リコちゃんとちいさいさかな
         

          



 リコちゃんはパパやママといっしょに、うみにきました。
 おひさまがギラギラてりつけて、すなはまはあつくなっり、はだしではあるけないほどです。
 たくさんのひとが、おおきいパラソルをひろげて、やすんでいます。
「さあ、およごう」
 パパとママにつづいて、リコちゃんも、うみにはいろうとしました。
ザザザザ……ザザザザ……なみがよせてきて、リコちゃんのあしをぬらします。
「あしがぬれた」
 リコちゃんは、はまのうえに、にげだしました。
「うみのなかにはいらないと、およげないよ」
 パパがリコちゃんをだいて、うみのなかに、おろしました。
「つめたいよう。こわいよう」
 リコちゃんは、パパのからだに、よじのぼろうとします。
「さあ、かおをみずにつけてごらん。そしたら、すぐにおよげるようになるんだよ」
「いやだ。かおがぬれるもん」
 リコちゃんは、はまのうえにひとりでにげだしました。
 リコちゃんはしばらく、みんながおよいでいるのをみていましたが、たいくつなので、みさきのほうへ、いってみました。
 みさきはいわばかりです。いわのうえをあるいていくと、カニさんがいました。
「リコちゃん。ちょっときてください」
 カニさんがいいました。
「どうしたの?」
 リコちゃんがついていくと、いわのくぼみに、ちいさいみずたまりができていて、そこに、ちっちゃいおさかなが、およいでいました。
「ともだちのおさかなが、うみのみずがひいたとき、うっかりとりのこされてしまったのです。たすけてください。このままでは、みずがあつくなって、しんでしまいます」
 カニさんが、リコちゃんに、たのみました。
 リコちゃんが、みずのなかにてをいれてみると、おひさまのねつで、もう、みずはぬるくなっていました。
 リコちゃんは、ぼうしをぬいで、おさかなをそのなかにいれると、そっとうみのなかに、はなしてやりました。
 リコちゃんが、パパとママのところに、かえってくると、
「リコ、はやくいらっしゃい」
 こんどは、ママが、リコちゃんをうみのなかに、つれていきました。
「さあ、ままがてをもってあげるから、あしでバチャバチャやってごらん」
「いやだ。かおにみずがかかるもん」
「やってみなくては、およげるようにならないわよ」
 ママはちょっとこわいかおで、いいました。
「さあ、あしで、バチャバチャするのよ」
 ママがひっぱったので、リコちゃんのかおに、みずがかかりました。
「あーん。かおがぬれたよう」
 リコちゃんはなきそうになりました。
「じゃあ、あさいところで、ひとりでれんしゅうしていらっしゃい」
 ママはあきれて、リコちゃんにそういうと、パパのほうへ、およいでいきました。
 リコちゃんは、あさいところで、かいがらをさがすことにしました。
「きれいなさくらがいがないかなあ」
 リコちゃんが、あしもとのみずのなかをさがしていると、
「リコちゃん、リコちゃん」
 だれかがよびました。
「だあれ。わたしをよんだのは」
 すると、めのまえのみずのなかから、ちっちゃいおさかなが、かおをだしました。
「あっ、さっきのおさかなさん」
「さっきはありがとう。リコちゃん、あのね、みみをそっとみずにつけてごらん。いいものがきこえるよ」
「えっ、みみを?」
「そうだよ。こわくないから」
 リコちゃんは、こわごわ、かたほうのみみをみずにつけてみました。
 みずがチャプチャプとなりました。
ザザザザ……ザザザザ……
とおくのなみのおと、ちかくのなみのおとが、いりまじってきこえます。
「わあ、すてきだなあ」
「こんどは、みずのなかをのぞいてごらん」
 ちっちゃいおさかなが、いいました。
「そう、こわがらないで、もっとちかずけて、もっと、もっと」
いつのまにか、リコちゃんは、かおをみずにつけて、めをあけていました。
 リコちゃんはみました。
 あおいみずのなかに、たいようのひかりがさしこみ、たくさんのさかなが、みどりのかいそうのあいだを、およいでいるのを。
「すごいなあ」
 びっくりしているリコちゃんに、ちっちゃなおさかなが、いいました。
「さあ、こっちへいらっしゃい。もっといいものがみえるよ」
 ちっちゃなおさかなを、おいかけようとしたリコちゃんのあしが、みずのそこをはなれました。
 そして、ふわりとからだがういて、まえにすすみました。

「リコちゃん、いつのまに、およげるようになったんだい」
「リコちゃん、もう、みずがこわくないの?」
 パパとママの、びっくりしたこえがしました。
「うん、もう、リコ、おみずがこわくないの。ぬれてもへいきよ」
 リコちゃんはそういって、ひとりで、バチャバチャみずをけって、およいでみせました。


       もくじ     ホーム