85. 熊野那智と新宮
著者:近藤 純正
2007年12月4日から7日まで、紀伊半島の潮岬、熊野那智・新宮、伊勢・二見浦
と名古屋城を観光した。この章は世界遺産のある熊野那智と新宮の記録である。
(2007年12月11日完成)
もくじ
1.新宮
2.熊野古道
3.熊野那智
潮岬測候所の視察旅行の途中、世界遺産の熊野速玉大社、補陀洛山寺
(ふだらくさんじ)、熊野古道、熊野那智大社、清岸渡寺、那智の滝を観光
した。
2007年12月5日、串本からJR特急にて新宮駅に15:03に到着。駅前の観光
案内所にて、きょうの夕方と明日の午前中にかけて回れる世界遺産のコース
を教わる。5日は新宮駅から歩いて行ける熊野速玉大社を、6日のコース
として次を教えられた。
JRにて新宮7:51-那智8:09下車、那智駅前にある世界遺産・補陀洛山寺見学。
熊野交通バスにて那智駅前8:35-大門坂8:46下車、熊野古道「大門坂」を登る。
表参道を登り熊野那智大社と青岸渡寺を見学、三重の塔を経て日滝神社・那智
の滝を見学。
11:41までにバス停「滝前」にもどる。
熊野交通バスにて滝前11:41-勝浦12:06到着。
JR特急「ワイドビュー南紀6号」勝浦12:46-松坂15:11下車。
1.新宮
新宮駅前のホテルに荷物を預けた。そこから歩いて行ける距離だが
暗くならぬうちにと、タクシーにて熊野速玉大社に到着。
速玉大社は”蟻の熊野詣”で知られる熊野三山の一つで、全国にある熊野
神社の総本宮である。新宮市の地名も、この神社がお燈祭で有名な神倉山
(近くにある)から現在地に移された事に由来する(新宮市観光パンフレット
による)。
世界遺産・熊野速玉大社その1
熊野速玉大社その2
熊野速玉大社と熊野御幸の碑
境内に大きな「熊野御幸」の石碑がある。これには、第59代天皇・宇多上皇
の907年から1303年までの396年間に上皇、女院、親王を合わせて御二十三方、
140回に及ぶ皇室のご参詣があり、これを熊野御幸といい、歴代のご参詣者が
刻まれている。
案内板には、当時の御幸の道順として、京都、住吉、和泉、紀伊半島海岸沿い
に南下して田辺、中辺路、本宮、熊野川を下って当大社へ参拝、那智山、雲取、
本宮、往路コースを逆行して帰京されるまで、およそ二十数日に及ぶ難行苦行
の旅であった。熊野御幸によって、熊野信仰は公卿、武士、庶民の間に
流布した、と説明されている。
鎌倉時代以降、「蟻の熊野詣」と呼ばれるほど多くの人々が熊野に詣でるよう
になった。
速玉大社から歩いて駅前のホテルに向かう。観光案内所でもらった地図を頼り
に歩くのだが、新宮市街の道路は曲線状の部分が多く複雑である。
駅の近くで道を尋ね、やっとホテルまでの道筋がわかった。そのとき、駅から
速玉大社へ向かう2人連れの若い女性が通行人に小さな地図を示し
ながら道順を教わっていた。私がわかりにくかったと同様に、彼女らも
道順がわかり難くかったので、その地図より大きな私の地図をゆずって
あげた。
2.熊野古道
JR那智駅のすぐ近く、国道を渡ったところに補陀洛山寺(ふだらくさんじ)
がある。最近、世界文化遺産に指定された大きな立札があるが、これがなけ
れば、ごく普通の寺の印象である。
平安時代~鎌倉時代の日本では、はるか南の海の彼方に観音浄土「補陀洛」が
存在すると信じられ、これを目指して船出することを「補陀洛渡海」と呼んだ。
渡海上人は小船にわずかな水と食糧を乗せ、船内に入ると出られないように
外から釘が打たれ大勢の僧らに見送られながら沖へ引かれ、同行船が綱を
切って流された。日本の各地から補陀洛渡海が行われたという。
渡海がもっとも盛んだったのが熊野那智海岸である。渡海は北風が吹きだす
旧暦11月に行われる死出の旅であり、船が朽ちて沈むまで漂流する。
那智駅前の補陀洛山寺には、補陀洛山へと小船で旅立った渡海上人たちが
まつられている。
世界遺産・補陀洛山寺
那智駅からバスでおよそ20分後、熊野古道の大門坂で下車。大門坂の石畳を
登り、表参道へとつながる。
左:熊野古道の大門坂上り口
右:夫婦杉(古道入り口の左右に並ぶ、樹齢約800年、樹高55m、幹周り8.5m)
熊野古道「大門坂」(267段、距離600m余)
3.熊野那智
熊野那智大社と那智山青岸渡寺は、熊野本宮大社(田辺市本宮町)、
熊野速玉大社(新宮市)とともに熊野三山と呼ばれる。
いずれも滝や川、巨岩などに神が宿ると考える自然崇拝が起源とされる
(那智勝浦町観光パンフレットによる)。
世界遺産・熊野那智大社(イザナミノミコトを主祭神とする
熊野十二所権現を祀る)
世界遺産・青岸渡寺(西国第一番札所、織田信長の焼き打ちに
あったが、豊臣秀吉により再建)
左:タブの木(和歌山県指定天然記念物、通称犬樟(いぬぐす)、樹齢約700年)
右:青岸渡寺の三重の塔(右の後方に那智の滝が見える)
世界遺産・那智の滝、右側の上と下は滝の上端と下端付近
(望遠写真)
落差133mで日本一、この日は12月で水流は少なく、上端は3つに別れて見える
那智御滝水
那智の滝の下へ行くには、飛瀧神社(ひろうじんじゃ)に入り、お瀧水の
手前で入場料を払うとミニお札「那智御瀧 飛瀧神社延命御守」が手渡される。
さらに100円の杯に御瀧水を汲んで飲めば、延命長寿が約束される。
この熊野那智大社・青岸渡寺・那智の滝への観光客のほとんどは観光バス
による団体客である。
バス停「滝前」でバスを待っていると、大門坂の上り口で声を掛けあった年配
の夫婦連れにまた会う。彼らは私と逆コースで名古屋ー伊勢ー那智ー潮岬
・・・・を巡る旅だという。