付けないことにした。写真の通り、どのみち
DIN BOX 内に実装してしまえば見えないし、動作確認用の LED の光が漏れ出すのでかえって好都合である。
使用感:
配線がすっきりしたのはもちろん、遅延機能のおかげでカーナビやドライブレコーダーの不要動作もなくなって快適になった
^^v。遅延時間は、管理人の使用環境では10秒もあれば十分であった。
さて気になっていたカーナビへの供給電圧だが、カーナビを作動させながら出力電圧を測ったところ、カーナビの処理の重さに応じて
4.8V〜5.2V で変動。長期的にはカーナビの寿命を縮める可能性もあるが、壊れる頃にはもっと良いカーナビが出ているであろうと腹をくくって(殴)、このまま様子を見ることにする。
なお、部品からの発熱だが、DC/DC コンバーターは十分触れる程度にしか発熱しない。MAX
3A 対応品を 2A 弱で使っているから、まぁこんなものか。またダイオード群からの発熱も特に問題なし。車内が高温になる夏場の動作検証が今後の課題といったところか。
改良案など:
実装(放熱)スペースさえ確保できれば、以下の点を改良するとより便利になりそうである。
・5V と 6V は独立して降圧・安定化する
・カーナビとドライブレコーダーは別制御とする(時間差を設けて通電とか)
・カーナビ用とドライブレコーダー用のスイッチを別個に用意する
・LCD 付きにしてステータスやバッテリ電圧を表示する
・電圧監視 IC を使って PIC をより確実にリセット
今回の失敗:
ソフトウエア編:
ADCON0 レジスタの A/D コンバーター電源ビットを設定し忘れ、うまく A/D
変換ができずに数時間悩む(爆)。レジスタの初期化は初心に返った気持ちでコーディングするべし。
ハードウエア編:
電圧降下用ダイオードは、当初カタログ値を基に HRF503A x 3 (1.5A時 Vf=0.33V)
にしていたのだが、予想以上に軽負荷時の電圧降下が不十分 (5.5V) だったためさらにダイオード
SB560 (1.5A時 Vf=0.37V) を追加することに。これでようやく軽負荷時でも 5.2V
程度まで電圧を下げることができた。
プログラム:
改変自由。商用利用は厳禁。
プログラム v1.2 (2009/06/09) |
Car_Power_v12.zip |
2009/06/16、2009/06/22 追記:
使用しているうち、カーナビ起動後、しばらく時間を空けてからドライブレコーダーを起動した方が便利なことが判明。実はドライブレコーダーが結構なノイズ源で、最初にカーナビだけ起動して
GPS 衛星をしっかり捕捉させた後にドライブレコーダーを起動させる方が実用的、というわけ。
そこで早速回路変更 & プログラム変更してみた。変更点は、
・遅延時間設定に使用していた AN2 ポートをカーナビ電源制御にあてる (v2.0〜)
・遅延時間は固定とし、起動→10秒→カーナビON→15秒→ドライブレコーダーON
とする (v2.0〜)
・バッテリ電圧の色閾値を若干変更 (v2.0〜)
・ドライブレコーダーだけ殺せるようにする (v2.1〜)。(駐車時にカーナビでオーディオやワンセグを楽しむ際にドライブレコーダーは不要なので)
以上、v2.1 での動作をまとめると、
エンジン始動 → 10秒待つ(スイッチ操作でスキップ可能) → カーナビ ON
→ 15秒待つ(スイッチ操作でスキップ可能) → ドライブレコーダー ON → スイッチ操作待ち
→ スイッチが押されたらドライブレコーダー OFF → スイッチ操作待ち → スイッチが押されたらカーナビ
OFF → スイッチ操作待ち → スイッチが押されたら始動時処理に戻る
となる。
こんな仕様変更もプログラム修正で済んでしまうのだから、改めてマイコンの便利さを実感。アナログで組んでいたらこうも簡単には仕様変更ができなかったであろう。
なお、カーナビ制御 FET のプルアップ抵抗が 47K になっているが、これは実装スペースと手持ち部品の都合上で、本来は
1M で十分。またドライブレコーダー制御 FET のゲートに入っている 51Ωはジャンパ線代わりに使っているだけなので、デジトラのコレクタと直結しても問題無い。
プログラム:
改変自由。商用利用は厳禁。
プログラム v2.1 (2009/06/22) |
Car_Power_v21.zip |
2009/08/05 追記:
その後、車載改造したプラズマクラスターイオン発生器
SHARP IG-B20 の電源もここのカーナビ用出力から供給することに。遅延機能があるので便利便利
(^^)