《 ミギーの恋 (3) 》 ◆ミギーが目覚めるとき ---------------------- 繁殖期がいつ来るのかはミギー自身にさえわからない。 でも、繁殖期はいつか必ずやってくる。 生物なら、必ずそうできている。 ある日、ミギーが目覚めて、 「シンイチ、私にも"その時"が来たようだ。」 と言うのだろうか。 ミギーは繁殖という衝動を抑えられない。 その衝動は生物として当然の、根源から沸き上がるものだ。 それは、ミギーにとって、同種他個体を大切に愛しく思う、 初めての感情となるだろう。 ミギーはなんとしても、新一に繁殖行動を協力して もらうようにしむけるだろう。 寄生獣が繁殖する、ということは、また大量の人間に危害が 及ぶわけだから、新一はそれに抵抗するだろう。 ミギーは以前のように、体を傷つけるぞと脅すだろうか。 そして新一は、自分の身を犠牲にしてでも阻止しようとするだろうか。 その頃は、新一にも守るべき家庭や、子供がいるはずだ。 ミギーは、新一の家族を傷つけるぞと脅すだろうか。 もし里見がパートナーなら、彼女は新一の体のことを少しは知っている。 彼女に相談できるだろうか? 彼女は新一の無事を何よりも望むだろう。 いや、ミギーはもっと賢い。 繁殖が目的だと知って、新一が抵抗するだろうことは予想している。 そう気づかれないように、新一の行動をコントロールする方法を探すだろう。 つまり、だますだろう。
T.Minewaki / minew@post.email.ne.jp