56. 室戸岬の観光
近藤 純正
2005年11月19日、高知県東部の室戸岬へ旅行し、室戸台風による低い気圧と
強風を観測した室戸岬測候所、日本一大きなレンズが
使われている室戸岬灯台、弘法大師が難行苦行を重ねて悟りを開いたと
いわれている御厨人窟(みくろど)などを見学した。
この観光は、地球温暖化の実態把握の一環として日本各地の気象観測所
を巡る旅の一部として行ったものである。
室戸岬への旅
2005年11月19日(土曜日)、高知駅8時30分発の快速の直通列車に乗車する
予定である。この列車は上りであるが、後免(ごめん)駅から、土佐くろしお
鉄道ごめん・なはり線となり目的地の奈半利へ向かうことになる。
高知駅でのハプニング
JR高知駅で、上りと下りの列車を間違えた人々があり、私も間違いそうに
なったので、JRと土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線の会社には、乗客が
乗り間違えないように改善してもらわなければならない。
この時間帯の高知駅の発車時刻と乗り場番線(プラットホーム番号)
は次のようになっている。ただし、特急列車は除く。
下り 上り
発車時刻 行き先 乗り場番線 発車時刻 行き先 乗り場番線
8:23 須 崎 3 8:30 奈半利 3
8:44 土佐山田 2
9:29 窪 川 1
10:39 須 崎 2
さて、8時18分、改札口のある一番手前の1番線から下り特急列車の宿毛行きが
発車した。すると、3番線に停車していた列車が見えるようになった。
8時19分ころ、私は改札口の上に掲示されている発車時刻案内表示版で、
上り快速直通列車・奈半利行きの発車時刻「8:30」と乗り場「3番線」を
確認した。
この案内表示板は上り用と下り用が別々にあり、おそらく上りに乗車する乗客
は上り用だけしか見ないと思う。私は自分が乗車する上りのみ確認した。
改札を済ませ陸橋を渡り、3番線の列車に乗ろうとして行き先を確認
しようとしたが、車両の横には行き先を示す表示がない。
列車の先頭に行き行き先を見ると、下りの「須崎行き」と書かれていた。
先頭と思ったのは下り須崎行きの最後部であったわけだ。
上り奈半利方面行きはこの須崎行きの発車後だと判断して、しばらく待つこと
にした。
ちょうどそのころ、2番線に停車中の列車に乗ったばかりの高齢の女性がいて、
だれも乗っていないことに気づき下車してきた。それと同時に、8:23発の
下り須崎行きが、あれよ あれよ という間に、3番線から発車してしまった。
高齢の女性は、「さっきの列車に乗ったら、すでに乗車していた乗客から
奈半利行きだと教えられて下車したが、発車してしまった!」と嘆いていた。
つまり、奈半利方面へ行く乗客は須崎行きへ乗り間違えて行ってしまい、
いっぽう高齢の女性は「間違い」と教えられて下車してしまったわけだ。
私も、もう少しで間違えるところだった。こういう間違いはときどき起きて
いるに違いない。
その時、2、3番線に掲示された時刻表を見ると、次に発車する下り普通列車は
10:39と書かれており、高齢の女性は約2時間ほど待たねばならないことになる。
あとで調べて分かったことだが、1番線から発車する9:29の窪川行きを知って
いたとしても、約1時間も待たなければならない。
高齢の女性は、須崎行き列車の発車時刻8:23には間に合うように、発車直前に
重い風呂敷包みを背負って陸橋をやっと渡ってきたので、とても気の毒
に思った。
昔のように、「車両本体の横に行き先表示板が掲示されていればよいのに
ねえ!」と近くに居合わせた人びとは話し合った。
最近のローカル線の多くの列車は1~4両程度と短くなっている。
何処だったのか私は忘れたのだが、上り列車は乗り場(プラットホーム)
の上り寄り、下り列車は下り寄りにずれた位置から発車させる方法を
とっていた駅があった。こうした方法、あるいは、車両の乗り口に移動
できる立札を置くようにすれば、乗客の間違いを少なくすることが
できると思う。
高知駅におけるこのハプニングはJR高知駅と、土佐くろしお鉄道ごめん・な
はり線(会社の安芸事業本部は安芸市東浜下柿ノ木にある)に伝えた。
高知駅からの返信
JR高知駅に対し上記ハプニングを伝えてあったところ、後日、高知駅から
丁寧な手紙がきた。その手紙には、高知駅における発着ホーム、改札口上の
発車時刻案内板、その他について現状の説明があり、最後に「事情不案内
な方もいることを認識して、駅案内放送及び車内放送でこまめな案内を
行い誤乗防止を図るように努めたい」と書かれてあった。
高知から~奈半利~室戸岬へ
私が乗車した8:30発の直通列車は後免(ごめん)から土佐くろしお鉄道
ごめん・なはり線となり、奈半利に9時38分到着した。なお、土佐くろしお
鉄道の新車には乗車口付近に、行き先が電光式で示されている。
終点の奈半利からはバスで室戸岬に向かう予定であったが、少々の待ち時間が
あったので、料金によってはタクシーを利用しようと考え、タクシー乗り場
へ行き、「室戸岬測候所へ行くのですが料金はいくらですか?」と訊くと、
「6~7千円ほどかかります」という。
私がどうしようか、と思い悩んでいると、運転手は「5千円で行きましょう!」と
言うので、タクシーに乗車した。予定より早く室戸岬に着けば、滞在時間が
長くなり、都合がよいと思ったからである。
そして、室戸岬で出迎えてくれる予定の測候所勤務の恵美須 彦一さんに電話で
「いま奈半利からタクシーで測候所へ向かいます」と伝えた。
地形が室戸岬に似ている岬の手前で運転手は、「あの岬は行当岬ですが、
形が室戸岬に似ているので、よく間違える人がいますよ」と話してくれた。
やがて行当岬を過ぎると、室戸岬が見えるようになった。測候所の風速を
取り付けてある塔(高さ40mの測風塔)が肉眼でも識別できた。
室戸岬の遠望、手前の行当岬から撮影
室戸岬測候所と室戸岬灯台
室戸岬測候所の近くに着くと、恵美須 彦一さんが測候所の入り口で待っていて
くれた。案内されて、高さ40mのコンクリート造りの測風塔に上ると
360度の展望、土佐湾から太平洋を望むことができた。
さらに、測候所の南にある四国霊場第24番札所の最御崎寺、室戸岬灯台、
海岸へと案内してもらった。
(左)室戸岬灌頂ケ浜から見上げた灯台、(右)室戸岬の
東海岸から見上げた測候所の高さ40mの測風塔
(左)測候所の高さ40mの測風塔から見下ろした岬の先端、
(右)測候所のレーダードーム、遠方の右に室戸岬新港
(左)最御崎寺(四国霊場第24番札所)、
(右)日本一大きなレンズの室戸岬灯台
(左)えぼし岩、(右)びしゃご巌
びしゃご巌にまつわる伝説(室戸市商工観光課のパンフレットからの抜粋)
昔この付近に「おさご」と呼ばれる美女が住んでいた。多くの男性が愛を
求めてくるのを美女は、わずらわしさに耐えかねて巌頭より投身したと
伝えられている。
弘法大師にまつわる名所
(左)案内板、(右)灌頂ケ浜
(左)御厨人窟(弘法大師空海が難行苦行を修められ、悟りを
開かれたと伝えられている)、
(右)弘法大師行水の池
(左)室戸青年大師像(大師の徳を慕う人びとにより
1984年建立)、
(右)明治維新の勤王の志士・坂本龍馬と共に活躍にた中岡慎太郎像
(1935年建立)
帰途
15時06分、室戸営業所からバスに乗車、乗り継いで奈半利から土佐くろしお
鉄道の快速列車で高知へ向かった。車窓からは、土佐湾上を飾る彩雲が
見え、しばらくすると、赤く染まった夕日があった。
(左)土佐湾上の彩光、(右)土佐湾の日没