「無知であればあるほど、より独断的になる」
ウィリアム・オストラー卿医学博士
O:ちょっと待った。何だ、このタイトルは。
ヴィ:何って。「生まれ変わり」ですよ。
O:ヴィクター。私はちょっとだけ、ほんのちょっとだけな、死後の世界が存在する可能性を考え出していた。それが何だ、「生まれ変わり」? 私は正しく生きなかったから、来世は蝿に生まれ変わるとでも言い出すのかね?
ヴィ:生まれ変わりを意味する「re-incarnate」という単語の中の「carne」は、ラテン語で肉を意味します。つまり「re-incarnate」は「再び肉の中に戻って来る」ことを差します。西洋の神学者たちの一部は、生まれ変わりが本当なら君は蚊やゴキブリになって戻って来れる、と言ってばかにします。けれども、東洋の一部で信奉されているように、また教授が言うように、人間が人間以下の何かになって戻って来るという証拠は「全く」ありません。今までに得られてきた「証拠」から推測すると、我々はどうやら、必ず人間としてだけ戻って来るようです。
O:私は感じるな。今、この瞬間に、読者たちは愛想を尽かした。
ヴィ:では、教授。今まで私が提示してきた証拠を、どう説明しますか。まずそこから行きましょう。
O:何でも説明してあげようじゃないか。まず何だっけ?
ヴィ:まず、テープで録音するときには聞こえないのに再生すると聞こえる声、EVP現象をどう説明しますか? 世界各地でたくさんの人が、亡き家族・友人を名乗る声を受け取っています。
O:それは念写のテープ版だ。
ヴィ:教授! 教授は念写現象を信じるのですか?
O:あっ、そうか。まずかったな。
ヴィ:どうしました?
O:うーん、今の言葉はなかったことにしてくれんか。
ヴィ:そんなこと言っても、今更取り消せませんよ。もう読者はみんな読んでしまいました。
O:でも最後の章だから、しょうがないな・・・。もう言ってもいいか。ヴィクター、これでもうこの本は最後なんだよな?
ヴィ:ええ、この章が最後です。
O:じゃあ、言ってしまおう。私は自分をそういう立場、つまり世の中が変なオカルトに走るのを止める立場に置いているから、基本的になんでも否定してきた。でも実際は、それなりに超常現象を体験しているんだ。スプーン曲げのK氏を飲んでいる席に呼んで、私が持ってきたスプーンを曲げるのを間近に見せてもらったこともあるし、ヴィクターが貸してくれた念力計も体験した。心が物質に影響することができるのは、まず間違いのないところだろう。イギリスのスコールグループの現象(http://www.spiritmusic.net/ITC/Scole/Scole.htm)を見ても、念写現象の存在に疑う余地はない。だから、その「テープ版」があったとしても驚かないな。
ヴィ:いやはや、まいりましたね。突然念力を認めだしましたか。ということは、ポルターガイストなみの現象も「あり」ですか?
O:若干信じられないという気はするが、たくさんの人が調べてもそういった現象が確かに存在しているというのなら、それは生者の心の力で説明できるだろう。
ヴィ:少し前までは、何もかも拒否していた人の言葉だとは信じられませんね。教授、それだけの認識がありながら、なぜテレビではあそこまで否定するのですか。
O:だから、あれが私の役どころなんだよ。
ヴィ:実在のO教授もそうなのでしょうかね?
O:さあ、それは知らんな。
ヴィ:さて、念力とテレパシーを認めてしまうと、かなりのものが説明できてしまいますね。でも、それでは説明できない現象があることを示すのに、この章の主題である「生まれ変わり」は最適でしょう。
過去生回帰は、単にある人を催眠状態にし、幼年時代に向かって時間を遡らせ、生まれる前まで誘導することによって起きます。多くの場合、現在の生に先立ついくつかの人生についての話が始まり、前に死んだときの状況、それぞれの生の間の状況、ときには次の人生をどのようにするか計画していたことなどが話されます。
O:そういった現象があるのは知ってるよ。でも、だから何なの。その記憶が過去生だとどうして言えるの?
ヴィ:これらの主張のいくつかが証拠として考慮されなければならない大きな理由は:
1950年までに過去生回帰は、実際に影響力があるという理由で、最初は全くの懐疑論者であった医者たちに受け入れられました。アレクサンダー・キャノン博士はこう書いています:
輪廻転生説は何年間もの間、私にとって悪夢としか言いようがなく、その誤りを立証するために私は最善を尽くした・・・。しかし年が経つにつれ、患者たちは次々と、それぞれが互いに異なる多様な信念を持っているにも関わらず、同じ物語を私に話すのだ。今や調査した事例はゆうに1000件を越し、私も生まれ変わりといったようなものがあると認めざるを得ない。
世界中の精神科医が、退行に効果があることに気付きました。
ジェラルド・エデルシュタイン心理学博士:
「これらの経験(過去生回帰)は、私には説明できない理由によって、ほとんど常に患者を速やかな回復へと導きます。」
非常によく知られている臨床心理学者、合衆国のエディス・フィオレ博士:
「もし誰かの恐怖症が過去(生)の出来事を思い出すことによって直ちに、かつ永久に直ってしまうのなら、その出来事は起きたに違いないということは、論理的に意味がある。」
イギリスの精神科医アーサー・ガーダム博士は、昔からとても懐疑的で、少年時代には「疑り屋」とあだ名をつけられていました。けれども44年間に渡る催眠退行治療の経験の後、彼はこう主張しています:
「もし私が今までに受け取ってきた生まれ変わりの証拠を認めなかったとしたら、それは私の精神が病んでいることを意味する。」
教授、これでもまだ、これらの記憶は思いだした本人に関わりのないものだと言いますか?
O:結局のところ、実在の本物の記憶ではないんだな。各自が今まで生きてきた中で、心の中で想像したことが記憶として潜在意識に溜まっていっただけだ。自分が生み出した記憶だけに、それを思い出すことによって治療効果が現れるのは、納得できるだろう。
ヴィ:ヘレン・ワンバック博士は1975年に、霊魂再来説などというものに少しでも真理があるのかどうかをはっきりさせるため、過去生回帰に対する大々的な研究にとりかかりました。研究に協力してくれた10,000人を越すボランティアたちの過去生に関する報告を分析することによって、彼女は霊魂再来説を支持するいくつかの驚異的な証拠にたどり着いたのです;
彼女の結論は
「私は霊魂再来説を信じているわけではありません−私はその事実を知っているのです!」
どうです、これでも架空の記憶だと言いますか?
O:ああ、言うよ。だいたいにおいて、過去生が男か女か、これがランダムに選ばれたとしても、それぞれ50%くらいの比率になるはずだ。被験者が思い出す過去の風俗といっても、そんなに数がないんじゃない。その数少ない人は、何かの歴史書を見たときに、自分はそういう過去生を持っているという「観念」を作り出したんだ。
ヴィ:そこまで疑うのなら、ピーター・ラムスターの事例を紹介しましょう。私の長年の調査研究において、過去生退行がどのように霊魂再来説に関連づけられるか示す、最も印象深い催眠治療師は、オーストラリア、シドニーの心理学者ピーター・ラムスターです。次の情報はピーター・ラムスターの非常に重要な本「In
Search of Lives Past(過去生の探索)- 1990」、シドニー・シェラトン・ウェントワースホテルで1994年3月27日に行われた第9回国際催眠治療師大会でのスピーチ、彼が生まれ変わりについて作った映画から引用されています。
1983年に彼は、一度もオーストラリアから出たことのないシドニーの4人の女性たちが、催眠下で過去生の詳細を述べた、衝撃的なテレビドキュメンタリーを作り出しました。彼女たちはその後、テレビクルーと立会人たちに伴われて、地球のあちこちへと連れていかれました。
その中の一人グエン・マクドナルドは、退行催眠を試みるまでは確固たる懐疑論者でした。しかし、彼女は1765年から82年の、イングランド南西部のサマセット州における生活を覚えていたのです。彼女がそこに連れて行かれたとき、サマセットにおける彼女の生活についての、書物を通じては得られるはずのない多くの事実が、目撃者たちの前で確認されました;
もう1人のピーター・ラムスターの被験者シンシア・ヘンダーソンは、フランス革命の間に送った人生を覚えていました。トランス状態で彼女は
ピーター・ラムスターは、他界の存在を厳密かつ非常に明確な用語で証拠付ける、過去生回帰に関する事例を他にもたくさん文書化しています。
O:結局、これはテレビでしかない。
ヴィ:どういうことです?
O:ヴィクター、君は私が一部の超常現象を信じていると思っていたか?
ヴィ:いいえ。考えてもみませんでした。
O:でも私はテレビで、すべての超常現象を否定する役を演じ続ける。ヴィクター、それがテレビなんだよ。テレビには真実はない。そこにあるのは、ディレクターの意向に合わせて修正された情報だけだ。
ヴィ:日本のテレビはそうかもしれませんが、オーストラリアではそんなことはありません。故意に内容をねじ曲げた番組を報道したら、その人たちは逮捕されてしまいますよ。
O:でも信じられんな。
ヴィ:そういうことなら、テレビ以外でもこの手の過去生回帰はいくらでもあります。
国際的に認められているシャンティ・デヴィの事例は、歴史の中でも有数の、自然発生的な過去生回帰を最も雄弁に物語る事例です。このインドの事例は、スティーブンソン博士がこの種の調査研究を始めるかなり前の、1930年に起こりました。しかしながら、彼は利用できる広範囲の文書化された情報から事例を再検討し、シャンティ・デヴィが少なくとも24個の、確認された事実と一致する正しい供述をしていると述べました。インドのデリーにおいて、1930年当時4歳だったシャンティ・デヴィは、ある特定の衣類、食物、人々、出来事、場所について詳しく話し始め、両親を驚かせました。シャンティが述べ、後に真実だと確認された事柄を、手短に紹介します。
彼女は
この事例は当局にとって非常に印象的であったため、有名な政治家パンディト・ネキ・ラム・サームズ、弁護士タラ・チャンド・マツアー、新聞社の常務取締役ララ・デシュバンドゥ・グプタを含む、著名人たちによる委員会が、シャンティ・デヴィの事例を調査するために公式に結成されました。委員会は、シャンティがいかなる不法行為を駆使しても得ることができない知識を知っていたことに対して、完全に満足しました。委員会のメンバーの中で、シャンティを個人的に知っているものは全くいません。彼らの最終結論は、すべての証拠が霊魂再来説の決定的な証明だというものです。
この事例は国際的に知られるようになり、本当にたくさんの社会学者と作家の注意を引き付けました。例えば1950代には、スウェーデンの作家ストゥレ・ロナーシュトランドが、この事例を独自に調べて文書化するためにインドへ旅し、シャンティ・デヴィに会いに行っています。彼もまた、シャンティ・デヴィの事例は、完璧な生まれ変わりの証拠だという結論に達しました。
教授。こういった事例もやはり、作りものとして拒否するのですか? さらに決定的な証拠をいくらでも提示できますが。
O:ふん。そういった事実がもしあるとするなら、やはり記憶の貯蔵庫を本気で考えなければいけないな。それは確かにあり、そこから生者がテレパシーで情報を引き出す。これがたいていの超常現象の仕組みだ。これで異言と生まれ変わりの現象は理解できる。さらに言うなら、我々の潜在意識は「副人格」といってもよいほどの独自性を持ち、また並外れたパワーを持っている。ポルターガイストもこういった潜在的な「副人格」が引き起こした超常現象と見ることができる。
ヴィ:ついにその説を持ち出しましたか。
O:その説って、ヴィクターはこれを他でも聞いたことがあるの?
ヴィ:教授が今言ったのは、どうしても死後の世界が存在することを認めたくない超心理学写者たちが切り札として持ち出す「超PSI(サイ)仮説」と呼ばれるものです。まじめに研究している超心理学者は、心霊現象、あるいはサイキック現象の存在そのものは否定できなくなります。そして最後に、素直に死後の世界を認めるか、この説にしがみつくか、そのどちらかを選ぶことになるのです。
O:私はその後者だな。すべてが生きているものの心の働きで説明できている限り、死後の世界などというのは認めない。
ヴィ:「説明できている限り」・・・ね。かなり無理矢理過ぎる説明だと思いますが。いいでしょう。教授がそう言うのなら、徹底的に説明してもらおうじゃないですか。じゃあ、今まで示してきた証拠を順に言いますから、それぞれを教授の説で説明していただけますか。
O:おお。まかせなさい!