155. 弘法の清水(秦野市)

著者=近藤 純正
神奈川県秦野市は湧水で有名である。小田急の秦野駅の近くにある「弘法の清水」 の水温を時々測りに出かけている。(完成:2016年9月24日)

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神奈川県秦野市は湧水が多いことで有名である。私の住む平塚市の北西に ある。小田急線秦野駅北口から歩いて100メートル余の所に「弘法の清水」 があり、私は水温を測りに出かけた。

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写真① まほろば大橋(北側から撮影)、遠方中央は小田急線秦野駅。

秦野駅北口広場の近く、橋には大きな時計台がある(写真①)。案内板に よれば、この橋は「平成の新しい年に架け替えられた橋で、潤いと憩いを 求め、大きな親しみを込め『まほろば大橋』と命名しました。」とある。

「まほろば」とは、人々が暮らす場として優れた場所を意味する大和言葉で ある。

水無川は北西から南東に流れている。上流の北西方に白い秦野市役所の 建物が見え、川岸には遊歩道と花壇がある(写真②)。

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写真② 水無川、遠方中央の白い建物は秦野市役所。

「弘法の清水」はよく整備され、水汲みできるように作られ、屋根もか かっている。この湧水量は日量130トンで安定していると記されている。 私は水温観測に毎月のように行くのだが、いつも水汲みする人々に会う (写真③)。東京からもライトバンで水を汲みに来て、300キログラムも積んで 帰る人もいる。

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写真③ 弘法の清水で水を汲む人たち。

弘法の清水(臼井戸)の由来として案内板に次の内容が記されている。

「湧水地主の代々の言い伝えによれば、夏の暑い日盛りに、一人の法師が 立ち寄られ水を所望された。妻女は、寺まで水を汲みにいって立ち返った。 法師は恐縮し、その親切と労に感謝をし、錫杖を地面に突きさし穴をあけ、 『3日後に底をくりぬいた臼を据えおきなさい。必ず水が出るであろう』 と言って立ち去った。法師の言われたとうりにしたところ、臼の中から 清水が湧き出てきたことから臼井戸と呼ばれた。」

これと同じような伝説が弘法大師の伝説として日本各地にある。

秦野市の湧水は、昭和60年(1985年)1月に環境庁(現環境省)選定 の全国名水百選に認定され、名水の里となった。ところが、平成元年 (1989年)1月に「弘法の清水」が有害物質で汚染されていることが わかり、秦野市は汚染物質を除去して再び地下に戻す方法で水質を改善した。 写真③の右寄りの縦板に「秦野盆地湧水群復活宣言 平成16年 (2004年)1月1日」が書かれている。

弘法の清水の南の方にも湧水があることを聞く。寿徳寺(写真④)から 下がって行くと石垣に通された太い塩ビ管から多量の湧水が流れ出ている。 水温はいつも弘法の清水と同じ16.9℃である。

この石垣の上段は平坦に整地されており、水道関係の建物の跡らしい。 寿徳寺脇の小田急線踏切の近くの案内板(南地区まちづくり推進委員会) には次の内容が記されている。

「近くに弘法の清水があり、尾尻地区は湧水の多い所です。昔はあふれる 湧水による大きな池があり、鯉の泳ぐ姿が手にとるようでした。今は、 多くの市民の飲み水として広く使われています。」

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写真④ 寿徳寺。

平坦に整地された建物跡には、時々泡が出る湧水点がある。その水温が 泡の出る周期と同じかどうか測ってみたが、水温は一定のままの16.8℃ で、弘法の清水より0.1℃ほど低温である。

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写真⑤ 寿徳寺の下の湧水、石垣の下。

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写真⑥ 石垣の上段の平坦地の湧水(上向き矢印)、時々泡が出る。横向き矢印は 記念碑。崖上を小田急列車が走っている。

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