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　5月23日から26日まで、僕は国語学会出席のために大阪に行った。学会出席とはいうけれど、要するに旅行のようなものだ。

　このページをご覧くださっている方のうち、大阪をよくご存じの方は多いはずだ。そういう方にとっては、この探訪記はまるでバカげて見えるに違いないのだが、大都会といえば東京しかよく知らない僕は（出身は高松なんですがね）、ただ素直な驚きをこめてこれを書くことにしたい。

　僕の泊まったホテルは、地下鉄・谷町線の南森駅からすぐのところだった。その地下鉄で谷町九丁目駅に出て、ここを起点にミナミ周辺をぶらぶらしよう、という心づもりである。

　地下鉄には、どの車輌にも〈2008年のオリンピックを誘致しよう〉というステッカーが貼り付けてある＝写真。目下、横浜市と国内候補地を争っているのだ（追記・この年の8月に国内候補地は大阪市と決まった）。土地の古老に聞くと、「熱心なのはお偉いさんだけで、庶民は覚めている」というが、そういうものだろうか。滞在中だけでも、「なみはや国体」「ふれ愛ピック」(？)などというものをいろいろ準備していたようだが、大阪人は本質的に運動競技が好きなのではないか？　それともオリンピックの予行演習？

　谷町九丁目から西に向けてしばらく歩く。右手に松屋町筋が見える＝写真。大阪の大通りの多くは一方通行で、御堂筋ですら北から南へ延びる広大な一方通行の道だ。道路というものは対向車線があるのが〈普通〉だと思っている僕にはひどく不思議な気がする。

　写真は４車線の道だが、両側の２車線を占領する自動車には人が乗ってないのが写真でお分かりだろう。これが大阪の迷惑駐車というものかと感心する。しかし、違法駐車にしては多すぎると思っていたら、信号が青になったとたんに走り出したのでびっくりした。

　古老によれば、大阪では、路傍で乗り捨てられた自動車は、しばしば野生化することがあるという。時に、このように暴走して通行人を襲うということだ。

　まもなく日本橋に至る。写真にあるようにコンクリートの立派な橋である。じつは東京の中央区にも同じ名のコンクリートの大橋がある。東京の日本橋は、コンクリートの橋の下に、和風の古い〈おまけの小橋〉がついているが、大阪のほうはそういうのはないようだ。

　東西のふたつのコンクリートの日本橋は、たがいにどういう関係にあるのだろうか。両方とも長い橋だから、ことによると名古屋あたりでつながっているのではないだろうか。別名、東名高速とか名神高速とかいうような気もするが、確証はない。

　それはそれとして、ところどころで橋脚を工事していた。阪神大震災を教訓に、地震で崩落するのを防ごうというわけだろう。

　日本橋を南へ折れると千日前である。ここの小路をうろうろしているうちに、道に迷ってしまった。そこでふと前方を見ると、なんということだろう、〈都庁〉がそびえていた＝写真。

　こんなことがあっていいのだろうか。都庁というのは、東京都にあるからこその都庁ではないのか。新宿副都心のシンボル的存在だ。それが、大阪なんかに支店(？)を出しているとは知らなかった。

　これはもっと調査しなければならぬと思い、近寄って行く。そうしたら、またしても道に迷ってしまった。気がつくと、僕は、道頓堀にかかる戎橋（えびすばし）にたどり着いていた。別名「ナンパ橋」と呼ばれるガールハントの名所だという。どうやら知らない間に、僕はコンクリートの日本橋をまたしてもくぐって北上していたらしい。

　夜の戎橋から見えるネオンの赤い灯・青い灯はきれいだが、今は昼なのでそういう灯は見えない。人ごみの熱気をかき分けて行くと、両側からカニの化け物やフグの化け物、エイリアン、食い倒れ人形といったわけの分からぬ魑魅魍魎が腕を伸ばしてくる。とてもこわかった。

　化け物どもを振り切りながら、ふと見ると「カラオケ30分250円」なんて書いてあるのが目に止まる＝写真左。これは安いですよ。東京では１時間900円は取られるんじゃないだろうか。しかもドリンク代が加算されて、ふつうは1000円を超えます(2001年の追記・当時はこれでも安かった。今では、昼間は100円なんてところがザラだけれど)。かといってここで歌って帰るわけにもいかない。ちなみに、古老によれば写真右のゲームセンター「MAINSTREET」は浪花っ子の娯楽の殿堂の一つだそうだ。

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