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12.温暖化の監視が危うい  =近藤純正=

この短文は、2007年12月20日付高知新聞朝刊の
『所感・雑感』に掲載された内容と同じです。

地球温暖化対策が来年の北海道洞爺湖畔で行われるサ ミットでも議題になる。この温暖化対策と並んで、気 候変動の実態を監視していくことが重要である。温暖 化は長期的な気候変動であり、少なくとも50年、100 年以上にわたり、観測を続けることによって、その実 態がわかってくるものである。

気象庁では、約160ヵ所の気象台・測候所(無人化さ れたものも含む)と約1,100ヵ所のアメダスで気温や 風速等の観測を行なっている。気象台・測候所の大部 分は、明治時代から昭和初期に創設された。

室戸岬測候所は気候変動を監視できる数少ない観測所 の一つであるが、私がこの数年間、日本各地を巡回し てみると、田舎の観測所の多くは無人化され、敷地の 大部分が売りに出されている。例えば長崎県の平戸で は、その大半の面積約1,600平方メートルを 1,660万 円で売却する看板があった。

気象はごく近辺の環境変化に敏感に反応するので、気 候変動の監視には広い敷地が必要だ。創設時代にはこ のことが考慮されて、適地に観測所が開設されてきた。

もし売却された敷地に中高層住宅が建築され、あるい は背丈の高い雑草や樹木が生い茂ると、風通しが悪化 し気温が高めに観測されるようになり、これまで継続 してきた気候変動の監視が断絶することになる。私が 実例を示すと、関係者はそのことにはじめて気づく。

こうした観測所の中には、災害をもたらすような強風 をほとんど観測できなくなったところもある。これは 気候監視だけでなく、防災監視にも悪影響を及ぼすこ とを意味する。

気温の観測値には、温室効果ガスの増加による気候変 動のほか、観測所周辺の都市化による影響などが含ま れる。大・中都市では戦後の60年間に気温は1~2℃ ほども上昇しており、これは植生地の減少・人工廃熱 の増加などによるものだ。

これら都市化の影響を除く気候変動の大きさは、この 100年間に0.5℃程度であり、この上昇率は今後大き くなると予想されている。

気象庁の観測所約1,300ヵ所は、おもに防災監視目的 のものである。そのうちの、せめて20数ヵ所は気候 変動の監視目的のために、敷地はそのまま残すべきだ。 国家予算の節減の現状にあっても、その敷地の管理に 必要な支出は環境重視の世論からも支持されよう。

例えば岡山県津山市や青森県深浦町では、私が観測露 場の近くに成長した樹木が観測値に影響するので伐 採・剪定すべきことを説明すると、住民や市・町はよ く理解し協力的であった。

こうして環境保全ができた20数ヵ所における観測値 から、地球温暖化による気温変動を知ることができる。 その結果を基準として、日本各地の都市の昇温量が時 代によってどう変わってきたかがわかり、夏の都市昇 温の緩和策にも役立てることができる。

以上の観点から、政治的判断により、守るべき観測所 敷地の売却は即時中止し、日本における気候変動の監 視体制を整えるべきだ。サミット開催国として、これ は当然なすべき問題であり、責務だと思う。
(高知県吾川郡いの町出身・神奈川県平塚市中里49-6)

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