Toddler Penguin's Place >> 今月の言葉 >> 2001
いままでの言葉:2001年
- 12月の言葉:「殲滅戦が好きだ電撃戦が好きだ打撃戦が好きだ防衛戦が好きだ/包囲戦が好きだ突破戦が好きだ退却戦が好きだ掃討戦が好きだ撤退戦が好きだ/平原で街道で塹壕で草原で凍土で砂漠で海上で空中で泥中で湿原で/この地上で行われるありとあらゆる戦争行動が大好きだ」by“最後の大隊”指揮官“少佐”
- 平野耕太『ヘルシング』4(少年画報社, 2001.11)
- 第2次ゼーレヴェー(あしか)作戦(*1)開始にあたって1ページぶち抜きの檄。「少佐は一番かっこいいの法則」(*2)に反して、「外見はオタク(ちびデブ眼鏡)、内面はオタク、心の中は不思議なオタク」な“少佐”は、1941年に武装親衛隊の中尉だった人なので、宇宙戦を知りません。コロニー落としなんか大好きそうな感じなんですが。
- この時期になんと不謹慎な、かな。でも、好きでしょう?ゲーム・ジェノサイド(まるしー高千穂遥)とかさ。
- あの事件後、報復という言葉がでてきて、賛成であれ反対であれ使い続けているのは、そういう思考回路をしてるってことなんだと思うよ。そして、それを否定してもなにも変わらないんだ。だから何ができるかっていうと、何もできはしないのだけれど。とりあえずそれはWTCビルが壊される映画を公開中止にしたり、傭兵が出てくるアニメを自粛したりすることじゃない筈。
(*1) ナチス残党吸血鬼部隊による50年目の英国本土上陸作戦。
(*2) シャア少佐、エーベルバッハ少佐、バンコラン少佐華やかなりし頃の法則。
- 11月の言葉:「品定めは、つねに最上のものを、つとめて体験し、それにしたがって他を知り、ふさわしい使い勝手を掌中に収めていなければなりません。」by 辰巳芳子
- 辰巳芳子編『手しおにかけた私の料理 : 辰巳芳子がつたえる母の味』(婦人之友社, 1992.10)
- 植物油の品定めの一節です。舐めておいしくなきゃだめなんだそうな。
- 何ごともかくあるべきということならば、「化けるかも」と未練たらしく『FF:U』を見続けるなんてのはだめだめですね。
- 小説だのアニメだの、とにかくこっちが受け身のものは見始めた最初期のものが善かれ悪しかれ「最上のもの」になってしまい、あの喜びよ、もう一度が高じて、結局、ただの老害になってしまうのかもしれません。でも、やっぱこれは認められん、ていうのはあるよなぁ。
- 10月の言葉:「愛だろ、愛っ」by 永瀬正敏
- サントリー ザ・カクテルバーのCM (1993)
- 以前、イギリス旅行に行った時、同行者の一人が借り物のビデオで撮っていました。で、帰国後の上映会。初心者の画面は路面を写したかと思えば空に向かい、全員船酔い状態に。ところが、自然史博物館に入ったとたんに画面はぴたりと決まり始め、恐竜の骨格ときたらまるで舐める様。「これはBBCか?ディスカバリーチャンネルか?」あまりの落差に一同騒然でありました。
- ここまで目に明らかでなくても、誰にでもこういうことはあると思うのです。で、オレのペンギンへの愛は……この程度です(^^;;
- 9月の言葉:「♪おおイングランド。私のライオンハート。」by ケイト・ブッシュ
- 恩田陸『ライオンハート』(新潮社, 2000.12)
- 実はケイト・ブッシュの『ライオンハート』は聞いたことあるかも知れないけど記憶がありません。SMAPのはなんとなくわかりますが<ぉぃぉぃ
- 作者はジェニーの肖像だというけれど、私はポーの一族を読んでしまいました。恩田陸にツボを押されちゃうのは、物語のむこうに萩尾望都の絵がみえるからだと思う今日この頃。ていうか、自分の好きなもの、物語の評価基準点のどれほどのものを萩尾望都に作られちゃってるかってこと。
- で、必然的イギリス・フリークとして突っ込ませてもらえば、この五枚の名画に導かれたメロドラマの瑕疵は、lionheartという言葉にリチャード1世を思い出さないイギリス人の存在。現代っ子ならともかく、教養という言葉の生きていた時代の人たち、しかも一人は歴史学者なのだ。
- 8月の言葉:「わたしは南部に住むコマーシャル・ライターで、質のいいコマーシャル・フィクションを書こうとしているだけだ。文学を書こうとは思っていない」by ジョン・グリシャム
- 青山南『この話したっけ? : インターネットでこんなに読めるアメリカ文学』(研究社 , 2001.2)
- 2件ほど、最近とった目録にヒットする話があってにやりとしてしまった、アメリカ文学紹介本。『本とコンピューター』の書評でも取り上げていたけれど、とっても正統的なWWW利用者の本です。そ、この本でもインターネット=Webなんだ。
- グリシャムって『推定無罪』『ペリカン文書』と一冊も読んだことはないけれど名前は知ってる売れっ子ですが、ノーベル賞作家フォークナーと同じ町に住んでいて、とやかくいうお馬鹿な記者とかいて頭に来てるらしい。
- 読者としては文学だろうが売文だろうが趣味だろうが、おもしろきゃいいんだけど、変なこだわり持ってる人って多いよね。
- 7月の言葉:
「ある本を贔屓し、ある本を軽蔑せよということですか?……」by 稀覯本収集家ビクトル・ファルガス
- アルトゥーロ・ペレス・レベルテ 大熊栄訳『呪いのデュマ倶楽部』(集英社, 1996.11)
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- 愛書家は身震いしながら続けます。「そんなことはできません。どの本もみんな同じ不滅の魂をもっていて、私から見れば同じ権利を享受しているんです。」
- 私は自分の蔵書に関しては到底この域にはいたりませんが,図書館屋としてはあらゆる資料に対して平等であるべく務めているつもりです。<お,マジだ。
- で,最近,出版界の一部の人が図書館に貸出料を払えとか,新刊は何ヶ月だか何年だか所蔵するなってなことを言い出してるんですが(もちろん,反対している業界の方もいます),何年たっても読んでもらえるような本,出してる??
- 北欧くらい図書館が普及してるんなら貸与料を払うべきなんでしょう。でも,我が国の現状じゃ洪水のような出版点数に対して図書館の資料費なんて蟷螂の斧。図書館員は思ってる「みんな貧乏が悪いんや」って。
- ちなみにこの『呪いのデュマ倶楽部』はロマン・ポランスキー監督の『セブンスゲート』の原作ですが,オカルトじゃなくて“馬鹿小説”ってやつです。訳がなんか変で気になりますが,最近読者の力で復刊なった『ダルタニャン物語』(『三銃士』『二十年後』『ブラジュロンヌ子爵』)ファンにはお勧めです。
- 6月の言葉:
「人間関係なしの情報だけの世界というのが,僕の昔からの夢ですよ」by 東浩紀
- 東浩紀×斎藤環『もう人間はうんざりだ 「データベース」が切り拓く新しいコミュニケーションのかたち』(中央公論 2001年6月号)
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- 珍しく新ネタです。
- そうだよね、情報だけ、しがらみなし、最高だよね。そーゆー世界に生きたい。
- でもデータの蓄積って,「くぅ,わかんないよぉ」「なにこれ」「やってしまった」「むかつく」「うそぉ」なんていう日々のうめきの集成であるわけで。
いや,どこもそうかは知らないけどうちの場合そういう傾向が(^^;;
- それよりこの対談で不思議なのは生データが大事なんていってることで、この人たちほんとにデータベース使ってるのって感じがしました。
- 5月の言葉:
「……常に挙措を計り合うて片時も離れる事なく、夜も一つの衾(夜具)に臥し、厠へさえも打ち連れて行くほどであった。」
- 鈴木桃野『反古のうらがき』より「怪談」
- こんなに仲の良かった侍女の金弥銀弥の身に降り掛かったのは……。
- 『反古のうらがき』が成立したのは天保年間(1830〜1844)。1800年生まれの鈴木桃野が少年のころ人から聞いた話。昔から「二八ばかりの」女の子というのは似たような生態をしていたようです。
- これは百合の匂いが濃厚でしたが、この須永朝彦編訳『怪談』では男同志の三角関係のもつれ話が大勢力で、編者の趣味(笑)や衆道が一般的だったという事実もあるけれど、それよりなにより女子供を主力とする当時の読者の嗜好だったんじゃないか、とこの元ネタ不明の朱の盤綺譚を読んで思ったのでした。
- 4月の言葉:
- 「てめぇらにできるのは長生きくらいだ」by ドサ健
- 『麻雀放浪記』(和田誠監督 , 1984)
- 「長生きって大事だよね。ああして長生きすると、観音っていってもらえるんだもん」by みうらじゅん
- 『見仏記』(中央公論社 , 1993)
- 「大事なことは死なないことだね」by 高原英理
- 「幻想文学,この七年を振り返る」(「季刊幻想文学」第60号(2001.3))
- バイニンvsイラストレーター?vs幻想作家。最後のカードが弱そう、ってそういう問題ではなくて。
- 4月ともなりますと色々不本意なことなどあって、投げやりな気持ちになったりするものですが、まあなんとかやっていきましょう。
- 3月の言葉:「今日書きまくっているような流行作家は、あれは三流四流なのであって、」
- 平井呈一『真夜中の檻』(東京創元社 , 2000.9)より
- ミドルトンを絶賛しているおっ師匠さん、平井呈一先生のお言葉。
- 「マイナー作家とは自分独自の文学を生涯大事にして、自分の世界を終始純粋一途に書いていく憑かれた人をいうのである。」と続きます。
- 数多の問題あり危機に瀕しているといえど現在の出版システムによって我々は作られているわけで。出版社がどうなろうが書きたい奴は書く、ただ読み手に届きにくくなるだけ。これからは読者も努力する時代になるのかもしれない。
- 2月の言葉:
「我々は幻影(ゆめ)とひきかえに知識を買って、高い払いをすることになる。というのも、ほんのわずか知恵をつけただけで、たいそう多くの楽しい夢想が飛んでいってしまうからである。」
- リチャード・ミドルトン「ある本の物語」より。 南條竹則訳『幽霊船』(国書刊行会、1997)所収
- 我々がいま思い付くようなこと、身に染みていることは100年も(きっとそれ以上)前の人がとっくに味わい、すでに書かれていることだと言う好例。ちなみに小説を読み過ぎてついに書き手になってしまう主人公37歳(ぐさっ)。しかも,本質を見失っているという。
- ミドルトンは小説が売れず、29歳で服毒自殺しました。
- 『幽霊船』をbk1で買ってちびちび読んでいます。美しい装丁に包まれた前世紀はじめに書かれた怪談集(怪談ではなくても恐い話多数)。大事に読まないとね。
- 1月の言葉:「なつかしい未来」fromあちこち
- ほんとうに来るのかなぁって思っていて、一週間くらい前にあ、やっぱ来るんだって感じがしてきた21世紀。
- 懐かしい未来、という概念を知ったのがギブスン「ガーンズバック連続体」(『クローム襲撃』所収)なんで(80年代半ば)、けっこう遅いのかも。
- うちら70年代育ちにとって未来というのはバラ色と暗黒の二極分化だったんだよね。なんたって冷戦だ核の恐怖だ石油危機だ公害だ、よ。だから日常の続きの未来に生きていられることに感謝、という気持ちもあるわけで。なにはさておき、あけましておめでとうございます。
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