127. 西土佐

著者=近藤 純正
四万十市西土佐は高知県の西部内陸にある。高知県は雨量が多いことから四万十川などの河川には 古くから沈下橋が架けれている。(完成:2014年6月8日)

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西土佐は高知県西部の内陸、ここにJR予土線江川崎駅がある。駅の南西約1kmに西土佐 中学校があり、校門を入ると江川崎アメダス(江川崎地域気象観測所)がある。このアメダスで 2013年8月12日に41℃の最高気温が記録された。この気温が西土佐を代表する値であるかを 検証するために、周辺3kmの範囲内で気温観測を開始した (「研究の指針」の「K87.江川崎の最高気温41℃は本物か?」、 および「K88.江川崎の最高気温41℃は本物か?(2)」を 参照)。

雨量の多い高知県では、洪水時に橋が流失しないよう、水の抵抗を小さくした「沈下橋」(ちんかばし) が架けられている(写真127.1)。その一つ、長生(ながおい)沈下橋の東岸の畑でも気温観測を行なった。

長生沈下橋
写真127.1 長生沈下橋。橋の右側(下流に向かって左岸)の開けた畑で気温観測を行なった。 

長生沈下橋から四万十川の右岸に沿って約3km下ると、支流・広見川に架かる新川崎橋がある。 この周辺が西土佐の中心部で、郵便局や金物屋などの商店、旅館、昔の村役場(現在は四万十市役所 西土佐総合支所)などがある。

また、新道441号線沿いに売店「西土佐ふる里市」がある(写真127.2)。私が西土佐を最初に訪れた 2014年1月26日、江川崎駅の隣の「四万十川ふるさと案内所」で「西土佐ふるさと市組合」 の事務局長・大高達人さんを紹介していただき、それ以来大高さんには、気温観測で協力して もらっている。

西土佐に滞在中、私は「西土佐ふるさと市」で手作り弁当を買い、店の裏側に設けられた見晴らし台 で昼食をとることにしている。

ふるさと市
写真127.2 西土佐ふるさと市。 

水位尺
写真127.3 水位を測る水位尺。新道441号線から東方向を撮影。対岸の丘の上に西土佐中学校、 小学校などがある。 

新道441号線を南に進むと、水位尺の柱が川へ下りていく道路沿いに並んでいる(写真127.3)。 大洪水のとき、新道441号線の近くまで水が溢れる状態を想像すると、驚くべき水量である。こうした 自然環境のため橋は沈下橋となったわけだ。

近年、橋脚の高い橋も建設されるようになり、長さ約350mの「西土佐大橋」が架けられ (写真127.4)、対岸の用井にはカヌー館や山村ヘルスセンター、西土佐小学校、西土佐中学校、 特別養護老人ホーム「かわせみ」や西土佐診療所、西土佐ふれあいホールができた。

西土佐大橋
写真127.4 西土佐大橋。手前の水辺にあるのは気温計、南東方向を撮影。 

カヌー館
写真127.5 カヌー館とイベント広場。イベント広場は大洪水時に浸水する。 

ふれあいホールなど
写真127.6 山村ヘルスセンターから北西方向を撮影。西土佐ふれあいホール(右方)、 西土佐小学校の運動場(手前)、ホテル「星羅四万十」(左方に屋根2つが並ぶ)。

カヌー館の下のイベント広場でも気温の連続観測を行なっており(写真127.5)、小学校とふれあい ホールの庭でも数日間の気温観測を行なった(写真127.6)。

用井には、ホテル「星羅四万十」(せいらしまんと)、四万十天文台もできた。ここに天文台が 建設されるきっかけは、昭和63年に旧環境庁から「星空の街」に選ばれたことによるとのこと。

私はいつも山村ヘルスセンターで宿泊するのだが、この地に高級ホテル「星羅四万十」があることに 関心をいだき訪ねた際、フロント係の方からふれあいホールの裏にある「四万十天文台」について話を 伺った。天文台を担当しているのは、県外からこのホテルに就職した女性だという。彼女は大学で 天文学を専攻し、西土佐に天文台があり、その管理も行うことでホテルへ就職したとのこと。

かなり以前、私の現役時代からのことだが、天文学専攻の学生には、専門を生かせる就職先が 少なかった。それでも天文学専攻を希望する優秀な学生が多数いた。彼女が西土佐に職場を見つけた ことに人生ロマンを感じた。

私自身は、高校生のとき東北大学教授の故・山本義一の「気象学概論」(学部3年生用教科書)を 読み東北大学に学び、それ以来気象学を続け、現在、西土佐にきて気象観測をしている。

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