その壱拾壱(マリオネットの巻/Dの練習曲)

湯淺隆

 自称、日本のポルトガルギターの家元である。だが、正確な意味での弟子はいない。何故なら、自身が正確に教わったことがないので、教えられないのである。あるいは、正確に教わろうとしなかったので、教えられないのである。さらにややこしくいえば、正確なことを受け渡し出来るという幻想に基づいた関係性をウリにした師弟関係を、引き受ける覚悟がまだないのである。あるいは、正確なことを受け渡し出来るという幻想に基づいた関係性を、そもそも信じられないのである。果たして、まったくこの家元は、不埒千万へそ曲がりな御仁である。しかし、家元は家元なりに、ポルトガルギターを正確に弾くためには、どうすれば良いかを悩まないわけではない。この曲は、今のところ家元が唯一正確に伝授できる練習曲である。ところで、家元の経歴には、この国の風習に従い「〜に師事」と書いてあるが、先達たちは私のことを弟子とは呼ばずアミーゴ(友達)と呼ぶ。家元は、正確な意味でアミーゴはたくさん欲しい。不埒千万へそ曲がりな家元は、正直なところホントはひどく寂しがりやなのである。


番外編3(続・阿木耀子の巻+宇崎竜童/天からの贈り物)