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緋月光





広い漆黒の空に、無数の星が静かに瞬いている。
宝石のような白銀のそれと共に、そこには赤と青の二つの月が浮かんでいる。
それはかつてガイアとテラの融合が失敗したということの証。
だが、それもいまではただの美しい天体の一つでしかない。
一度は危機にさらされたこの星が、今こうして何事もなかったかのように存在しているのはどうしてか。
それは誰も知ることがない事実であり、もう誰にも知るすべはない。それ以前に、その理由を問う者さえ今となってはほとんど存在しないのだが。
青と赤。
2色の光はガイアとテラ、それぞれのクリスタルの輝きの象徴。
アレクサンドリア城にそびえ立つ巨大な剣に、二つの月光がきらめいて、その光景はまるで幻だった。
そのテラスで、赤い光の元に生を受けた青年が月を見上げていた。
月が美しいなんて思ったわけではない。むしろ見ていて胸が焼けるような思いをするだけだ。
だが、今の彼は、背負ってしまったあの月に纏わる自身の数奇な運命を、素直に受け止めていた。
自分が造られたものだということも。自分がこの星に遣わされた理由も。
その事実も、もう意味を持つものではなくなっているのだが。
彼は空に向けていた濁りのない笑顔を隣に向けた。彼の持つ長い尾は、その感情を隠すことなく嬉しそうに揺れている。
本日1月15日。
ガーネット・ティル・アレクサンドロス17世の誕生日。
そして、彼女の大事な人が2年以上の行方不明の後、無事に生還した日でもある。
1月にしては少し暖かいそよ風が、さわやかに髪を擦り抜けてゆく。
さっきまで青年と同じように夜空に目を向けていた18歳になったばかりの女王は、青年の動きに反応してゆっくりと首を彼のほうに回した。
ずっと、ずっと待っていた人。
自分を誘拐してくれ、と頼んだのに途中でそれを放棄してしまった人。
彼の笑顔は、最後にあったときのそれとほとんど変わっていなかった。
「オレたちの劇、どうだった?」
後ろではレースのカーテンがゆったりと風をはらんでふくらんでいる。
カーテンを隔てた部屋の中ではたぶん、酒の入った仲間たちが大いに盛り上がっているだろう。
クイナが主催した『ダガーのBirthday&ジタンの帰還祝い』パーティー。
主役である二人だが、パーティーも終盤になって仲間たちも酔いの回った今は、彼らが部屋を抜け出したことなど、誰も気にはかけないだろう。
城下町はもうすっかり眠りについている。
普段は寂しく感じるかもしれない灯の消えた漆黒の景色も、今は静かでよかった。
「えぇ、素敵だったわ」
言葉とは裏腹に、ダガーはわざとどうでもよさそうな顔をした。
かといって、本当はジタンたちの劇がどうでもよかったわけではない。劇についての感想は言葉どうりにとってもらってもかまわなかった。
それを素直に表現できないのも、相手がジタンだったから、ということ。
「お気に召していただけて光栄です」
そのことがわかっているのだろう。
ジタンはこれまでにも増して嬉しそうににぃぃっと笑った。
唇の間から白い綺麗な八重歯がのぞく。
それを見たダガーは、癖で拗ねたように口を尖らせて再び空に目を向けた。
こんな甘え方もあるのだと言うことは口にしなくてもお互いにわかっている。
自然に始まった沈黙も、今は心地よかったので、ジタンは口を開くことをせずただ静かな城下を見下ろした。
聞こえてくるのは遠い仲間たちの喧騒と、中庭の木々の、揺れる音。
さわさわと、いかにも穏やかな風をおもわすその音に、身を委ねてしまいたくなるような静けさに彼はしばらく聞き惚れた。
ふとした瞬間に始まった沈黙に、先に身じろぎをしたのはダガーだった。
彼女はそっと城下を見やるジタンの横顔を改めて見た。
綺麗な、横顔だった。
彼の顔にかかった美しい透けるような金髪が、風に流れ、彫りの深い顔があらわになる。二年半前、最後にあったときもそれはずっとずっと精悍さを増していて、思わずどきりとしてしまう。
「背、高くなったのね」
その横顔にダガーは言った。
確かに前から彼女よりは背の高かったジタンだが、今は前よりもますます身長が伸びて、もう、見上げるようにしないとその顔を見ることができない。
そのことがなんとなく、自分と彼との距離が広がってしまったことのように思えて、彼女は淋しくなった。
「そう?」
いわれたジタンはダガーに目をやって、
ほんとだ。
自分にしか聞こえないくらいの声で呟いた。
よく見てみると、ダガーが前より小さくなった気がしたのだ。だがそれは、ダガーが小さくなったのではなく、自分の背が伸びたということ。
誰かの笑い声が聞こえてくる。
たぶん、あどけないその声は、エーコだろう。
微笑ましいその声に心を和ませたジタンは彼女の方に手を伸ばす。
「ダガーも、髪のびたね」
彼は久しぶりに触れた彼女の黒髪を撫でた。
大きな決心とともに自ら切り落としたその髪も、今では元通り。
こんなに時間がたったのだから、と理屈ではわかっていたのだが、再会して思わず驚いてしまった。初めてあったときと、それはあまりにも似ていて、あの頃を思い出してしまわずにはいられなかった。
違うのは二人の関係がもうただの盗賊と王女様ではないということ。
「それに、すっかり女王様らしくなった」
本当は女王らしくなったと思ったわけではない。女王、なんて言うよりも大人らしく女性らしく、美しくなった、そういうべき。
だが、そんなことは照れくさすぎて言うことができなかった。
うまく表現できないもどかしさに自嘲するような顔をしたジタンに向けて、
「、、、、、そうよ、当たり前じゃない、、、、、、、」
急に消えてしまいそうなかすれた弱々しい声が言った。
「、、、、、2年半もたったのよ?、、、、、、、変わるのは、当たり前だわ、、、、、、、」
驚いたジタンが、え?と、ダガーの顔をのぞき込もうとすると、彼女は慌てたように顔を逸らした。
夜風が、さわさわと漆黒の長い髪をなぶる。
「、、、、、、、すごく、待ったんだから、、、、、、」
「・・・・・・・・・」
責めるような口調で言いたいのに、言葉は喉に引っかかって情けなくしかでてこない。うっかりすれば、涙声になってしまう。
ダガーは眉をひそめて唇をかんだ。
泣いているってことが、すぐにばれてしまうような声。
どうにか平静を装おうとするのだが、それもかなわず。
「どれくらい待ったかわかんなくなっちゃうくらい、待ったんだから」
震える声が、闇に吸い込まれる。
震えているのは声だけではなく、彼女の華奢な肩でもあった。
ジタンは、こんなに泣きながらもなお、泣いていることを悟られまいと必死になっている彼女の健気さがいじらしくなって、
ごめんな、
そういう代わりに、いきなりダガーを抱きしめた。
女王の、裾の広がったゆったりとしたドレスがふんわりと揺れる。
女王という肩書きも、彼女のまとった最上級の絹の着物も、ダガーの本当の心を覆いきることはできぬ。
「ありがとう」
彼女にそんな様子は見せなかったが、ジタンは胸が詰まってそういうので精一杯だった。 
自分を待ってくれていた。その事実だけでも喉元が熱くなった。
伸びた身長と黒髪は、二人の離れていた時間を表していたのだ。
背が伸びたね、という一言は淋しかった、という言葉だととってもいい。
踊るように軽い風が吹いてくるたびに、肩をふるわす彼女から花の香りがしてくる。
それは女王という貴婦人の高貴さを漂わせる。
しかし、今の彼女を見て、誰が彼女を女王らしいというだろうか。
「もう、あなたは帰ってこない、あきらめよう、って思ったりもした」
ダガーの手がジタンの服をぎゅっとつかんだ。
ジタンよりずっと細く弱いのに、一つの国を支えるその腕がすがるように。
会うことのできなかった時を、触れ合うことのできなかった時間を取り返そうとするかのように。
「あなたのことなんて忘れてしまおうって思ったことだってあるのよ?」
ダガーは彼の胸に顔を押しつけたまま。
ジタンは彼女の言葉のいちいちに、うんうんと頷いていたが、やがて口を開いた。
「でも、やっぱりオレのことを信じてくれてたってわけだ」
「、、、、、、、、、、」
今にも頭上に降ってきそうな星空の下。
ダガーは何も答えなかった。
悔しい、と。
言葉にするならそんなところだろう。
どんなに非難しても、それが口先だけだ、なんてことはいかにもありふれている。
やれやれ、と自分の中だけで微笑むとジタンは彼女の頭をポンとした。
「だから、ほら。こうして帰ってきたじゃないか」
わかってるわ。
ダガーはそれでも顔を上げることができなかったのは、今の自分の顔は涙でひどくぐしゃぐしゃになっていそうだったからだ。泣き顔は、人に見せたくはない。
しかし、そんなことお構いなしに、彼はいつもの笑顔でダガーの顔をのぞき込んできた。
急いで顔を隠そうとするが、彼はダガーの泣き顔を気にする様子もなく笑っている。
ひどい人。
「遅すぎ。もっと早く帰ってきなさいよ」
たぶん。
本当は、本当に泣き顔を見せてもいいのはジタンだけなのだろう。
彼女は、綺麗な蒼い瞳を見ながらそう思わずにはいられなかった。
「んー、そか。遅すぎたか。ごめん」
ジタンは悪戯っぽく舌を出して謝ると、無造作にダガーの頬の涙を指で拭った。ダガーはあまりに軽く頬をこすられて、怒ったように顔を上げる。だが、その顔も優しい笑顔に見つめられて数秒とも持たなかった。
「ほんとはすぐにでも帰ってきたかったんだけど、無理だった」
いつも陽気そうな表に、時折覗かせる真剣な瞳。
ダガーはそんな彼の表情も、嫌いではない。
「どうして?」
黒い瞳をまっすぐにあげる彼女に、え、と唸ってジタンは目をぱちぱちとさせた。
いろいろあったんだよ。
困った。
言えない、とかそんなんじゃないが、説明するのは面倒だし、第一、話せば長すぎる話だ。
彼は考え込んでから、すぐに苦笑してそれを影の中に覆ってしまった。
「ダガーにお土産を探しててさ」
「なにそれ。嘘つき」
「嘘じゃないさ」
いっつもごまかしてばっかり。
ダガーはするりとジタンの腕から抜けだすと、腕組みをしてジタンを見た。
「それで?二年もかけて素敵なお土産は見つかったの?」
彼は待ってましたとばかりに笑い、右手を夜空にぱっと広げた。
なんだろう、とダガーが首を傾げる。
「あの月を、とって見せましょう」
夜空でもひときわ目立つ赤い月。
ジタンはかざした手でその月をつかみ取る仕草をして見せた。
そして、星の泉の中から赤い月を捕まえた右手を、まるで手品のような鮮やかな手つきでダガーの目の前に出して開いて見せた。
「えっ?」
まるで鳩が豆鉄砲でも食らったかのように、彼女は目を丸くした。さっきまでなにもなかったはずの彼の手に、今は小箱が乗っていたのだ。ピンクの柔らかな布地に包まれた手のひらサイズの箱。
彼女は空を見た。さっきと変わらず赤い月がそこにはあった。本当はそんなわけないのはわかるのだが、実際その小箱が月から取り出されたように見えて、驚いたようにピンクの箱と赤い月を交互に見るダガーに、ジタンは言った。
「誕生日おめでとう」
夜風がやんだ。その瞬間だけ木のざわめきも止まり、それらはまるでダガーの反応を待っているかのように。
「あ、ありがとう」
彼女はまだ呆然としたまま小箱を受け取った。そして桃の花でも張り付けたような混じりのない薄紅色のそれををまじまじと見つめる。
誕生日プレゼント。
「開けてみ」
蒼い目が興味ありげに揺れて、彼女は彼のそんな表情に押されて小箱を開けた。
月光を浴びて箱の中身がきらりと光る。その一瞬はまるで夜空の星を一つ、手に取ったようだった。だが、それは夜空の星ではなく。
指輪。
美しく磨かれた白金のリング。中心には光を集めるようなカットを施した緋色の宝石。その周りに星をちりばめたようにひとまわり小さな白く透き通った宝石があしらってあった。
「ガーネット、、、、?」
「ご名答」
ダガーはリングの中心の、自分の名と同じ緋色の宝石の名を呟いた。それはとても深い色をしていてまさに夜空のあの赤い月からとったかのよう。そして、よく見てみるとその周りの透明の宝石は貴重と言われるダイヤモンドだった。
だがダイヤモンドも、その美しい緋のまわりではその緋を引き立てる飾りでしかない。
「気に入った?」
嬉しそうに尋ねられた質問に、すっかり手の中の月の化身に魅入られてしまった彼女は頷いた。
潤んだ瞳が、陽炎のように揺れて、ジタンを見上げる。
優美な顔立ち。それ自身、ガーネットのような色をした唇。
驚いたような彼女が見せるその表情が妙に艶かしく見えて、彼は思わず手をダガーの頬に伸ばした。
広い大きな手が頬に届くと彼女の肩がびくりとする。
僅かに高潮した彼女の頬が熱い。
「でもオレならこっちの宝石のほうがいいな」
彼は黒真珠の瞳を覗き込む。
今日は化粧をしているダガーだが、これはきょうが大勢の国民の前に出る日だからで。彼は化粧などしていない彼女も知っている。
化粧なんてしなくても充分綺麗な肌なのに。
ガーネットのスッピン。
それを見たことがある人間も、部屋で騒ぎまわる仲間達を除いてはそうはいない。
僅かな誇らしさに微笑むと、ジタンは彼女の頬を包んだ手の指先でその瞼に触れて、瞼を閉じさせる。
やんわりとしている様に見えてしっかりと頬を抑えられていて、ダガーは動けなかった。視界を絶たれてしまい何をする術もなく、ジタンの体を押しやって抜け出そうとするが、今度は彼もそうはさせない。
「 」
瞼の向こうの月光が遮られる。
闇、闇、闇。
時が止まってしまったかのような奇妙な感覚。
蒸気が出てしまいそうなほどに熱くなったダガーの額を、彼の前髪がくすぐる。
重ねられた唇。
心臓は跳ね上がり、体から飛び出してしまいそうに苦しい。
なのに、ジタンの唇が、吸いついたまま離れようとしてくれない。
無意識のうちに、握り締めた手は真っ白になってしまっている。
「、、、、、、っ」
息も出来ずダガーは苦しそうだったのだろう。ジタンが顔を離した。
反射的に頬に添えられていた彼の手を払いのけて、ダガーは感心するほど素早く彼から手の届かない距離まで離れた。
極力うつむいて顔を隠す。
たぶん、いや、絶対に、すごい顔をしている。顔ももちろん、耳まで、なんだ、というほどに真っ赤になっているに違いない。それはぐしゃぐしゃになった泣き顔以上に人に見られたくない。
そして、彼女はあまりの恥ずかしさにすっかり怒ることを忘れていた。
「そんなに逃げなくても」
白い綺麗な歯を覗かせた唇が笑いながら呟くように言うまでは。
「いきなりなにすんのっ?!」
「なにって  」
「誰かに見られたらどうするつもりよ!?」
「なんだ、人に見られたくないだけ?」
なにをいうのだ、とダガーが言い返そうと顔を上げると、いつの間に移動したのか彼は驚くくらいに近くにいた。
「それは、悪かったよ。それなら部屋に行って二人っきりになってからのがよかったな」
「ち、ちがっ  」
美しく整った顔がひどく崩れ、あげようとした非難の声が喉につまり彼女は咳き込んでいる。
彼女の新しい一面を、また一つ見ることが出来てよかった、と微笑むジタンは彼女の背中をさすってやった。
満点の星空の下。
こんな所でロマンチックな雰囲気が出ないほうがおかしいよな、普通。
まぁまぁ、と呟く彼の頭の中ではそんな考えしかめぐっていなかった。
「だいじょぶ?」
そして彼はようやく落ち着いたダガーの左手をとった。
「何よ?」
次は何事かと訝る彼女。
「せっかくなんだからさ」
彼は彼女の手に握られていた小箱を空けて中のリングを取り出した。月と呼応するかのように再び光りだしたそれを、彼女の鼻先に近づける。
ダガーはそれを見ていたためにより目状態になってしまっている。次の瞬間その指輪は、ひょい、と彼女の視界を離れた。
「指輪はつけるもんだし」
冷たい感触。
状況を理解するのは一瞬だったが、それが事実かどうか判断するのに少し時間がかかった。
お決まりのパターンなのだが、やはり少しは面食らう。
いきなりこんなことをするなんて言うのもありなのだろうか?
彼は顔も忘れてしまいそうなほどの長い間、姿をくらませていたと言うのに。
これがいつも歴然とした態度のフライヤやベアトリクスだったなら、厚かましい、と突き放していただろう。
左手の薬指と指輪。
「お、やっぱり似合う。」
言わずと知れた婚姻の約束。この男が知らないわけがない。
絶対にわざとだ。
「サイズもぴったし」
嬉しくないわけではない。むしろその逆。
だが、いいのだろうか、こんなことで。こんなに素敵で大切なことが、こんなにも軽々しくて・・・・、、、、、、、、、。
いいわけないじゃない+++
喜んでしまうのは癪だった。
だから、口を尖らせたダガーは、そのまま何も言わないでおいた。
「さてと。」
ジタンがにこっと笑う。
不機嫌そうな顔もつられて笑ってしまいそうなほどの明るい笑顔。
こっちの気も知らないで。
知らない?もしかすると本当は心の中を見透かしているのかもしれない?
「じゃあ、続きは後で部屋で」
聞き捨てならないことを言い残すと、ジタンはくるりと方向を変えて、騒がしい仲間達のいる部屋の中に向かった。
彼が背を向けたとたん、ダガーは左手の指輪を見る。
ずるい。
なんとなくそう思った。さっきのドキドキとは違う嬉しい心臓の鼓動を自覚しながら。
無造作に束ねられた尾っぽのような金髪がさらさらと揺れる。
その尾っぽが急にくるりと弧を描いた。
ダガーは慌てて左手を降ろし、指輪を眺めていた事実を隠そうとする。
彼がそのことに気づいたかは分からない。
ただ、愛敬のある笑顔で振り向いただけで。
「First Kiss、だったよね」
「っ☆」
カーテンが揺れて彼の長身がその向こうに消える。
ダガーは口元を抑えたまま、立ち尽くしてしまっていた。
「もぅ、、、、」
やがて、カーテンの向こうの賑わいにジタンの笑い声が混じるほどたってから、彼女はようやく手を下ろした。
彼と一緒に部屋を戻るのは、なんとなく注目を集めてしまいそうだったから。
「一生大切にしてやるから」
多少惜しくも思ったが、
ダガーは左手の薬指から指輪を外してそれを右手に付け替えた。目ざとい仲間達に気づかれて何か言われそうな気がしたのだ。
(ただ、ジタンは、左手にはめたはずの指輪が彼女の右手で光っていたことに、不満そうな顔をしていたが。)
女王の姿もカーテンの向こうに消える。

誰もいなくなったテラスからは、二つの月が見える。
燃えるような赤と、その熱情を受け止めるような静かな青。
双方の月は変わらず夜空でもう一つの月と並んで城を照らす。

再会の日に、赤い星のからやってきた青年から受け取った指輪を、青い星に生まれた女王はこの後外したことはなかったとか。

違う二つの星の衛星だったその月が、今はあんなにも調和を保って。

実際は失敗したと言われているが、本当はテラとガイアの融合は完成していたと言えるのかもしれない。

今夜の月は、若い女王にそんなことを思わせるものだった。

                              Fin.

なーんか、微妙。
いかが?
久しぶりに書いたもので。
スランプだったのよ、しばらく。でも書けたからOK!
もうすぐ]も発売だなー、PS2だし、みんなは買う〜?




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