14.地球温暖化を見つめ直す(上)
―日本は100年で0.67℃―
これは、環境新聞社・堀内義之氏が近藤純正の談話をもとに、2008年11月12日付
環境新聞に掲載された「地球温暖化を見つめ直す(23)」の内容と同じです。
不正確な観測データ
日本各地の気象観測所に実際に足を運んで調査し、都市化や観測条件
によるぶれを補正する作業を続けている。その結果、日本の長期的な
気候変動による温度上昇は100年当たり0.67℃で、気象庁がまとめた
1.10℃というデータに比べ、約6割となる。また、その気温変化と
太陽黒点数の変動との間に相関関係が見られることも分かってきた。
現在の地球温暖化をめぐる議論として、温暖化を過大に見る「温暖化の
強調論」と、その反対の「温暖化の否定論、懐疑論」がある。前者は国民の
環境意識を高めるのに貢献しているが、現象の原因解明もせずに温暖化に
よるものだとして片付ける悪しき風潮も生じた。一方で後者は、国民の間に、
情報を鵜呑みにしない意識を芽生えさせる効果ももたらしている。
こうした両論が出てきている理由の一つとして、観測データの不正確さ
がある。なぜ不正確かと言うと、長期間の観測に含まれるさまざまな誤差が
補正されることなく利用されているからである。
観測方法の変更も
現在、気象台や測候所などの観測所は全国に約150カ所あり、また気象庁
の地域気象観測所(アメダス)も約1300カ所ある。
こうした観測所で気温を観測する際に、大きく3つの要素が誤差となって
表れてくる。まず観測方法の変更、次に都市化の影響、最後に、私の造語で
ある「日だまり効果」だ。こうしたことの積み重ねが、0.1℃レベルの
精度が要求される気候変動の観測においては、非常に大きな問題となって
くる。
観測方法の変更は、例えば観測時刻だ。昔は観測回数が1日に3回しか
なかった時もあった。これだと現在の24回観測と比べ、0.1~0.3℃
低めに平均気温が算出されることが分かっている。しかも観測回数は、
4回、6回、8回などと、数次にわたり変更されている。
(談=近藤純正・東北大学名誉教授)
―次回の(中)に続く―