A52.室戸岬気象観測所
ー地球温暖化監視の重要な観測所ー
(観光用パンフレット)


著者:近藤純正
室戸岬気象観測所は、周辺環境に変化がほとんどなく、地球温暖化など気候変化を監視する 重要な気候観測所である。 (完成:2011年2月22日)

本ホームページに掲載の内容は著作物であるので、 引用・利用に際しては”近藤純正ホームページ”からの引用であることを 明記のこと。

これは、室戸岬気象観測所の見学会(2011年3月9日)において参加者に配布する資料である。 また、室戸の観光用として活用していただければ幸いである。なお、室戸岬の気象の特徴についての 詳細は、「A51. 室戸岬の気象」に掲載してある。


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室戸岬気象観測所(旧室戸岬測候所、現在は室戸岬特別地域気象観測所)は、北緯33度15.1分、 東経134度10.6分、標高185mにある。この観測所は、太平洋に向かって突き出た岬の上にあり、 周囲には人家などはなく、自然に恵まれた環境にある。

旧測候所の創設は1920年、同年7月から観測が行われ、これまで90年間にわたり観測データが蓄積 されてきた(それ以前の1903~1904年の室戸岬の観測データはあるが、観測場所の位置は不明)。

無人化前の室戸岬観測所
図1 無人化前の室戸岬測候所。レーダードーム(白い球)、観測露場(四角で囲まれた緑の芝生)、 旧庁舎がある。右上の遠方には「室戸岬漁港」が見える(2005年11月19日、高さ40mの旧測風塔から撮影)。
観測所で重要なことは、(1)風通しがよいこと、(2)日当たりがよいこと、(3)周囲の環境が 時代によって変わらないことである。観測所が無人化された現在、レーダー塔は残し、旧庁舎は解体、 新しい局舎が建てられている。それら施設はフェンスで囲まれ、フェンスの外側から見学することが できる。ただし、観光道路「スカイライン」の入り口にはカギがかかっており、 見学するには許可が必要である。

日本の多くの気象観測所は、観測所周辺が舗装され、ビルが増えるなど都市化されて都市独特の気候 が現れ、地球温暖化などの地球規模の気候変化を正しく観測できなくなってきた。

観測所周辺の環境変化が少なく、長期の気候変化を正しく観測できる気候観測所は、北海道日本海 沿岸の寿都、岩手県三陸沿岸の宮古、高知県東部の室戸岬の3か所である。 ほかに鹿児島県屋久島と沖縄県最西端の与那国島も環境に恵まれているが、観測期間 が短い。

これら3か所のうち、室戸岬観測所は環境にもっとも恵まれた気候観測所であり、将来にわたり 観測環境を大事に守っていかなければならない。

重要な気候観測所
図2 日本の重要な気候観測所、赤印に丸記号で囲んだ観測所は環境に恵まれた特に重要な気候観測 所(寿都、宮古、室戸岬、および屋久島と与那国島)

室戸岬観測所など基準となる観測所における資料をもとに作成した「日本の気温の長期変化」を 図3に示した。これは都市化などの効果を含まない気温の変化である。

気温の長期変化
図3 日本の気温の長期変化、赤矢印は気温が急激に上昇する気温ジャンプを示す。

過去127年間(1881~2007年まで)の気温上昇率は100年間当たり0.67℃である(破線)。 図3は日本全体の平均気温を示すものであり、地域によって変化の様子は異なる。気温ジャンプは 緯度が高いほど大きく、たとえば1988年の気温ジャンプは、北海道や東北地方で0.8~1.2℃の大きさ、 沖縄など南西諸島では0.2~0.4℃である。

温暖化など長期の気候変化は100年間当たりわずか0.67℃で、誤差に匹敵する大きさである。 それゆえ、今後の気候がどのように変化していくか、高い精度で観測しなければならない。 高精度の観測を行うには、観測所の周辺環境を可能な限り一定に保つことが重要となる。

室戸岬に重要な気候観測所があることを多くの人々に知ってもらうことが観測所の環境を守る ことにつながる。



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