K104.林内気温-つくばの洞峯公園、農環研、気象研


著者:近藤純正・桑形恒男
つくば市内の洞峯公園、農業環境技術研究所、及び高層気象台において晴天日中の広い 芝地基準点と林内の気温差を観測した。これまでに行なった他所の観測結果も含めると、 気温差と木漏れ日率の関係は、見通し良好の林内と不良の林内で大きく異なることが わかった。
見通し良好な林内の気温差は林床の木漏れ日率=10%で-0.5℃程度、木漏れ日率=80%で -0.1℃程度、変動幅は±0.4℃の範囲内にあり、日陰の効果によると見なされる。
いっぽう、見通し不良の林内では木漏れ日率20%以上と以下で傾向が大きく異なり、 気温差は木漏れ日率=10%で-1.0℃程度のマイナスに対し、木漏れ日率=40%で+0.7℃、 80%で+1.0℃程度のプラスとなり、変動幅は+0.3℃~1.4℃の範囲に分布し、典型的な 「日だまり効果」が現れる。 (完成:2015年6月13日)。

本ホームページに掲載の内容は著作物である。 内容(新しい結果や方法、アイデアなど)の参考・利用 に際しては”近藤純正ホームページ”からの引用であることを明記のこと。

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更新の記録
2015年6月9日:素案の作成
2015年6月10日:細部に加筆・修正
2015年6月13日:完成


  目次
      104.1 はしがき
      104.2 観測方法
      104.3 洞峯公園
      104.4 農業環境技術研究所
      104.5 気象研究所と高層気象台 
   104.6 気温差の解析  
      まとめ


観測協力者・機関(敬称略):
洞峯公園
農業環境技術研究所:石郷岡康史、神田瑠璃、本橋里江子
気象庁観測部:島津好男
気象研究所
館野高層気象台

資料の提供:
農業環境技術研究所の気象観測露場におけるルーチン観測データは農業環境技術研究所 から10秒間隔のデータが提供された。また、館野高層気象台のルーチン観測データは 気象庁ホームページに掲載されたものを利用した。



104.1 はしがき

「森林内の気温は蒸散作用により、都市域や樹木の無い所に比べて低温」という 間違った不正確な常識を正すことが本シリーズ研究の目的である。

ここでは晴天日の正午前後について考えている。強風など特殊条件を除けば、植物の 葉面は気温より高温になる。葉面と細い枝は熱容量が小さく貯熱量が少なく、 日射エネルギーの大部分は、ほとんど時間遅れなく、葉面からの長波放射と顕熱と 潜熱に配分され、そのうち顕熱は大気を直接加熱する。

林床では、樹冠層によって遮られた日射量の一部しか届かず、日陰が多く地温・気温は 上昇しにくい。しかし風が弱いために熱拡散が弱く熱がこもりやすい。これらの兼ね合い によって、林内の気温は高温になるか低温になるかが決まる。

本研究では、林内の放射量は木漏れ日率で表し、林内の風速・風通りは 目の高さにおける見通しの良好・不良によって表す。

林内の木漏れ日率:
林床の日射量が林外の何%であるかの測定は非常に難しい問題である。今回は、木漏れ 日率として、観測点の周囲約20m範囲内を目視する。林内には、一般に低木などが生え ているので、林床面上の高度1m以下の範囲を見たとき「強い直射光」が当たっている 面積の割合(%)を「木漏れ日率」と定義する。
ただし、林内の見通しが非常に悪い場合、見通しのできる範囲内、たとえば10m以内の 木漏れ日率とする。 この定義による木漏れ日率は雲量の測定に似ている。山で囲まれた山峡では天空の 見える範囲は狭く、その見える範囲内に占める雲の割合を雲量とするのに似ている。

林内の見通し:
目の高さ≒気温観測用の通風筒吸気口の地上高=1.5mで林内を水平に見たときの見通し の良し悪しによって、「見通し良好」と「見通し不良」の2つに大別する。 方位の50%以上の範囲の見通しが、おおむね30~50m以下の場合を「見通し不良」、 50m以上まで見える場合を「見通し良好」とする。

「見通し良好」では、根元から高さ2~3m程度まで枝は切り落とされて手入れ されており、目の高さには太い幹のみがあり50m以上、100mの遠方まで見通しがきく。

「見通し不良」では、高木の中に低木があり、高度2~3m以下に下枝・下草もある。
また、全体の樹高が低く、例えば3~6m程度の低木が多ければ、高度1.5mは樹冠層 (葉面層)内であり、葉面・小枝が太陽光で熱せられて気温は高くなっている (「K83.気温観測に及ぼす樹木の加熱効果ー実測」)。

林内外の気温差は林床の放射環境「木漏れ日率」と見通しの兼ね合いに依存する。 風通しの良し悪しは、見通しと関係する。

気温差の定義:
林内と広場基準点の平均気温の差は次式で定義する。

 気温差=林内気温-広場基準点の気温

広場基準点の気温とは、周囲が開けて空間広さが広い芝地上の気温である。気象台の 露場も広場基準点として用いる(ただし、露場環境が悪化した気象台は除外)。 気温差がプラスのときは林内が高温、マイナスのときは林内が低温である。

本章は、つくば市内の洞峯公園と農業環境技術研究所(略称:農環研)の林内、および 館野高層気象台露場の西側の林内で観測した結果をまとめたものである。


備考:林内の風速
林内風速については研究の指針」の「K56.風の解析―防風林などの 風速低減域」が参考になる。 すなわち、林の幅(厚み)が小さければ風上から侵入した風は林内 で弱められながらも 風下側へ通り抜けてくる。そのときの風の弱化は「水平葉面積指数 ×個葉の抵抗係数」に依存する。しかし林の幅が十分厚くなれば、風上から侵入して 通り抜ける風はなくなり、森林上空から鉛直下向きに運ばれた運動量が樹木の 葉・枝・幹 の抵抗によって弱められ、林床面上の風速は「鉛直方向の葉面積指数 ah × 個葉の抵抗 係数 c 」によって決まる一定の風速となる。
図56.21は風に対する水平方向の力学的な厚さ(=水平葉面積指数×個葉の抵抗係数) と防風林のすぐ風下側の最小風速の関係である。横軸が十分大きくなると最小風速は 森林ごとに異なる「鉛直方向の葉面積指数 ah × 個葉の抵抗係数 c 」によって決まる 一定値に収束するものと考えられる。ahc は疎林で小さく、密林で大きい。
この考察からすれば、見通し不良の林内風速は林外風速の10%程度またはそれ以下に なり、見通し良好の林内風速は林外風速の40%~60%程度と推定される (図56.22も参照)。
空間広さ<1の範囲は林内に相当する。実際に観測した林内(空間広さ≒0.1)での 露場通風率(林内風速の林外風速に対する比)は10%程度であった (「K57. 森林内の開放空間の風速」の図57.10)。


104.2 観測方法

高精度の強制通風式気温計を用いる。この気温計の総合的誤差(通風筒に及ぼす放射 影響を含む)は0.03℃程度である(「K92. 省電力通風筒」「K100. 気温観測用の次世代通風筒」)。

観測は快晴日または直射の強い薄曇りの日に行なうこととし、1日の最高気温が現れやすい 時間帯の11時~15時までの4時間を原則とする。ただし、風向や天気などの 条件によって0.5時間ずらすこともあり、雲が現れるときは2時間の観測となることもある。 気温のサンプリングは20秒ごとに行ない、4時間の平均気温をもとめる。センサーは Pt1000オーム、受感部の直径は2.3mmを用いている。

通風式気温計は伸縮棒(長さ0.85m~2m)の上端に取り付け、三脚に載せて気温は 継続して自動記録する。通風筒の吸気口の地表面からの高さは1.5mとする。気温計の うちの1台は広い芝地の基準点で、他は林内で観測する。


104.3 洞峯公園

つくば市内には洞峯公園がある。公園内の南西部に広い芝地(多目的フィールド)が ある(図104.1)。その東に、ほぼ円形の芝地開空間がある(図104.2)。これらの周辺 には見通し良好の林がある(図104.3)。

洞峯公園芝広場
図104.1 洞峯公園内の広い芝地(多目的フィールド)。

洞峯公園開空間
図104.2 洞峯公園内のほぼ円形の開空間、直径約30m。

洞峯公園林内
図104.3 洞峯公園内の林内(見通し良好)。

2015年4月28日の観測では、館野高層気象台の露場(空間広さ=6.7)を広場基準点として 気温差をもとめた。

2015年5月22日には、気象研究所の広い露場(空間広さ=11.0)と館野高層気象台 露場(空間広さ=6.7)と洞峯公園の広い芝地(空間広さ=4.5)がともに広場基準点と して利用できるかどうかを確かめた。観測結果は次の通りである。

5月22日12時~14時の平均気温
カッコ内はもっとも広い気象研露場を基準とした気温差である。ただし、気温のサンプ リング間隔は気象研露場と洞峯公園芝広場においては20秒間ごと、館野高層気象台(ルーチン 観測)においては10分間ごとである。

気象研露場(空間広さ=11.0):24.30℃(±0.0℃)
館野高層気象台(同 広さ=6.7):24.53-0.3=24.23℃(-0.07℃)
洞峯公園芝広場(同 広さ=4.5):24.36℃(+0.06℃)

館野高層台の気温24.23℃はルーチン観測によるもので、通風筒に及ぼす放射影響による 誤差0.3℃を補正した値である。サンプリング個数などから生じる誤差を考慮すると、 3地点の気温は誤差の範囲内でほとんど一致し、いずれも広場基準点として利用できる。

なお、観測結果の詳細は後掲の表104.1と図104.11に示す。


104.4 農環研

最初の2015年5月8日の観測では、今回の観測で用いている高精度気温計を露場 (空間広さ=11.4)に設置してルーチン観測用の気温計と比較した。

11時~15時の平均気温は次のとおり(カッコ内は高精度気温計を基準とした放射影響に よる誤差)。
ルーチン観測気温=23.39℃(+0.25℃)
高精度気温計気温=23.14℃

カッコ内に示す誤差(+0.25℃)は、ルーチン観測用の気温計に及ぼす放射影響の日中の 平均値+0.3℃と誤差の範囲内で一致するので、今後はルーチン観測の気温から0.3℃を 引き算した値を広場基準点の気温として用いる。

なお、ルーチン観測用の気温計に及ぼす放射影響の日中の平均誤差+0.3℃は「研究の指針」 の「K89.通風筒に及ぼす放射影響-農研用」「K99.通風筒に及ぼす放射影響(気象庁95型、農環研09S型」 に示されている。

林内の観測は、露場を広場基準点として旧露場、旧露場の北西45mの林内、露場観測塔 の150m西の林内、同300m西の林内、同330m東南東の林内で行なった。結果は後掲の 表104.1と図104.11に示す。

農環研露場
図104.4 農環研の露場(2015年5月8日撮影、北西側から南東を見る)。
写真のほぼ中央に三脚に載せた高精度気温計、観測塔の右に ルーチン用気温計がある。。

農環研の旧露場
図104.5 農環研の旧露場北西側の林内(見通し良好)、45mの遠方の明るい所が旧露場 である。

農環研観測塔の西150m
図104.6 農環研観測塔の西150mの林内(見通し良好)。

塔の西300m
図104.7 農環研観測塔の西300mの林内(見通し不良)。

塔のESE330m
図104.8 農環研観測塔の東南東330mの林内(見通し不良)。


104.5 館野高層気象台

2015年5月22日の観測は、すでに104.3節で述べたように気象研究所の広い露場 (空間広さ=11.0)と館野高層気象台露場(空間広さ=6.7)と洞峯公園の広い芝地 (空間広さ=4.5)がともに広場基準点として利用できることを確かめることと同時に、 館野高層気象台の西側の林内で気温を観測した。

すでに示したように、これら3つの広い芝地での気温は、サンプリング個数などから生じる誤差の範囲で一致した。

気象研露場
図104.9 気象研露場(2015年5月22日撮影、北側から南方向を見る)。

館野高層気象台西の林内
図104.10 館野高層気象台の西側の林内(見通し不良)。


104.6 気温差の解析

つくば市内の洞峯公園、農環研、館野高層気象台の林内で気温を観測し、広場基準点との 気温差をもとめた。前報告「K101.森林内の気温―北の丸公園と自然 教育園」「K102.森林内の気温―湘南海岸公園と平塚市総合 公園」「K103.林内気温―新宿御苑、神宮の森、北の丸公園」、 その他も含めて観測一覧を表104.1にまとめた。これらは3~5月のおもに快晴日の観測で ある。

なお、気象庁と農環研の気温観測用の通風筒に及ぼす放射影響について、日中の誤差は 0.3~0.4℃高めに観測されるので(「K99.通風筒の放射誤差 (気象庁95型、農環研09S型」)、正午前後は平均として観測値から0.3℃低い気温 を真値として補正し、表の「広場補正」の列に示してある。

表104.1 広場基準点の気温と林内の気温の一覧表、晴天条件
 自然園:自然教育園(港区白金台)
  開の北:自然教育園の開空間(旧庁舎跡地)の北20mの林内
 海公園:湘南海岸公園の芝地中央
 海公園W:湘南海岸公園の芝地中央のやや西寄り
 総合公園:平塚市総合公園
  西池東:平塚市総合公園内西池の北東側の林内
 イギリス:イギリス風景式庭園(芝地)
 中央広場:代々木公園中央広場(芝地)
 代々木落:代々木公園の落葉樹林
 洞峯-明:つくば市洞峯公園の樹木密度が小さい明るい場所
 洞峯-暗:つくば市洞峯公園の樹木密度が大きいやや暗い場所
 池の北芝:北の丸公園内の池の北側の広い芝地
 洞峯広場:洞峯公園の広い芝地(多目的フィールド、芝地)
 空間広さ:広場の空間広さ=<1/tanα>=<X/h>、h:樹高など地物の高さ、X:地物までの距離
 誤差:気象庁の通風筒に及ぼす晴天日中の放射影響
 気温差(℃):林内の気温-広場基準点の気温
  広場補正(℃):農環研や気象庁の観測所の気温は晴天日中に0.3℃高めであることを補正した気温差

 木漏日率:直径=20~30m範囲の木漏れ日率、ただし見通しが20m以下では見通し範囲内の木漏れ日率
 見通しの○印:林内の見通し良好(多くの方位について50m以上、100mまでは見える)
 見通しの不良:林内の見通し不良(30m以内)
 
番号 月日 観測地   広場    森林名  樹高  時  刻  空間 木漏  広場     広場  林内 気温差 見通し 備考
                                広さ 日率  気温 誤差  補正  気温 林-広
                                      m                    %    ℃   ℃   ℃    ℃    ℃
2012年
S1 4/5  自然園    大手町   開空間   14 11:10-13:50  3.4  90  18.55  0.3  18.25 19.29 +1.04 不良
S2  4/8  自然園    大手町  開空間   14  11:00-15:00  3.4  90  12.34  0.3  12.04 13.23 +1.19 不良
S3 4/5  自然園    大手町   開の北   14  11:10-13:50  3.4  30  18.55  0.3  18.25 18.50 +0.25 不良
S4  4/8  自然園    大手町   開の北   14 11:00-15:00 3.4 30 12.34  0.3  12.04 12.63 +0.59 不良
2015年
H1  3/30 平塚     海公園  防砂林   12  11:30-14:30 17.4  40  16.96  0.0  16.96 17.70 +0.74 不良
H2  3/31 平塚     海公園  防砂林   12  11:00-14:00 17.4  40  18.05  0.0  18.05 19.16 +1.11 不良
H3  4/2  平塚     総合公園 西池東   14  12:30-14:30  4.7  20  13.44  0.0  13.44 13.73 +0.29 ○
H4  4/9  平塚    海岸公園 防砂林   12  11:00-14:00 17.4  40  10.40  0.0  10.40 10.84 +0.44 不良 前日冷雨
G1  4/12 新宿御苑 イギリス  W区常緑 20  11:00-14:00  7.7  15  15.88  0.0  15.88 15.66 -0.22 ○  前日冷雨
G2  4/16 新宿御苑 イギリス  W区常緑 20  11:00-13:30  7.7  15  19.70  0.0  19.70 19.77 +0.07 ○
G3  4/16 新宿御苑 イギリス  落葉樹林 20  11:00-13:30  7.7  50  19.70  0.0  19.70 20.42 +0.72 不良
J1  4/18 神宮の森 中央広場  代々木落 15  11:00-14:00  5.8  50  17.14  0.0  17.14 17.06 -0.08 ○  強風
J2  4/18 神宮の森 中央広場  神宮の森 25  11:00-14:00  5.8  15  17.14  0.0  17.14 17.05 -0.09 不良 強風
T1  4/26 つくば  館野   洞峯-明 18  11:00-15:00  6.3  70  22.35  0.3  22.05 21.74 -0.31 ○
T2  4/26 つくば  館野   洞峯-暗 18  11:00-15:00  6.3  10  22.35  0.3  22.05 21.64 -0.41 ○
J3  4/28 神宮の森 中央広場  代々木落 15  11:00-15:00  5.8  23  25.63  0.0  25.63 25.53 -0.10 ○  薄曇
J4  4/28 神宮の森 中央広場  神宮の森 25  11:00-14:00  5.8  15  25.63  0.0  25.63 25.33 -0.30 不良 薄曇
K1  5/1  北の丸  池の北芝  露場S40 16  11:00-14:00  3.5  50  24.23  0.0  24.23 24.65 +0.42 不良
K2  5/1  北の丸  池の北芝  露場N25 16  11:00-14:00  3.5  50  24.23  0.0  24.23 25.02 +0.79 不良
K3  5/2  北の丸  池の北芝  露場W落 16  11:00-15:00  3.5  50  25.20  0.0  25.20 25.35 +0.15 ○
K4  5/2  北の丸  池の北芝  吉田茂N  8  11:00-15:00  3.5  70  25.20  0.0  25.20 25.71 +0.51 不良
K5  5/2  北の丸  池の北芝  露場下S 10  11:00-15:00  3.5  95  25.20  0.0 25.20 25.90 +0.70 不良
H5  5/3  平塚   海公園W  防砂林   12 11:00-15:00 15.0  40  21.44  0.0  21.44 22.44 +1.00 不良

H6  5/6  平塚   海公園  防砂林   12  13:00-14:00 17.4  25  19.82  0.0  19.82 20.77 +0.95 不良
T3  5/8  つくば  農環研   塔W130   15  11:00-12:00 11.4  11  22.21  0.0  22.21 21.81 -0.40 ○
T4  5/8 つくば  農環研  塔W300    8  12:00-15:00 11.4  12  23.46  0.0  23.46 23.75 +0.29 不良
T5  5/11 つくば  農環研  塔ESE330 16  11:00-15:00 11.4  15  21.48  0.3  21.18 20.66 -0.52 不良
T6  5/11 つくば  農環研  塔W300    8  11:00-15:00 11.4  12  21.48  0.3  21.18 21.39 +0.21 不良
H7  5/13 平塚   海公園   防砂林   12  10:30-14.30 17.4  42  23.57  0.0  23.57 24.27 +0.70 不良
T7  5/14 つくば  洞峯広場 遊戯広場 16  11:00-15:00  4.5  80  27.13  0.0  27.13 26.74 -0.39 ○
H8  5/20 平塚   海公園  防砂林   12  12:30-14:30 17.4  40  22.24  0.0  22.24 23.24 +1.00 不良
H9  5/20 平塚   海公園  防砂林   12  12:30-14:30 17.4  20  22.24  0.0  22.24 23.03 +0.79 不良
H10 5/20 平塚   海公園  防砂林   12  12:30-14:30 17.4  60  22.24  0.0  22.24 23.66 +1.42 不良
T8  5/21 つくば  農環研  旧露場   13  11:00-15:00 11.4  75  22.27  0.3  21.97 22.14 +0.17 ○
T10 5/22 つくば  気象研  館野W    10  12:00-14:00 11.0  11  24.30  0.0  24.30 23.25 -1.05 不良
J5  5/27 神宮森  中央広場  代々木落 15  11:00-13:00  5.8  10  28.37  0.0  28.37 27.59 -0.78 ○


図104.11は気温差を木漏れ日率の関数として表したもので、縦軸のプラスは林内が高温、 マイナスは低温である。記号は見通しの良好な林内と不良な林内に大別してある。

樹幹層の見通し、つまり風通し良好の林内の気温差は、
林床の木漏れ日率=10%で-0.5℃程度、
木漏れ日率=80%で-0.1℃程度、
変動幅は±0.4℃の範囲内にあり、日陰の効果によると見なされる。

いっぽう、見通し不良な林内の気温差は、木漏れ日率20%以上と以下で傾向が大きく異なり、
木漏れ日率=10%で-1.0℃程度のマイナスに対し、
木漏れ日率=40%で+0.7℃、80%で+1.0℃程度、
変動幅は+0.3℃~1.4℃の範囲に分布し、典型的な「日だまり効果」が現れる。

図中の赤破線は「見通し不良」の林内、黒破線は「見通し良好」の林内についての関係で あり、今後、観測値が増えると変わる可能性のある暫定曲線である。

木漏れ日率と気温差の関係
図104.11 木漏れ日率と気温差の関係。塗つぶし印は冷雨の翌日の気温差を示す。


まとめ

(1)広場基準点に対する林内の気温差は-1.0℃~+1.4℃の範囲に分布し、プラス (森林内が高温)の例が多くなっている(図104.11)。

(2)見通しのよい林内、つまり低木も無く樹幹層の葉面積がほとんど無い林内の気温差 は-0.5℃~-0.1℃の周辺に分布する。

(3)見通しの悪い林内、つまり低木も多い自然に近い林内(湘南海岸公園南隣の防砂林、 新宿御苑の母と子の森、農環研の一部、館野高層気象台露場の西側)では、気温差は -1.0~+1.0℃の周辺に分布し、木漏れ日率への依存性は木漏れ日率30%以下で大きく、 40%以上の範囲では小さい。


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