16.地球温暖化を見つめ直す(下)
―第2の温暖化問題に―
これは、環境新聞社・堀内義之氏が近藤純正の談話をもとに、2008年11月26日付
環境新聞に掲載された「地球温暖化を見つめ直す(25)」の内容と同じです。
「日だまり効果」寄与
「日だまり効果」についても説明すると、地表面温度は太陽からの日射に
よって上昇し、地表付近の高温の空気は風によって上空へ拡散する。
しかし周辺に障害物ができると地上付近の風速が弱められ、日だまりができる。
上空への熱の拡散が少なく熱がこもることで地上の気温が上昇することを
こう名付けた。
都市化によって、日だまり効果と都市化の効果が重なって起こることも多い。
あるいは、石廊崎(静岡県)の観測所は都市化の影響はないが、樹木が成育
して風を防ぐようになってきた。この影響は0.25℃だ。1970年ごろ
から、まきや炭を求めて樹木を伐採することが少なくなり、こうした場所で
の日だまり効果が目立つようになってきている。
このような補正作業を通して、日本全体の長期的な温暖化量をグラフ化
してみると、単調に上昇しているのではないことに気付く。1887年、
1913年、1946年、1988年の4回、劇的に気温が上がる
〝気温ジャンプ〟が見られる。中でも1988年のものは最も大きく、
平均で約0.6℃、北海道では1℃以上の急上昇を示している。そして
そのジャンプとジャンプの間は、気温は横ばいか、むしろ下降気味である
ことも見て取れる。
黒点との相関も
これをさらに、太陽黒点の相対数の変化と比較してみた。すると、
1910~1960年代の約50年間はよく一致しており、相関関係が高いと
言える。しかしそれ以外の時期には、対応していないか逆相関である場合が
多い。気候変動は、様々な現象がからみ合って起こる複雑な現象である。
気温の上昇傾向は、今後ますます大きくなると思われ、現状把握と将来予測
のためには正しい観測が不可欠だ。そのためには観測所の周辺環境が保たれ
ねばならない。
しかし、周辺環境が悪化の一途をたどり、敷地が売りに出されるなどで、
気候監視そのものが危うくなっている。そのため、観測環境の良いサイトを
「気候変動観測所」として提案したい。特に重要な箇所は、寿都、宮古、
室戸岬、与那国島などだ。
自然エネルギーや原子力利用などで温室効果ガスの排出を抑制したと
しても、大都市で問題化している熱汚染が地球規模に拡大する。人工熱の
排出量が現在の10倍に増加すると影響が見え始めるだろう。これは第2の
地球温暖化問題だ。人類は、無制限にエネルギーを使うことは許されない。
(談=近藤純正・東北大学名誉教授)