163. 仙台の夜桜と大砂時計
トップページへ | 小さな旅の目次 |
2017年4月12日、岩手県遠野にある東北大学の地殻変動観測所を見学したあと、
仙台を訪ねた。仙台で市街地の気温分布を測るための下見である。
仙台に着いたのは夕方、街を歩くのは久しぶりである。中央通りのアーケード街、
東一番町、定禅寺通りを歩く間に暗くなった。西公園では、大勢の人たちが夜桜を
楽しんでいる。夜は少し寒い。屋台の並ぶ店先には机が並べられている。私は、
暖かいラーメンを食べて体を暖めた(写真①)。
写真① 西公園の夜の花見(2017年4月12日)。
写真② 花見の座敷席。
気温計を設置する場所を探すために歩いていると、大きなテント張りの中でも花見
の宴がある。「座敷席」の看板があり、寒さを防ぐのによいアイデアである(写真②)。
2泊3日の予定で下見が終わり、時間が余った。30年ほど前のこと、私が急性心筋
梗塞で心臓手術した翌年の1989年に七北田公園で開催された「花と緑の博覧会」
で大砂時計が展示された。この展示を発案した仙台市民の小野恒夫さんからの申し
出により、私は技術指導をして成功させた。その後の砂時計を知りたくなり、
4月14日に七北田公園を訪ねた(写真③)。
博覧会の当時、いくつかのパビリオンがつくられ、大砂時計館もあった。現在は
広い緑地のほかに体育館と都市緑化ホールがある。都市緑化ホールの事務所で
大砂時計のことを尋ねると、隣の泉図書館の北側に保存されていると教えていただく。
写真③ 七北田公園(2017年4月14日)。
ピラミット形のガラス造りがあり、その下は半地下、この中に大砂時計がある
(写真④)。砂の流れを止めた砂時計が見えた(写真⑤)。
写真④ 泉図書館の砂時計記念ピラミット。
写真⑤ 砂時計。
案内板には次のことが説明されている。
80日間砂時計
『この大砂時計は高さが5.5m、重さが10トン(砂だけで1.2トン)あります。
1989年に開かれた、緑をまもりそだてようというテーマの博覧会
「‘89グリーンフェアせんだい」のシンボルとしてつくられ、博覧会が開かれて
いた80日間、時をきざみつづけた世界ではじめての1番大きな「80日間砂時計」
です。砂時計の砂の流れは、人と自然がいっしょにすごしている時の流れをあらわし、
「緑の惑星・地球」をもう一度とりもどそうという願いがこめられています。』
私は、この大砂時計の発案から試験器の製作・試験、展示までを記録書
「大砂時計―世界初への挑戦の記録」(154ページ)として出版した。
当時の私は若く、心臓手術もしたが、ずいぶん難しい仕事をしたものである。
大きな砂時計では、オリフィスを落下する砂の流れ、上下のボトルで起きる砂の
崩れや地滑りは目で見ることができる。
しかし、目には見えない現象もある。砂の流れと逆向きに風の流れが存在する。
砂時計の中で起きる風の流れは、温度と気圧の関係によって微妙に変化し、
砂に含まれる水分によっても変わる。こうした現象は、大気中の現象と共通し
ている。私は砂時計の中の気象学について、手持ちの24時間砂時計で実演しながら、
子供たちにも大学の講義でも、多分野の学者にも紹介して、皆を驚かせてきた。
トップページへ | 小さな旅の目次 |